厨二病はいきなり魔王幹部と戦う

森での騒動から3時間後。


「おいお前ら! 今度はどこに向かってんだよ! 地図もないのにこの先どこ目指せばいいのかわかるってのか?」


「安心しろ。おそらくここから先には魔界がある」


「安心できるか! おい、翔もこれでいいのか?」


「ああ。俺はこいつが手に入ったからな。もう怖いものなんかない。武器さえあれば、きっと大丈夫だ!」


そう言ってなぜか森に落ちていた金属の剣を天に掲げている。


「 ん? フレイムロード、君に怖いものなんてあったのか?」


「あ、ああいや違うこれは言葉のあやだ。 無論元より怖いものなどない。素手であろうと俺は強い。しかし、やはりえものの有る無しは戦力に直結する。それが無ければ不安は完全には抜けぬだろう?」


(こいつ、さては結構ビビってやがるな)


「たしかに、 君は魔法とか異能よりも肉体派だったな。だとしたら武器は必需品だったろう。気がつかずすまなかった」


「何を言う。俺は武器など無くても問題は無い! あくまで保険だ」


「おい、折角見栄を張る必要がなくなったってのにそれ 「違う! 見栄では無いぞ! 口を慎め! この失禁コンビニが! 」


「俺は漏らしてはない! そこんとこ間違えるなよな!」


「2人とも、もうすぐだから静かにしろ! だんだん瘴気が強くなっている!」


「……さっきも思ったんだが、お前らって第六感みたいなもの持ってんのか? さっきも全然分かんなかったし、今も俺は瘴気なんて感じないけど……少し薄暗いとこだな〜とは思うだけで………」


「まだまだだな! 我らほどになれば意識せずとも瘴気くらいは探知できてしまうぞ! な、ファウスト」


「そうなのかロード? 流石だな。俺は意識しないと感知出来ないぞ」


「あ、まぁ、それは……そう! この俺がこの中で1番の実力を持っているからにほかならないだ!」


「いや、ただ適当に喋ってたからだろ(笑)」


「なんだと貴様! 今ここで叩き潰されたいというのか!」


2人はまたしても大声で喧嘩を始める。一は先程は注意していたが、もうそんな余裕はないのか、その様子には目もくれず、先へ進もうとしていた。


「だいたい剣1本手に入れたからって、お前は魔王とか出てきた時ほんとに倒せると思ってんのか?」


「…………ファンタジーものの展開なら、俺TUEEEEなら、一撃で 、そう、ワンパンで……倒せるはずだ!」


「楽観的すぎるよそれは!」


「う、うるさい! それより気を引き締めろ! 俺の経験上、そろそろ来る!」


「かぁっーーー出ましたよ、この、自分が転移者だからって全てお約束的展開になると思ってる残念系主人公! 出るわけないだろ?ていうか出てもどうせ雑魚だろ。 さっきから適当ばっか言うなよな」


「だから!それがフラグだっつってんだろ!

いい加減にしろやこらぁ! 」


バサッ。


大きな黒い翼をもつ何かが目の前に降りてきた。それと同時に、あたりは夜のような闇に包まれた。


「何やら不穏な気配を感じました。あなた達、さては……転移者ですね」


(……やっぱりこうなってしまったか……おっと、忘れていた。)


「誰だ貴様は!」


「私はセルベリア。魔王幹部のうちの1人です。短い間ですがよろしくお願いします」


「やべぇ! 何とかしてくれ一! 俺死んじゃうよ〜」


「よしファウスト、ナイトメアを使おう。あれでこいつの動きを封じれば……」


翔は即座にはじめに先程の異能を使うようすすめる。しかし、


「悪いがそれは出来ない」


「何故だファウスト!」


「俺の異能は全てインターバルがいる……」


「それじゃあどうすれば……」


「作戦がある。だがそれには時間がかかる。その間は………頼むぞ! ロード!」


そう言ってはじめは長い詠唱を始めた。


「…………ん? おい。 ちょっと待てくれファウスト! 頼むとはどういうことだ!」


「ん〜何やら怪しいですね〜その左手。早いうちに消しておかなければ……それでは、さようなら」


「あぁもうダメだー。最後にお母さんの作った味噌汁……飲みたかったなぁ〜」


「貴様は黙っていろ! というかまだ諦めるんじゃない! 嫌だ。俺は死にたくないぞ! くっ!どうすれば…………そうか!こいつは見るからに闇の存在。ならば!」


そう言って彼はポケットに入っていた携帯のLightでセルベリアを照らす。


「ぐわっ! なんですかその光は! ここは闇の結界が張られていて、光魔法は発動出来ないはず!」


「残念だったな! 貴様が光に弱いことは俺にはおみとうしだ! そしてこれが我に宿りし聖なる力、ホーリーノバァだ!」


(まじかよ。こいつスマホのライト目に入っただけで苦しんでんのか? )


偶然にも光が極端に苦手な魔族だったらしい。


「……やったな翔! なんか携帯のライトで照らしてる時は(こいつホントに頭いっちまったのか?)って思ったけど…良かった! なんだ、やっぱ雑魚だったじゃん。何はともあれ、これで俺たち勝ったんだな!」


「………お前の頭の方がおかしくなったんじゃないのか、もうお前は殺す! 何度言えばわかるんだ! 学習しろ!」


「え? なんのこと?」


そんな話し合いの間に、ゆっくりと、

倒されたと思ったセルベリアがおもむろに立ち上がる。


「少々なめてかかっていたことは謝りましょう。先程の力、やはり只者ではない。しかしこれまでです!」


彼の周りからどんどん闇が溢れてくる。それは全身をおおっていき、翔のライトもまるで通用しなくなった。


(ダメだ、これは詰んだか?)


翔はそう思った。また拓斗については、


「ダメだー俺はもう逃げる」


さっそうと逃げていた。


(馬鹿が。逃げたってどうせ捕まるのが落ちだろうに………… )


既に戦意を失った翔は必死に逃げるコンビニに向かってそうつぶやく。しかし、


「な、何故だ! 俺の闇が、どんどん薄く……何故だァァァ!」


「教えてやろう。それは、俺が世界一の異能使いだからだ!」


そう言ってはじめは左手を点に掲げる。


その手の上には、セルベリアがだす闇を、全て吸収する1つの凝縮されたドス黒い球体が発生していた。


「穿て!ブラックメテオストライク!」


すると、はじめの手の上の漆黒の球体が、セルベリアに向かって落ちていく。その球体は、周囲の木々をも飲み込み、


「グガァァーーこ、こんなハズではァァ」


セルベリアまでもを飲み込む。そして消滅させる。


見れば巨大なクレーターができていた。


「どうやら、貴様の闇より、我が盟友ファウストの闇の方が一段と深かったようだな」


(よし。やったな的なセリフが言えた!)


「どうにかなったなロード、それより、さっきの起点、流石だったな!」


「そ、そうだな。あれがなければお前もあの大技は打てなかっただろう?」




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