第19話 ヒロとタカヒロ

 タイガ達は昆虫世界や動物世界を探検したことで体が汚れてしまったので風呂に入ろうかなと思った。


タイガ達は湖を見つけて、そこに入浴しようとする。


すると、ヒロがとんでもないことを言い出した。


「じゃあ、混浴ってことでみんなで一緒に入るのはどう?」


ツバサは激しく動揺し、ソワソワしだした。


タカヒロはそんなヒロを止めようとし、タイガはヒロを怒鳴った。


「冗談だよ」


ヒロは少し焦ったような感じで言った。


「ちっ!」


「どっちが先に入る?」


「じゃんけんで決めようぜ」


タイガ、タケシ、ヒロ、タカヒロが先に入るか、ツバサが先に入るかはじゃんけんで決めることにした。


「男子の中から一人、代表だしてツバサとじゃんけんするのが良いんじゃない?」


「そうだな」


ヒロが代表になり、ツバサとじゃんけんすることにした。


「最初はグッ、じゃんけんぽん!あいこでしょ!あいこでしょ!」


「やるじゃん(心の声)」


お互いの顔つきが段々と真剣になってきた。


そして、決着がついた。


ヒロの勝ちだ。


ツバサは少し残念そうだった。


じゃんけんはヒロが勝ったので、タイガ、タケシ、ヒロ、タカヒロが先に入った。



 タイガは体を洗うついでに湖で泳いだ。


「やっぱ、これがいいわ!」


四人は水遊びをして楽しく過ごした。


その後、ツバサが湖に入った。


ヒロとタカヒロは湖から出た後、二人でお互いの思い出について語り合った。


すると、湖からバシャバシャと音が聞こえた。


ヒロはもしかしてタイガがツバサと一緒に入って、イチャイチャとはしゃいでいるのではとあらぬ想像をし、覗いてみた。


ツバサは湖にいる魚と楽しそうに遊んでいた。


「おお、めっちゃみえる!」


タカヒロは覗きを止めるように言った。


「もういいだろ」


タカヒロはヒロの肩を優しくたたき、静かに首を横に振った。


そっとしてあげてとのタカヒロの説得に納得し、覗きを止めた。



 その時、ヒロはタカヒロに助けられたことやどんな時も友達でいてくれたことを思い出した。


「ちょっと思い出したけどタカヒロは何かあったらいつも助けてくれたよな」


ヒロは嬉しそうに言った。


「なんだよ、急に」


「中学の頃、教室にエロ本持ってきてるやつがいて、それで僕が濡れ衣着せられたやつあるじゃん」


「あぁ、めっちゃ前にあったな」


「教室にエロ本持ってきたやつ、僕の机の中にエロ本を入れたって言っても誰も信じてくれなくってさ、あの時はやばかったな」



ヒロとタカヒロは回想に入った。



ヒロはクラスの目立っている女子をニヤニヤしながら見つめていた、性的にやばそうな話でゲラゲラと笑っていたと言った証言が次々とでてきて、窮地に立たされていた。


その証言の中にはいくつか嘘のものがあった。


さらに、エロ本をヒロの机の中に入れたやつから脅されていた。


「俺が机の中に入れたって絶対にゆうなよ!言ったら殺すからな!」


ヒロを冷たくにらみつけた。


周りの取り巻きはニタニタと笑っていた。


ヒロは恐怖のあまり固まってしまい、何もできず、ただただうなづいた。


ヒロと関わっていた人も彼のことを無視し、彼のことを相手にしなくなった。


そんなヒロにも何人か励ましてくれる人がいた。


ヒロはその人達が気になり、ある日、教室で彼らが話をしているのを聞いてしまった。


一瞬にしてヒロは真っ青になった。


彼らも陰でヒロのことを馬鹿にしていた。


「えっ、お前あいつとしゃべってきたの?」


「うそっ、マジやばくね?」


「もしかして、あいつと友達なの?」


「はっ、あんな変なのと友達なわけねーだろ!てか関わってみたけどやっぱあいつやばいぜ」


ヒロは立ち眩みのような感覚に襲われた。


ヒロは今までこれといった恐怖を感じたことはなかった。


しかし、この時、初めて、これが恐怖だと言う事を知った。


ヒロはクラスのみんなが一つの大きな化け物のように見えた。


彼は誰も味方してくれず、誰も信じてくれないと言うことに対し、悔しさや悲しさを感じ、それに耐えきれず、見えない所で拳を握りしめて、ポツポツと涙を流していた。


そんな中、唯一、彼を助け、ホローし、彼の濡れ衣を晴らそうとしたのが、タカヒロだった。



 ヒロは日頃から浮いた行動やクラスの和を乱す行動ばかりしてたのでタカヒロが味方してもすぐには信じてもらえなかったけれど、徐々に信じてもらえるようになった。


そして、タカヒロはヒロが修学旅行で浮いた行動をしたら、しっかりと注意し、みんなについていけず、困っている時は親身になって助けてくれた。


「今までいろいろと助けてくれてありがとう。そして、ごめんな。僕はいろいろとタカヒロに助けてもらったり、いつも味方になってくれたのに、タカヒロがクラスで一人ぼっちになった時は周りが怖くて、僕も一人ぼっちになるのが怖くて助けられなくてさ、本当にごめん」


ヒロはタカヒロに申し訳なさそうに言った。


「いいよ、気にしないで」


「ありがとう。僕は役立たずでその上、いつもやらかしてみんなに迷惑ばかりかけてるのにタカヒロはいつでも僕が悪い方に行くと、止めてくれたり、ピンチになったら助けてくれたりして、僕に対してしっかり関わってくれたのは感謝してるし、どんなことがあっても人を嫌ったり、悪口を言わない所が好きだからこれからもよろしく」


「もちろんだよ」


二人はとても嬉しそうな顔をしていた。


そんな二人の顔から爽やかさがにじみ出ていた。


この時、二人は勉強、運動はだめだけど、誰にも負けないものがある、それは絆だと確信した。



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