第22話 沖縄村

 タイガ達の目の前にはシーサーや琉球王国の城が広がっていた。


「何か、沖縄っぽい所だね」


「ここは沖縄村です」


「何か聞いたことがあるよーなネーミング」


タイガ達はちんすこうやパイナップルと言った沖縄の食べ物を味わい、沖縄にある植物や動物、文化を楽しんだ。


「おぉ、ちんすこう、うめーな!」


「この花、きれい!とっても色とりどりだね」


「デイゴの花か」


「とてもうっとりするね」


「あっ、もしかしてあれヤンバルクイナじゃない?」


「ほんとだ!ヤンバルクイナだ!」


「すげー!」


「見て、三味線だ!」


「何か変わってるね」


「不思議な感じ」


タイガ達は三味線に興味津々だった。


三味線から聞こえる緩やかでとても優しい音色がタイガ達の心を癒した。


「何かゆったりとした気分になる音」


「どうやって弾くんだろう?」


「こうやって弾くんですよ」


ワンダーバードは三味線を弾いた。


「おぉ、うまいじゃん」


「三味線弾けるんだ」


ワンダーバードは三味線を弾くのがとても上手だった。


「ちょっと教えますよ」


「ありがとう」


タイガ達はワンダーバードから三味線の弾き方を習った。


「これが三味線か!何かうちなーんちゅ(沖縄の人)になった気分だな」


タイガ達は三味線に感動し、三味線の魅力を堪能した。


三味線を習った後、あちこちを歩いていると海を見つけた。


その海は色とりどりで透明なガラスでできていた。


それはありとあらゆるものを魅了するものだ。


「ねぇ、あの海めっちゃきれい」


「ほんとだ」


「すげーきれいじゃん」


「あれは沖縄の海をモデルにしたんですよ」


「海に入ってみようぜ」



 タイガ達は海に入ることにした。


「近くでみるとさらにきれいだな」


タイガ達は少し潜ってみた。


「あっ、いろんな生き物がいる」


「ね、めっちゃいっぱいいる」


「沖縄の海、めっちゃきれい!」


「芸術そのものだよね」


タイガ達は沖縄の海も思う存分に楽しんだ。


タイガ達は沖縄の海の美しさやその海にいる生き物の素晴らしさと言った魅力を実感した。



 しかし、タイガ達は複雑な気分になった。


沖縄は環境汚染の問題に直面しているからだ。


夢魔(ムーマ)は沖縄の海上や陸上に科学都市をいくつか建設する上で環境汚染をし、その環境汚染に関する問題を否定していた。


そして、夢魔(ムーマ)は沖縄県民から強い反発があったにも関わらず、夢魔(ムーマ)は沖縄県民の訴えをないがしろにして工事を強行していった。


日本政府は沖縄振興のためと言う名目で黙認していた。


日本政府はアメリカがアメリカ合衆国とネオアメリカに分裂した事やネオアメリカの暴走を止められなかった事などが原因で国際的な信頼を失ってしまった事でありとあらゆる国々に影響力を持っている夢魔(ムーマ)の力を借りるしかないと考えたからだ。


夢魔(ムーマ)との連携を深める事であらゆる国々からの信頼を回復し、夢魔(ムーマ)の高い科学技術を取り入れて技術大国として世界にアピールするしかないと考え、夢魔(ムーマ)に追従する道を日本は選んだ。


日本政府は「日本再生」を掲げ、近未来革命を成し遂げ、前代未聞のテクノロジー技術を確立した中国をみて、デジタル革命を進める、科学都市を建設し、日本の技術力を世界にアピールすると言った政策や様々な国と連携を取っていくことで国際的な脅威に対抗すると言った政策を取ったが、政治や社会が混乱しているせいで話が上手い具合にまとまらず、中々上手くいかなかった。


特に科学都市の建設に関してはデザインがどれもパッとしない、インパクトがないと言った意見が国内外から多く寄せられ、評判はあまり良くなかった。


科学都市を建設する上で日本は日露関係の向上も兼ねて日本、ロシアが費用、技術を提供し合って、北海道に科学都市を建設すると言う計画があったが、途中でロシアが投げ出したせいでおじゃんとなった。


他国に寄り添うのではなく、自国の利益だけを追求する外交が大多数の国々からの信頼を失い、それが日本を孤立へと追い込んでいった。


日本は心と心の繋がりを失ってしまった。


結果として税金の多くを無駄にしてしまった。


そのため日本政府はより夢魔(ムーマ)に依存する形で政権を運営していった。


夢魔(ムーマ)は日本における影響力を加速度的に増大させていき、日本のニュース、バラエティー番組、ドラマ、アニメと言ったメディアにも夢魔(ムーマ)の影響力が及んでいった。


夢魔(ムーマ)は政府に人脈を伸ばしていき、日本の政治や社会を完全に掌握していった。


日本は完全に夢魔(ムーマ)の植民地となってしまった。


そのため大半の日本人は何の根拠もなく夢魔(ムーマ)を信奉していたが、日本政府が夢魔(ムーマ)に税金の中から多額の資金を提供し、経済格差がさらに広がったことで各地で一部の貧困層によるデモが激化していった。


そこに真の競争はなく、夢魔(ムーマ)による、夢魔(ムーマ)のための独裁的な競争が横行していた。


夢魔(ムーマ)以外の存在は市場に乗り出せる機会もなく、それどころか、発言権すらも与えられない。


夢魔(ムーマ)の恩恵を受けている人達と庶民、夢魔(ムーマ)に反対する人達の間で明らかな経済格差や生活格差が発生していた。


夢魔(ムーマ)は人をないがしろにし、権力で自分達のやり方を押し付けていった。


そこに多様性はない。


夢魔(ムーマ)や夢魔(ムーマ)の息がかかっている人は富み、経済的に苦しい人はさらに苦しくなると言う不条理が日本社会を覆っていった。


にも関わらず多くの日本人は科学技術によって人間の潜在能力を覚醒させ、全ての人間を幸せへと導くと言った夢魔(ムーマ)に惹かれていった。



 そこには希望を信じ、お互いを認め合い、お互いに助け合って、未来へと進んでいく人々の姿はなかった。



1つの考えに縛られた事で信頼を失ってしまった抜け殻が集まっている、ただそれだけだった。



 一方で日本は夢魔(ムーマ)の傀儡となっているのでは?、日本の主権がないがしろにされているのではないか?と夢魔(ムーマ)に対して批判的な考えを持っている人もいた。


日本政府にも日本政府と夢魔(ムーマ)の関係は政教分離に違反しているのではないか?と言う批判がきたが、夢魔(ムーマ)は経済特区であり、夢魔(ムーマ)の行っている事は宗教とは関係ないので問題ないとの見解で批判を退けた。


夢魔(ムーマ)はネットを通じて支持者を増やし、ネット上でも夢魔(ムーマ)は勢力を拡大していき、夢魔(ムーマ)を支持する勢力と陰謀論者や反ムーマの政治勢力を中心とした反ムーマ勢力の間でサイバーテロが起き、社会はより一層混乱していった。


夢魔(ムーマ)の政治的介入により、政治的な混乱が以前より激化し、仲間割れが目立つようになっていった。


日本政府は政治的機能を失い、完全に日本の政治は夢魔(ムーマ)によって握られてしまい、日本政府は沖縄の自然環境がただただ悪化していくのを黙ってみているしかなかった。


「PFOS(ピーフォス)の流出とかが問題になってるよね」


「ピーフォスってどんなの?」


「PFOS(ピーフォス)は消火剤とかに使われていて、汚染した地にずっと残るから汚染除去が難しいし、環境だけじゃなくて人体への害もかなり大きいみたい」


「俺達はもっと沖縄の事を真剣に考えないといけないな」








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