第12話 安らぎの村(前編)

 タイガ達はとある村に着いた。


「ここは安らぎの村でございます」


「安らぎ?もしかして疲れ切っている人とかがいるの?」


ツバサはとても不思議そうに聞いた。


「その通りです。さすがですね」


「人生に疲れ切っているとか?」


「半分は正解ですね」


ワンダーバードは意味深な感じで答えた。


「半分は正解ってどういうこと?」


「実はこの村にいる人達はみんな戦争で心を病み、今もその後遺症が残っているんだ」


「ってことはこの村にいる人達はコンピューターの想像が生み出したものじゃなくて現実の世界から来たってこと?」


ヒロは驚いたように聞いた。


「そう」


「俺らみたいに気がついたらこの世界にいたみたいな感じで強制的に連れてきたのかよ?」


タイガは怒っているような感じで聞いた。


「いいえ。あの方達は自ら進んでここに住んでいます」


「でも、何でここに?」


ツバサは不思議そうに聞いた。


「戦争を経験したことで心に傷をおってしまったことで現実の世界で生きることができなくなってしまったからです」


タイガ達はどこか深刻そうな顔で聞いていた。


「そういえば、戦争を体験した人の多くがPTSDになるって聞いたけど」


「ここまでひどいんだなぁ」


「なのでそんな傷ついた心の痛みを少しでも和らげるために苦しみも悲しみもなく、飢えや病気もなく、そして、死の恐怖もないここに来てもらっています」


「何の不安もなく安心してのんびりと暮らせるって感じなの?」


「そうです。ただし、何か問題を起こしたり、誰かに迷惑をかけるようなことをしたとコンピューターが判断したら、すぐに現実の世界に戻っていただきます」


ワンダーバードはとても真剣そうに言った。


「何か急にルールが厳しそうになったけど」


「まぁ、この世界に来る前にコンピューターがみんなの記憶や性格を調べることである程度安全な人がこの世界に来れるので大丈夫だと思いますよ」


「この村のルールって具体的にはどんなのがあるの?」


「特に決まったルールはないですよ。問題を起こさなければ大丈夫です」


「わかった」


「この村についてもっと知りたかったら、あっちにいるタツヤに聞いてみると良いよ」


タイガ達はタツヤにも聞いてみた。


「すいません。タツヤさんですか?」


「そうだけど、何か用?」


「この村のことについて聞きたいことがあります」


「良いよ!俺、この村に住んでるから分からないことがあったら何でも聞いてよ」


タツヤは嬉しそうに言った。


「この村ではどのようなことをやるのですか?」


「基本的にはみんなで農作業を手伝ったりするよ。後、たまに祭りとかもやるよ」


「祭りか!良いじゃん!」


タイガはとても張り切っていた。


「そのかわり、村に住むんだったら農作業も手伝わないとだめだよ」


「農作業って何を作っているのですか?」


「米だよ」


「それで何を手伝えば良いんですか?」


「めんどくさいなぁ。いちいち俺に聞くなよ」


タツヤはだるそうな感じで言った。


「初めは何でも俺に聞けって言ってたじゃんかよ!」


タイガはとても不満そうに言った。


「ごめん。俺もあんまよくわかんないから、あっちにいる年配の人達に聞いて」


タツヤは相変わらずだるそうだった。


「チッ、使えねぇな」


タイガはタツヤを睨んだ。


タイガとタツヤは少しの間、お互いに睨み合った。


そして、タイガ達は成り行きで農作業を手伝うことになった。


「あ〜、ダリィなぁ。せめて所得倍増計画やった時ぐらいにでてきた農作業用の機械があればなぁ。こんなクソ暑いのに全部手作業とか原始人じゃあるまいし、やってられっかよ!」


タイガはブツブツと文句を言いながらやっていた。


「うわっ!めっちゃきつい!」


「なんていうか、普通にめんどくさい」


ヒロとタカヒロも少しダルそうだった。


「つーかさぁ、頭の中で米を思い浮かべて、そこにだせば良いだけだろ!わざわざこんな面倒な農作業やる必要あんのかよ?」


タイガはとてつもなくイラついていた。


「あっ、この村の人達が食べてる食べ物は昭和の人達の記憶を元にしてできてるかも。てことはこの村の食べ物は昭和の味がするかもしれないじゃん」


ツバサは明るくみんなを励まし、タツヤも親切にみんなを手伝った。


「昭和の味か!おもしれぇ!俺らの時代にはない味を思う存分に楽しむぞ!」


タイガはさっきとはうってかわって、とてもやる気が出てきた。


作業をやっていく中でタイガとタツヤは仲直りしていった。


作業は順調に進んだ。



 その夜、美味しい食べ物を食べて気分が良くなったタイガ達は村の人達と仲良くなった。


「やっぱ、昭和の味は一味違うっていうか。何か格別だな」


すると、ある村の人からみんなは今、何をやってるの?と聞かれた。


「普通に学生やってて、なんか気がついたらこの世界に来ていて、この世界にあるバーチャルアークって言う宝を探すためにいろんな場所を探検してるんだ」


「うらやましい」


「えっ、そうかなぁ」


その人は語りだした。


その人が言うには戦争のせいで青春時代と言うものがなかったと言うことだ。


タイガ達はその人が言ったうらやましいと言う言葉に隠された意味を知った。


「青春を台無しにされた人達のためにも戦争をなくさないといけないな」


「なんていうか、僕たちは戦争のことをあまり知らないっていうか、学校もたまにしか教えてくれないっていうか、それに太平洋戦争が終わったのは本当は9月7日らしいんだ」


タイガ達は戦争について語り合った。












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