第9話 ダイナゾーン

 タイガ達がさらに先へ進むとそこにはジャングルがあった。


「ここはダイナゾーンでございます」


ワンダーバードはとてつもなく嬉しそうに言った。


「何かとても嬉しそうだな」


すると、ワンダーバードはニカッと笑った。


「ここには鳥の祖先である恐竜がわんさかいるんですよ」


「えっ、本当に!?」


「うそっ!?」


「恐竜がいるの?」


「マジかよ!良いじゃん!」


みんなはパッと目を見開いて、とてつもなく驚き、タイガだけめちゃくちゃ喜んでいた。


「さっそく、行ってみようぜ!」


タイガ達はジャングルの中を進んでいくと川が見えた。


その川にはスコミムスとバリオニクスがいた。


その二頭の恐竜は魚を獲っていた。


その時、川の中から何者かが二頭の恐竜をジッと静かに見つめていた。


それはゆっくりと水面から姿を出した。


スピノサウルスだった。


スピノサウルスはどけ!と言わんばかりに二頭の恐竜を威圧した。


スピノサウルスとの体格差から二頭の恐竜はおとなしく退いた。


「さすがだなぁ」


タカヒロは驚いたように見ていた。


「でも、あのスピノサウルス、何か不格好じゃない?」


そのスピノサウルスは巨体ではあるものの四つん這いでどこか不格好だった。


「何か思っていたのと違うような」


「っていうかけっこうヒョロヒョロしてる」


「あっ、足も短い」


「もっと何て言うかこう強そうなイメージがあったけど」


「何かがっかり」


みんなががっかりしているとヒロが解説しだした。


「でも、スピノサウルスは水中での生活に適していたんだ。スピノサウルスはほとんど水中の中で過ごしてたって言われてるんだ。スピノサウルスは骨密度がとても高かったから水中での生活に適していて、高い骨密度のおかげで浮力を得られ、それでスイスイと泳いでたんだ。ちなみに骨密度が高かったから体重はとても重く、21トンぐらいあったんじゃないかって言われてるんだ」


ヒロは少し得意げに言った。


タイガはとても退屈そうに聞いていた。


スピノサウルスはヒールっぽいけど、とてつもない恐ろしさを持っているかなりの強者で頭部の骨は龍みたいな感じでとてもかっこ良いとタイガは思っていて、幼少期の頃遊んでいた恐竜のおもちゃの中でスピノサウルスはお気に入りの部類に入っていた。


タイガはスピノサウルスは水中だけではなく陸上でもかなり強かったと信じていた。


なので、タイガは落胆していた。


そんなタイガの顔はとても残念そうだった。


「マジかよ」


「ってことはスピノサウルスは陸上には適していなかったってこと?」


タカヒロは目をまん丸くして聞いた。


「スピノサウルスについてはまだ分かってないことが多いけど、水中ではかなり強かったんだ」


タイガ達はスピノサウルスが魚を獲っている様子をジッと見ていた。


スピノサウルスが次から次へと魚を捕らえていく様子を見て、タイガ達は感心した。


「おぉ、さすがだな」


「あっ、川に口つけてる」


「ああやって魚を捕るんだよ。スピノサウルスの口先には高性能のセンサーがあって、それで水流の細かな違いを察知して、瞬時に魚がいる場所を判断して素早く捉えるんだ」


「へぇ〜、よく知ってるね」


タカヒロはとても感心していた。


「恐竜博士じゃん」


ツバサは見直したような目でヒロを見ていた。


「ヒロ、思ったけど他の肉食恐竜にはあの変な突起はないのに何でスピノサウルスにはあるんだよ?」


タイガは不思議そうに聞いた。


「そういえば、あの突起はかなり重そうで邪魔くさいのに何でついてるんだろ?」


みんなも不思議そうに思った。


「あの突起はラジエーターみたいな役割をしていて、ヨットの帆のように効率よく風を受けて体温を上手い具合に調節してたって言われてるんだ」


「ほぉ〜」


「ふ〜ん」


「スピノサウルスって何かワニに似ているような気がする。何て言うかワニって水中では素早く動けるけど陸上での動きは鈍いって言うし」


ツバサはスピノサウルスはワニに似ていると考えた。


「そうそう、ワニにもスピノサウルスみたいに口のあたりに高性能のセンサーがついているんだ」


「へぇ〜、本当にワニに似てるんだ」


すると、スピノサウルスはタイガ達の方を向いた。


スピノサウルスはゆっくりとタイガ達の方へやってきた。


「あっ、近づいてきた」


ツバサは驚いてみんなに知らせた。


「でも、スピノサウルスは水中ではとても強かったみたいだけど、陸上では弱そうだし、大丈夫だよ」


タカヒロはのんきそうに言った。


「そうでもないよ。スピノサウルス類は魚だけじゃなくて、翼竜やイグアノドンも狩っていたんだ。油断できない」


ヒロは真剣に言った。


「陸上でもハンターとしての素質があったってこと?」


タカヒロは恐る恐る聞いた。


「その可能性はあると思う」


ヒロは少し暗そうに言った。


「逃げるぞ!」


タイガは急いで逃げた。


すると、もう一体のスピノサウルスがやってきた。


タイガ達は川岸に追い詰められた。


タイガはとっさに銃で応戦しようとするとなぜかタイガ達を追い詰めたスピノサウルスは逃げていった。


ヒロは川の方を見た。


すると、川からワニがジッと見つめていた。


「そうか!」


ヒロが爽やかな感じで言った。


「何だよ?」


タイガは不思議そうに聞いた。


「スピノサウルスはワニを恐れて逃げたんだ」


ヒロはビシッと答えた。


「えっ、スピノサウルスは水の中では強いんじゃないの?」


みんなは目をまん丸くして驚いていた。


「確かに水の中では強かったけれどワニには敵わなかったみたいなんだ」


ヒロは少し残念そうに言った。


「え〜、水の中では王者じゃなかったの?」


みんなはとてつもなく落胆した。


「スピノサウルスはティラノサウルスとよく戦ったりして、けっこうパワフルってイメージがあったけれど、魚や割と小さな生き物を食べたりしていて何か繊細というか地味な感じだったんだね」


ツバサは身振り手振りで表現しながら言った。


タケシ、タカヒロはそんなツバサをかわいいなと思い、ジッと見つめていた。


タイガはそんな二人に何、ジッと見てるんだ!気持ち悪りぃ!と言わんばかりに圧をかけた。


二人は焦ってあたふたして、ツバサからとっさに目をそらした。


「スピノサウルスは大型肉食恐竜を食べることはほとんどなかったみたいだし、大型肉食恐竜と戦うこともあまりなかったみたいなんだ」


「って言うことはスピノサウルスは大型の肉食恐竜に出くわしていなかったってこと?」


「そんなことないよ。スピノサウルスはカルカロドントサウルスに襲われたことがあるんだ」


「カルカロドントサウルスって言ったら、強靭な体と巧みな戦略で次々とありとあらゆるものを捕食することで有名なティラノサウルス並みに強い肉食恐竜でしょ?」


「そうそう」


「もしかして、スピノサウルスはカルカロドントサウルスにいじめられていた的な感じなの?」


「そうじゃないよ。時にはカルカロドントサウルスと争うこともあったけれど基本的にはスピノサウルスとカルカロドントサウルスはお互いのテリトリーには関わらないようにして共存していたんだ。それに大型の肉食恐竜同士が争うってことはほとんどなかったんだよ」


「へぇ〜、意外」


ツバサはとても興味津々だった。


ヒロもそんなツバサを見て、嬉しくなり、どんどん話がはずんでいった。


タイガはそんな二人をどこか不満そうに見ていた。


「ちょっと気になっていたけれど、なんでスピノサウルスは他の肉食恐竜とは違ってずっと水の中にいるようになったの?」


「それは水の中でずっと生活していくことで他の肉食恐竜との争いを上手い具合に避けていたんだ」


「おぉ〜、そういう戦略だったんだ」


「スピノサウルスは水中に適するように進化したんだ。スピノサウルスの口と手の方を見てよ」


ツバサはスピノサウルスの口と手をじっくり観察した。


すると、ツバサはスピノサウルスの手に水かきがあることを発見した。


「あっ、水かきがある!」


ツバサはとても驚いた。


「口の方を見て、何か気づいたことはある?」


「そういえば、スピノサウルスの口は他の肉食恐竜の口とは違って細いけど」


ツバサは首をかしげながら答えた。


「他の肉食恐竜の場合は力強く噛み砕くことができるようになっていて、スピノサウルスは噛み砕くのではなく獲った魚を上手くくわえるようにできてるんだ。スピノサウルスの歯と前脚は魚を食べるのに適していたんだ」


「本当に水中で生きていくのに特化してたんだ。ところで何でスピノサウルスは分かってないことが多かったり、研究者の間でイメージがコロコロと変わったりしてるの?」


ツバサはとても不思議そうに聞いた。


「第二次世界大戦でスピノサウルスの全身の骨が焼失してしまって、それでスピノサウルスの研究が大幅に遅れてしまったんだ」


「ふ〜ん、それでスピノサウルスの化石はどこで発掘されてるの?」


「主に北アフリカから発掘されてるよ。スピノサウルスは北アフリカにいて、さっき言ったカルカロドントサウルスも北アフリカにいたんだ」


「ってことはスピノサウルスとティラノサウルスが出くわすことはなかったのか」


「そうだね」


「スピノサウルスは魅力的だね。謎が多い所や他の肉食恐竜とは違う部分が多い所、肉食恐竜の中で唯一、水中の中でずっと過ごしていた所が魅力的だと思うの」


ツバサはとても嬉しそうに言った。


「そう言われればそうだね」


「スピノサウルスは肉食恐竜の中で唯一、水中でずっと過ごしてたってすごく特徴的で良いよな」


「それぞれ違うからそこが面白いし、何て言うか素晴らしい魅力だよね」


「やっぱ、肉食恐竜の中でスピノサウルスだけがずっと水中で過ごしてたって言うのが最大の魅力だよな」



 他と違うと言うのは違和感に感じてしまうことがある。



でも、他と違うと言うのはみんな同じである。



みんなそれぞれ違うからこそみんな素晴らしい。



みんなと違うと言うことはみんなと比べて劣っているものを持っているのではなく、みんなにはない個性を持っていると言うこと。



その個性こそが魅力である。



タイガ達は改めて感じた。



タイガ達はさらに先へ進んだ。


すると、トリケラトプスが現れた。


「あっ、もしかしてトリケラトプスじゃない?」


タカヒロが指をさして嬉しそうに言った。


「あっ、ほんとだ!」


みんな嬉しそうだった。


「近くで見てみようぜ!」


タイガは張り切ってトリケラトプスの近くに行こうとした。


「やめた方が良いよ」


ヒロが止めようとした。


「ああっ!?」


タイガは不満そうにしかめっ面で威圧した。


「トリケラトプスは思ってるより、けっこう凶暴かも」


ヒロは弱々しそうに言った。


「マジかよ。確かに頭の方についてるツノは危なそうだしな」


その時、ウォォォォォと言う地面そのものを震え上がらせるような声が響いた。


その声の主は茂みの中からゆっくりと姿を現した。


ドシンドシンと言う地鳴りと共に現れた。


ティラノサウルスだ。


そのティラノサウルスはトリケラトプスを待ち伏せていたのだ。


「あっ、あれティラノサウルスじゃない?」


「たぶんティラノサウルスだと思う」


「すげぇ!」


みんなはとてつもなく驚いて目をまん丸くした。


タイガはとてつもなく嬉しそうだった。


ティラノサウルスはタイガにとって彼の憧れの全てを持っている恐竜だったからだ。


トリケラトプスは頭の方についているツノでティラノサウルスを威圧していた。


そして、ツノを有す獣は突進した。


ティラノサウルスは押されていた。


が、しかし、ティラノサウルスは一瞬の隙を突いて、獲物の死角に回り込んで力強く嚙みついた。


トリケラトプスは徐々に動かなくなっていった。


そして、トリケラトプスは静かに地面に倒れこんだ。


ウォォォォォと言う低い声が辺り一面に響き渡った。


まるで、王様は俺だ!と言っているようだった。


「とても良い闘いだったな」


タイガはティラノサウルスに見とれていた。


タイガはトリケラトプスとティラノサウルスの闘いを見て、兄との喧嘩を思い出した。


兄は道具も使って、タイガを攻めてくるので兄が勝つこともあれば、タイガは一瞬の隙をついて死角に回り込み、兄の急所などを力強く蹴ったり、叩くと言った戦法を取っていたのでタイガが勝つこともあった。


すると、ティラノサウルスはタイガ達に気づき、タイガ達の方をジッと見た。


ティラノサウルスは首を回して、覗き込んだ。


ヤバイ!と感じたタイガ達は一目散に逃げていった。



 逃げた先にはステゴサウルスがいた。


タイガ達が近づこうとすると、ヒロが止めた。


「ステゴサウルスは絶対、おとなしいだろ?」


タイガは不満そうに聞いた。


「あのしっぽ見てよ」


タイガはステゴサウルスのしっぽをジッと見た。


「あっ、しっぽにはトゲがある」


タイガはステゴサウルスのしっぽにトゲがあることに気づいた。


「ステゴサウルスはあのしっぽにあるトゲで攻撃してくることがあるんだ」


ヒロは真剣そうに言った。


「確かに当たったら痛そうだな」


タイガは納得したように言った。


タイガ達はステゴサウルスをじっくり観察していた。


「背中にあるギザギザ、きれいだね」


「あれで体温を調節してたんだよ」


「スピノサウルスみたいだね」


すると、ステゴサウルスがタイガ達の方へやってきた。


「あっ、こっちにくる」


ステゴサウルスはタイガ達に向けてしっぽをブンブンと振り回して威嚇してきた。


「わぁっ!」


タイガ達はしっぽを避けながらどうにか逃げた。


「危なかったぁ」


「でも、割とすんなりと逃げ切れたような」


「ステゴサウルスは恐竜の中では知能があまり高くないからね」


「要するにバカってことか!」


タイガは笑いながら言った。


ワンダーバードはまるでタイガみたいと言わんばかりにニヤニヤしながらタイガを見つめていた。



 タイガ達はさらに先へと進んでいった。


カサッ


一瞬、音がした。


タイガ達は何者かが横切ったのではないかと思い、辺りを確認したが、何もいなかった。


勘違いかと思い、タイガ達は進んでいくと鳥に若干、似ている声が聞こえてきた。


タイガ達は声がした方を調べた。


シャャャャャャ、カァァァァァァ


背後から何者かが金切り声を上げて襲ってきた。


タイガ達はとっさに銃で応戦した。


タイガ達は謎の声の正体を知った。


タイガ達は一瞬、ゾッとした。


ものすごい恐怖がタイガ達を静かに包み込んだ。


全てを食い尽くすような気が辺り一面を覆った。


ラプトルだ。


ラプトルは次から次へと現れ、あたふたしているタイガ達の行く手を阻んだ。


そして、タイガ達はラプトルに囲まれそうになった。


タイガ達は銃で応戦するも次から次へと大勢の群れで襲い、不意をついて攻撃するラプトルに対し、苦戦していた。


タイガ達は銃を撃ちながら逃げた。


すると、ラプトルは急に去っていった。


タイガ達はきょとんとしていた。


「なんで逃げていったんだ?」


その時、タイガ達の上からバサバサッと音がした。


タイガ達は音のする方を見た。


プテラノドンだ。


タイガ達は空に持ち上げられた。


「ああああああああ、た〜すけ〜て〜」


「くそっ!」


タイガ達は胸筋が引っ張られるような感覚に襲われた。


ヒロとタカヒロはパニックになっていた。


パニックのあまり顔面が崩壊していた。


「落ち着け!プテラノドンを銃で撃って、すぐに足場になるようなものを想像してだせ」


タイガは冷静に考えて、指示を出した。


「うん、分かった」


「よし!」


「できたらクッションみたいなものもだせ」


タイガ達はプテラノドンを攻略し、順調に次から次へと足場をだして、無事に地面に降り立った。


タイガ達はホッと胸をなでおろした。


その時、例の金切り声が聞こえた。


そして、金切り声の主はすかさず飛び掛かってきた。


「ああああああああああ」


タイガ達は必死で銃で応戦するもラプトルは次から次へとタイガ達の不意をついて襲ってきた。


そして、タイガ達はラプトルに囲まれてしまった。


タイガ達はどうにか突破口を開き、逃げた。


群れで行動し、物陰に隠れて隙をついて攻撃してくるラプトルに苦戦を強いられたタイガ達はこんな思いは二度としたくないと思った。


だが、その夜、タイガ達はもっと恐ろしく、一生、脳裏に焼き付いて離れないようなことを経験する。



































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