第26話 合流

 タイガ達は廃墟から逃げたが、幽霊達が追ってきた。


「クソ!まだついてくるのかよ」


その時、どこからともなく光が差し込んだ。


幽霊達はその光と共にどこかへと消えていった。


「さっき、空間とかが歪んでたけど幽霊の力でバグが起こってたのかな?」


「たぶんそうだね。にしてもバグを起こすほど強い念を持ってるのか」


「逃げてる時に空間が歪んだから宙に浮いてるような感覚になったり、前に行ってるのか後ろに行ってるのかわからなかったなぁ、どのUFОも空間の歪みを利用して飛んでるのかも(心の声)」


ツバサは友達がハッキングして手に入れた夢魔(ムーマ)の異次元間航行機に乗った時の事や弟のレオが言っていた空間の話を思い出した。


タイガ達は何とも言えない不思議な感覚を味わい、空間そのものを実感した。


「あの人達はパルクールの事故で亡くなった霊です。面白半分でパルクールをやってしまい、事故を起こして亡くなったんだ」


「でも、生きていた頃はみんなとても仲良しで明るい感じだったと思うけど」


「元々は良いやつらだったのにああいう風になるなんて」


「人生では一瞬の判断ミスで取り返しのつかない事が起こるって言うのはこのことか」


「成仏してほしいね」


タイガ達は一時の出来心による判断ミスが人の心さえも壊してしまう大惨事を起こしてしまう事、責任性を欠く行動が取り返しのつかない結果を招いてしまう事を実感した。


「ところであの人達はどこに行ったの?」


「彼らは懺悔の間と言うエリアに行きました」


「それってこの仮想空間にあるの?」


「はい、そうです」


「あっ、ってことはその懺悔の間って言うやつはあの方向にあるんじゃねえの?」


「光はあの方向から差し込んできたからね」


「もしかしたらあの光がバーチャルアークと何か関係してるのかも、だってあの光で人が突然、消えるって言う不思議な事が起こってるわけだし」


「そうだな!あの光と懺悔の間は何か関係してそうだし、懺悔の間を調べれば今度こそバーチャルアークの謎が解けそうだな」


「だね」


「さあ、ど~でしょ~ね~」


ワンダーバードはすましたような顔で言った。


「つーかさ、思ったんだけどよ」


タイガがニヤッと笑った。


「どうしたの?」


「バーチャルアークの正体ってワンダーバードじゃねえの?」


「あっ、そういえばワンダーバードはこの世界の全てを知っているって言ってたからありえるかも」


「だろ?」


「ワンダーバードはこの世界で起こる不可解な出来事に何も驚きもしないし、それにこの世界の事を全て知ってるんだったら、この世界を自由自在に操る事でどんな願いも叶えてくれそうだし」


「ワンダーバードは何かうちらを誘導してるような感じもするし」


「ワンダーバードはこの世界の出来事を全て知ってるとか言ってるけど、ほんとは全部、焼き鳥のせいだと思うぜ」


「おやおや、何をヒソヒソと話してるんですか?陰口をたたくのはみっともないですよ」


ワンダーバードは少し嫌な感じで言った。


「へっ、ならチョクで言ってやるよ!」


タイガは挑発するような感じで言った。


「なんですか?」


「俺らの身に起こる数々の不可思議な出来事はお前のせいだろ?」


「なぜそう思うのです?」


ワンダーバードはこれまでで一番冷徹だった。


「なんていうかお前は俺らをもてあそんでるような感じなんだよな」


「と言いますと?」


「だってよ、俺らが変な出来事にでくわすよう誘導してるっていうか、なんつーか、俺らが変な出来事にあって、ピンチになってるのに全然助けてくれないっていうか、むしろ俺らが困ってるのを楽しんでるよーな感じがするんだよな」


「そう思ってるのですか。何か悲しいです」


ワンダーバードは寂しそうに言った。


「だって、俺らが行く先々で変な事ばっか起こるし、てっきり、お前が関わってるんじゃないかって思って、お前この世界の事全部知ってるみたいだし、この世界に関する事なら何でもできるんじゃないか的なの考えて。でも、本当にごめんな」


「えっ!」


ワンダーバードは一瞬の出来事に何が何だか訳がわからず戸惑った。


「いろいろあったけど、共に冒険して、いろいろ思い出も作ったのになんて言うか大した根拠もないただの憶測でお前の事疑って、なんて言うかめっちゃダサいなぁって」


「こちらこそごめんなさい!ことあるごとに馬鹿にしちゃって」


「いや、謝るのは俺の方だ!ごめん!今まで一緒に苦楽を共にしたのにお前の事最低なやつだって決めつけてしまった。最低なのは俺の方だ」


「いえ、気にしなくて良いです」


みんなは手を叩いて拍手した。


「一つだけはっきりと根拠を持って分かった事がある。それはワンダーバードが俺らの事好きだって事だ」


何事も根拠を持って判断する事が大事、どんな事があったとしても何の根拠もない憶測で判断してはいけないと実感した。


「それでは懺悔の間へと案内します」


「おし!行くぞ!」



 タイガ達は懺悔の間へと向かった。


「ここが懺悔の間です」


「何か悪いことをした人達がいっぱいいそうだけど」


「そうですね」


タイガ達が辺りを見渡すとそこにはツメオがいた。


「みて。あれ、ツメオじゃない?」


「ほんとだ」


ツメオは過去に犯した数々の過ちを見せられとてつもなく苦しんでいた。


ツメオは悪魔を崇拝する不良少年スネークと一緒にタケシをいじめていた。


スネークは事あるごとにタケシをいじめていた。


ツメオはニタニタと笑いながらいじめに加担していた。


タイガはタケシをかばい、スネークやツメオと喧嘩していた。


タイガはツメオを殴るとツメオはとても痛がってたので、ツメオを挑発した。


「ママ~って言ってみろよ!」


そしたら、「ママァァァァァ」と泣き出してしまった。


ツバサは不本意だが、そんなツメオを保健室に連れていくことにした。


「大丈夫?」


「う、うん。あ、ありがと」


その時のツメオの表情はとても純粋で嫌らしさは感じられなかった。


タイガは善人悪人関係なく優しく接するツバサに惹かれていった。


ツメオもそんなツバサの優しさに惹かれていった。


タイガはよく喧嘩をして、タイガの両親はツメオの両親に謝りに行った。


「すいません、うちの子が」


「だって、俺悪くねーし」


「何言ってんの?ちゃんと謝りなさい」


タイガは母親にげんこつされたり、ビンタされたりした。


タイガはツメオの母親をみて、慈悲深くて優しそうな人だなと感じ、何であの母親からあんな気持ち悪いやつが生まれるんだと不思議でならなかった。



ツメオはタケシがツバサと一緒に仲良く帰る所を見てしまい、ギョギョギョと言わんばかりに驚き、両手で頭を掻きむしった。


ツメオはツバサの事が好きだった。


ツメオは悔しさのあまり、タケシがツバサと一緒に帰ったのをスネークに報告した。


「あの野郎!思い知らせてやる!ツメオ、放課後、学校の裏庭に呼んで来い」


スネークもツバサのことが好きだった。


「はっ、はい!」


ツメオはタケシを裏庭へ呼んだ。


「タケシ、ツバサちゃんから大事な話があるんだって」


何だろうと思い、タケシは裏庭へ行く事にした。


そこにはスネークが怖い顔をして待っていた。


ツメオは申し訳なさそうに見ていたが、スネークがタケシを徹底的に痛ぶるとツメオはニタニタと笑い出した。


ツメオはツバサやタケシの事をストーキングするようになっていった。


ツバサはスネーク達にタケシをいじめたり、ストーキングするのは止めるように言った。


スネークはツバサに素直に謝った。


「ごめん」


スネークはどんな事があっても女には手を出さないと心がけていた。


しかし、ツメオのストーカー行為はエスカレートしていった。


さすがのツバサも不安、恐怖、不快感が顔に表れるようになった。


ツバサは一時的に口数が減っていった。


「ツバサ、元気出せよ」


タイガはそんなツバサを気遣った。


ツメオはスネークからこっぴどく殴られた。


「ご、ごめん。も、もうしない」


ツメオは弱弱しそうに言った。


「俺じゃなくて、ツバサに謝ってこいよ」


ツメオはツバサが忘れ物をしたので、謝るついでに忘れ物をツバサの所へ届けに行った。


「なに?うちのママのおっぱいでも吸いにきたの?」


ツバサはツメオににやけた顔でどげつい嫌味を言った。


ツメオは静かに走って帰っていった。


ツメオはこれらの記憶に苦しめられていた。



 みんなはツメオを苦しみから解放した。


ツメオはタケシ、ツバサ、タイガに謝った。


ツメオはしっかりと謝らなかった事を後悔していたからだ。


「こっちこそごめん。忘れ物、届けてくれた時、ちょっとひどい事言っちゃった」


ツバサもツメオに謝った。


「俺の方こそごめん。やりすぎた」


タイガもツメオに謝った。


タケシはツメオを抱きしめた。


「ありがとう」


ツメオの顔は喜びに満ち溢れていた。


以前のひねくれた笑顔とは違い、美しさに満ち溢れていた。


「何か、良い感じになったな」



タイガ達は仲直りし、ツメオも仲間に入れて冒険を続けた。


「よろしく」


「おう!」


「そう言えばここには思い出の場所がいっぱいあるような感じがする」


「そうだな。見に行った覚えがある」


タイガ達は記憶を頼りに調べてみる事にした。


しかし、バーチャルアークや神秘の記憶への手がかりは見つけられなかった。


「気晴らしに遊ぶか。調査の続きは明日にしよう」


タイガ達は間欠泉を使って遊んだ。


「フゥゥゥゥゥ、最高ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


その間欠泉はタイガ達の心を象徴していた。

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