第28話

 結局のところ、俺達は壷井晴美の依頼を無事完遂した。晴美さんは安心して夫婦仲睦まじく過ごしているだろう。

 稲海も大学が休みの期間にはいった。丹波探偵事務所には3人が揃っていた。

「ええ〜、絶対山がいいですって。テント張って火起こしてバーベキューしましょうよ」

「いやいや、絶対海だろ。山とか虫いるし、マジ無理」

「虫が苦手って乙女ですか?あなたおっさんでしょう。そんな可愛さアピールしなくていいですって」

「そんなアピールしてないは、お前こそ水着になってその貧相な胸晒すのが嫌なんだろ」

瞬間、世界が揺れた。右頬には鈍痛。

「いや、お前。グーはないだろ、グーは!」

確かに口が滑ってしまって気分を害してしまったのはわかるけど、俺が悪かったのだけどね。それに君の雇い主なんだけど!

「安心してください、ちゃんと手加減してます」

 マジか!あれで手加減した力だったら、全力だと時速40キロぐらいの軽自動車だったら止めれるんじゃないか、コイツ。

俺を殴ってスッキリしたのか倒れている俺を放置して羅地助手を山派に取り込もうとしていた。

「羅地君はどっちがいい?もちろん山だよね?カブトムシとかクワガタとかいっぱい取れるよ」

 せこい。3人だから羅地助手を取り込み、強引に行き先を山に変えようとしてくるとは!

 稲海の思い通りにはさせるか!俺は海に行きたいんだ。

 俺は羅地助手に詰め寄った。

「羅地助手。海はいいぞ〜。我々人間は遡れば海から生まれたのだ。生物として母なる海に行きたくなるだろう」

 水着の女の子とか見れるし……

「誘い文句下手すぎでしょ!そんなので誰が行きたくなりますか。てか、総一郎さんのことだから、どうせいやらしい目的なんじゃないんですか?」

「は。そんな訳ないし。肌面積が広いと筋肉の動きがよく観察できるからいいトレーニングになるんだし!」

「私達遊びに行くんですよ!」

「僕は……みんなで行けるんだったらどこでもいい」

 稲海といがみ合っていると羅地助手はボソッと言った。

 やめてー。そんな純粋なこと言わないで、争ってた俺達が愚かに見えるから、恥ずかしいから。

 稲海も羅地助手を眩しそうに見ていた。

 依頼がひと段落した俺たちは、羅地助手も夏休みなのに頑張ってくれたので3人で旅行の計画を立てていた時だった。

 事務所内にインターホンの音が響いた。

 依頼人かな。

「どうも、先輩」

 扉を開けると、佐藤探偵社の一浩が立っていた。

 

 

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