記憶
第27話 ツメオの青春
タイガはツメオの過去が気になった。
「お前、なんでそんな良い感じになったんだ?」
「中学に入った頃、自分勝手にふるまったせいでクラスの誰からも相手にされなくなって、それが本当に辛くて、とても悲しくて、寂しくて、タケシやツバサ、タイガにどれだけ酷い事をしていたか、事あるごとにいろんな人に迷惑ばかりかけていたって言うのが分かったんだ」
ツメオは成績も思うように上がらず、生徒会に入ってみたものの誰からも人望を得られないと言う悲惨な青春を送っていた。
「そうか、お前もお前でいろいろ大変だったんだな」
タイガ達はそんなツメオに同情し、打ち解け合った。
ツメオはそんな悲惨な青春を送っていたが、どんな時もありのままの気持ちで接してくれる友達と出会った。
そして、ツメオは何かしらの利用価値を目当てにして関わるのではなく、友達として一緒に何かをするのが幸せ、友達としてただ一緒にいるだけで幸せだと思えるようになった。
ツメオは自分以外の存在、自分とは個性が違う存在、自分より強い存在、自分より弱い存在、自分より弱い立場にある人達と言った多種多様な人達の事を考えるようになった。
大きい建物や上等な建物、こぎれいな家が辺り一面にあるが、その中にみすぼらしそうな家がちらほらとあった、そんな景色を見てツメオは複雑な気分になった。
「僕だって豊かな暮らしをしてるわけだし、豊かな暮らしをしている人達を悪者って思ってるわけではないけど、誰にだって胸を張って生きる権利があるはずだからみんなが満足できるようにした方が良いと思うけど(心の声)」
2021年、日本にはエリート国民と呼ばれるとても裕福な暮らしをしている人達もいれば廃墟のような建物が並んでる場所で毎日、毎日を困窮して過ごしている人達もいる。
夢魔(ムーマ)によって開発が進められている地域もあればインフレの老朽化が進んでいるにも関わらず取り残されている地域もある。
裕福に暮らしている人には弱い立場にある人々を見下す者もいれば、どうすれば対等になれるかと真剣に考える者もいる。
貧しい人々にも無気力に生きる者、暴動に走る者もいれば、希望を持って力を合わせて生きていく者もいる。
さらに、クラスに家庭の経済事情が厳しくて、努力家で常に周りを大切にする優等生であるにも関わらず学校を辞めざるを得ない生徒がいた事でツメオは貧富の格差の問題がいかに深刻であるかと言うのを実感した。
ツメオはその人にいろいろと助けてもらった事も多くあったのに何もできずにただ見送る事しか出来なかった、その事がとてつもなく悔しく、嫌だった。
「一生懸命頑張って生きてるのに何であんな目に合わないといけないんだろう(心の声)」
日本は一見してみれば身分によって分けられると言う事はない、がしかし、経済的な階級が存在し、経済的な階級によって恩恵を受ける者、理不尽な不条理を受ける者がいた。
「かなり複雑な問題だね」
「むずそうな社会問題を真剣に考えてるのか、ツメオはけっこう成長したな」
「いや、そんなこと」
「生きている中で何かを感じて、何かを真剣に考えて悩めるって言うのはとても良い事だぜ、自信持てよ」
タイガは力強くツメオを励ました。
「日常の出来事から社会問題を考えるって言うのはけっこうすごいと思うよ」
「ツメオって正義感があるやつなんだなって見直したよ」
タケシとツバサも嬉しそうだった。
「ところでよ、ツメオ、まさかお前、母ちゃんと一緒に風呂入ってんのか?」
タイガはニヤニヤしながら聞いた。
「母ちゃんとは入ってないよ。父ちゃんと一緒にちょくちょく入ってるんだ」
ツメオは明るく言った。
みんなが爆笑した。
「お前、面白れぇな!じゃあよ、お前の父ちゃんのアソコはどうなんだよ?」
タイガはとてもノリの良い感じで聞いてきた。
「めっちゃ大きいよ」
「マジかよ!」
タイガは笑いながら言った。
ツバサはツメオと一緒にお互いの家族の話や最近あった出来事を話し合った。
「そういえば、ツメオの親は自営業やってるんだっけ」
「うん、そうだけど。その事で相談があるんだけど」
「なに?」
「親は自営業で上手くいってそのおかげで安定した暮らしができてるんだけど、でも僕は落ちこぼれで何をやってもダメだから親に対してちょっとコンプレックスみたいなものがあるって言うか、何ていうか」
「ツメオの親は何か酷い事したの?」
急にツバサの顔つきが真剣になった。
「いや、そういうわけじゃないんだけど」
「親が一生懸命ツメオの事を想ってくれて頑張っているんだから全力で感謝しないとだめだよ。親の愛を無下にすんな」
「ごめん。でも何か自信がないって言うか」
タイガは段々といらだってきた。
タイガはうじうじしているやつが何よりも嫌いだからだ。
「親が子を想って努力するのは素晴らしい事だから、親の愛を自信に変えれば良いじゃん」
「そうだね、ありがとう。親に愛されてる事で親のありがたみを忘れてた。親の愛を自信に変えて頑張ってみるよ」
「親子関係は上手くいってる?」
「うん。上手くいってるよ」
「そう、良かった。親との関係が上手くいってるのはとても良い事だよ」
「ところでさ、何でツバサは僕みたいなやつにも優しくしてくれるの?」
ツメオは不思議そうに聞いた。
「小さい頃、ママに叱られて落ち込んでる時、ママはそっと布団に入れてくれたし、パパは口元に手を小刻みに当ててあばばばばばってあやして励ましてくれたんだ。それで良い人にも悪い人にも優しくしないとダメなんだって言うのを知ったの」
ツメオはとてつもなく感動した。
「とても良い親だね。これからは一生懸命、親や周りの人達を大事にするよ」
「その通りですよ。タイガさんも親を大事にしないとダメですよ」
ワンダーバードは釘をさすように言った。
「うっせえ」
その後、タイガ達は再び調査を続行する事にした。
「あの木、なんか見覚えがあるんだよなあ」
ツバサが木に近づくと二人の子供が木を使って鏡ごっこをして遊んでいた。
木から顔や体をのぞかせて同じ動きや表情ができるかどうかと言う遊びだった。
「タケシ、あれ見て!」
ツバサは二人の子供の方に指をさした。
「えっ、うそ!?」
ツバサとタケシはとても驚いた。
木にいたのは小さい頃のツバサとタケシだった。
「小さい頃のうちらだ」
「はっ、ま、マジかよ」
「こんな事ってあるんだ」
他のみんなも目をまん丸くして驚いていた。
「懐かしいなぁ」
「よくこの遊びやってたね」
「あっ、変顔してる!」
ヒロは小さい頃のツバサの方に指をさした。
「ほんとだ!」
タイガ達はツバサの変顔で爆笑していた。
「やっ、やばい!自分の変顔で笑ってる」
ツバサは不思議な気分になった。
小さい頃のツバサは鏡ごっこでちょくちょく変顔をやって、タケシがそれを見て笑ったらよくダメ出ししていた。
その様子を見ていたツバサは苦笑いしていた。
他のみんなはそんなツバサをニヤニヤしながら見ていた。
「もしかしたらあの木に何か手がかりがあるかもしれないぜ」
タイガ達はあの木を調べてみる事にした。
「あの木の下にある石ころでもよく遊んでたから、石ころになんか手がかりがあるかも」
ツバサは石ころを調べてみたが、特に何も手がかりは得られなかった。
「やっぱり鏡ごっこに何かしらの手がかりがあるって事なのかな。鏡ごっこ、鏡ごっこ、あっ、鏡(心の声)」
ツバサは鏡をイメージして目の前にだした。
そして、鏡で辺り一面を映した。
すると、神秘の記憶に入るための扉の鍵がある!別の木を探せ!と言う文字が木に浮かび上がった。
「やった」
「別の木か」
「もしかしたらあの木かも」
タイガは走り回って思い出の木を探した。
「あっ、見つけた!あの木だ!」
その木でタイガはよく海賊ごっこをして遊んでいた。
「くらえ!マーマー伯爵め!」
小さい頃のタイガが海賊になりきって想像の敵と戦う遊びをしているのを見て、タイガは嬉しい気分になった。
「あの木でもっと思い出せる事とかある?」
「そうだな。あの木にタイガの木って名前をつけたっけ」
タイガは自慢げに言った。
「タイガの木って言ったら何かしらの手がかりがでてくるかも(心の声)」
ツバサはタイガの木と言ってみたが、何も起こらなかった。
「他に思い出せるのはない?」
「う~ん」
タイガは頭を抱えてじっくり考えた。
「あっ、後はタケシと一緒にあの木にタイムカプセルを埋めた事ぐらいだけど。そういや俺は海賊になりたいって書いていれたな。タケシ、お前はなんて書いた?」
「なんて書いたっけ。ごめん、思い出せない」
タケシはじっくりと思い出してみたが、何かがひっかかったような感じで上手い具合に思い出せなかった。
「つまんねーの」
「ねぇ、タイガ。そのタイムカプセルはどの辺に埋めたの?」
「たぶんあの辺だったかな」
タイガは記憶をたどってタイムカプセルを埋めた場所に指をさした。
ツバサは木の方に向かっていった。
タイガ達もついていった。
すると、小さい頃のタイガが喋ってきた。
「なんだ!どけよ!」
「おもしれー。小さい頃の俺が喋ってきてる」
ツバサはタイガがタイムカプセルを埋めた場所を掘ってみた。
「あっ、俺らが埋めたタイムカプセルだ」
ツバサが中を見て見ると鍵のようなものがあった。
「やった!鍵を見つけたぞ!」
「でも、これは鍵の一部だよ」
「鍵の他の部分はどこにあるのかな?」
ツバサはもう一回、鏡を使って調べる事にした。
すると、木に決闘の地へ行け!そこに行って欠けている部分を探せ!と言う文字がでてきた。
「決闘の地?なんのことだ?とりあえず、探すか」
タイガ達は決闘の地を探してみる事にした。
タイガはこの後、ぶつかりにぶつかり合った好敵手と再会する事になる。
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