厨二病は土壇場で禁断解放する

「さぁさぁ、どうするの?」


「ぎゃぁぁぁぁぁあああああぁぁぁ。一!

早くやっつけてくれ! お前だけが頼りなんだ! っていうかこいつ頭やべぇんだけど〜!」


「あらあら騒がしくしちゃって。カワイイ」


「ひぃぃぃぃ!」



「オマエ、タベル」


「ハッ、言ってろ、デブが」


(巨人でカタコト……タベルって…………こいつも相当やべぇ)


先程まで一言も喋らなかった大型のトロルのような魔族。第一声が覚束ない言葉だったことも相まって、さらなる緊張が襲いかかる。


「ゴォォォォォ」

突如として翔の目の前を棍棒が通り過ぎる


「……チッ面倒だなぁ」


(あ、あ、危ねぇぇぇぇぇ!俺が咄嗟に反応出来てなかったら、頭が潰れて脳みそぐちゃぐちゃだったぞ)



一方ファウスト。


「やりますねぇ。戦闘開始3秒でグレイをやるとは」


「口から出た言葉は自分の身を滅ぼすだけだ。それより、あんたは余裕ぶっているけど、なにか策でもあるのか?」


「さぁ、どうでしょうね。そちらこそ、仲間のことが気になって集中できていないようですがネェ!」


「クッ」


3人はお互いに四天王と一対一。フォローに回りたい一だが、さっきから助けにいこうとしたらすかさず素早い動きでコースを塞がれ、上手く立ち回れない。


「まずはお前を倒すしかないようだな」


「倒せますかねぇ」


「ダークフレイム!」


「グァァ!」


(良し! 今のうちに、コンビニエンサーの救出だ。ロードはきっと何とかしてくれる)


「ほぉらぁぁ〜食べちゃうわよぉぉぉぉぉぉーー」


「助けてくれ〜〜神様仏様一はじめ様〜」


「 しゃがめ! コンビニエンサー」


「お、おう分かった」


スパン


「ギャァアアァァァァァ痛いわ〜それ聖剣ね。んもう! 仕方ないわね。まずはあんたか


「遅い」


シャキン


刹那にも満たない瞬間に、微塵切りのように細かくなって消滅した。


だが、


バタン


「おい! しっかりしてくれ はじめ!」


その数秒後に、はじめも倒れてしまった。


「どうやらやっと効いたようですね」


「お前! はじめに何をした!」


「貴方は実に強い。しかし体は人間。私が出す猛毒には勝てまい。何せこの毒は大型モンスターであろうが数秒で死に至らしめるほどに強力なのだからねぇ」


「……だ、が、そんな……た…ない」


「くらった覚えはないっとおっしゃいたいのでしょう? その通り、私は貴方に傷1つ付けることは叶いませんでした。それどころか私の体は焼け焦げてしまいました。全く、計算外でしたよ」


「……」


「でもねぇ、私は別に。だって私の周りにいるだけで、貴方は私が出す猛毒を吸っていたのだから」


「嘘だろ?」


「無理もありません。無味無色無臭。この毒は効果だけでなく使い勝手においても完璧なのですよ」


「クソ!」


「さて、残すは貴方のみですね」


「はっ? まだ翔がって…………翔!」


見れば翔もボロポロの状態で倒れ込んでいた。


「クッどうすれば…………え? ………………なるほど。わかったぜ はじめ! やってやるよ!」




(あ〜俺死んだな)


翔は自分の死を悟った。全身が全く言うことを聞かない。口も目もかろうじて動く。だが、一体それで何が出来るというのか。


(折角異世界来れたのになぁ〜結局なんも出来なかったなぁ。それに森で食ったモンスター。クソまずかったなぁ〜なんかあの後ずっと体になんか溜まってる要な気がするけど………… )


翔は走馬灯を見ているかのように今までの事を振り返っていた。


(目と口しか動かねぇ……か。そういやぁ死亡フラグ喋った奴がいたっけ? ……おい、ちょっと待てよ。それ俺じゃなくてアイツじゃねぇかよ! これ理不尽じゃね? クソ………責めてアイツが死んでからだろうが)


「オワリダ」


巨人は棍棒を大きく振り上げた。


(ふざけんなぁ! 覚醒しろよ俺! 死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃう〜)


すると翔の体からひかりがあふ出す。


「ナンダコノヒカリハ」



「よっしゃぁ! きたぜぇぇぇぇぇぇぇぇ! 遂に俺の禁断の力が解き放たれたぁ!!」


(やっと来たぜこのご都合的展開! やっぱこれだよな! 異世界ってこうじゃないとな )


翔は嬉しさのあまり貫いてきたクールなキャラが崩壊しても自身では全く気が付かないほどに興奮している。


(よし! 今ならいける!)


「我は知の神! 全てを見通し、全てを予知せし者!我は力の神! 大陸を片手で掴み、自ら大陸を作りし者! 我は愛の神! 平和を愛し、慈悲深く人を見守りし者!


「サセナイ」


大ぶりの棍棒を、翔の頭目掛けて振り下ろそうとする。しかし、


悪の心を持つものに光の鉄槌を与える!

ジ・ジャッチメント!」


「ナ、ナンダコノヒカリハ」


翔の周りから光が溢れ出すそしてその光に飲まれ、巨人は跡形もなく消失した。


「な、なんだあの力は!」


最後に残った四天王ザイガスは、流石に動揺せざるおえなかった。


「だが、もう貴様らに力は残っていません。そうそうに片付けて差しあげましょう」


「誰が力は残っていないって?」


「な、な、何!」


目の前には先程まで毒にやられていたはじめが立っていた。


「お前は毒で…………まさか!」


「いくら俺が雑魚だからって、油断しすぎじゃないかな? 」


「お前に毒ガスを食らって体が動けなくなった時、俺はコンビニエンサーにアイコンタクトでこう伝えたのさ!と。」


「…………」


「君との戦闘の間、おかしいと思ってたんだ。


「馬鹿な! 息をしているかしていないかなど、わかるはずがない!」


「甘い! 確かに普通は分からない。俺も勘違いかどうか疑ったさ。だからこそ試した」


「何をだ」


「恐らく無呼吸で俺と長期戦うのには制限があったはずだ。生き物は、本来呼吸することでエネルギーを作る。故に、お前は呼吸しない状態だと早く動けないし、力も半減する」


「だが!」


「そう。君はうまく隠せていたと思うよ。!」


「俺は敢えて隙を作ることで、お前の動きに制限があるのかを見極めることにした。案の定お前は俺が隙を見せても、最小限の動きのみで、積極的に責めては来なかった」


「クッ…………」


「しかし生憎君が何を企んでいるのかはわからなくてね。俺も無様を晒してしまったよ。それに盟友の覚醒も、光は感じたが、上手く見れなかったじゃないか」


「しかし! 俺は解毒薬の場所なんて教えた覚えはない! なのに何故お前は解毒薬を手に入れることが出来た!」


「簡単な話だ。そもそも、俺が倒れてしまった時に、既に毒で俺がやられたことは分かった。そうなれば君が呼吸していなかった理由も分かる。


「…………大丈夫なのかファウスト」


「ああ、問題ない。君の方こそ大丈夫なのか?」


「俺も大丈夫だ。」


話に夢中になっている隙に、拓斗は翔の元により、傷の手当をしていた。ここに来る前に、万が一負傷した際、拓斗からサポートを受ける手筈だった。


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ何故だァ!? どこで間違えた!? 私はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「そう急かさないでくれ。種明かしはまだ終わっていない」


そう言ってはじめは続ける。


「君を見ていて感じたこと。それは君はかなり慎重だということ。故にこう考えた。

とね。」


「なるほど! それで俺にって合図を送ったんだな」


「そういうことだ。さっきも言ったが、君は慎重だ。故に、もし手元に解毒薬を持っていれば、俺との戦闘中に全部なくなってしまうことを恐れるはずだ。」


「…………」


ザイガスは再び黙り込む。


「ならばどこかに解毒薬が隠されている。それも、


「私はまんまとしてやられたという訳ですか…………だが!」


キーン


剣と剣がぶつかり合い、けたたましい音と共に、微かに火花が飛び散る


「あなた達が弱っていることは間違いない!

四天王を舐めるなぁぁぁ! 」


「確かに、君は元のハイに入る空気の量が尋常ではないようだし、俺も舐めてかかっていた訳では無いが…………どうした?焦ると感情的になるんだね。それともこれが本来の姿なのか? 大物ぶっていた化けの皮が剥がれているぞ!」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいぃぃぃぃ!」


シュッ


一に気を取られている隙に、翔が渾身の力を込めてザイガスの首を切断する。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁがァァァァァァ」


そのままザイガスは動かなくなった。

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