第27話
「そ、それってどういうことですか先輩。じゃあ倉本よるは妹さんってことですか」
「いや、おそらく倉本大樹本人じゃないかな。性転換手術や整形手術をしたとき改名したんじゃないかと思う」
昔から倉本大樹は女の子になりたかったのだろう。大学生の時にお金をため手術をした。顎の骨とかは削ってあるだろうが流石に頭蓋骨は変えることしないだろう。コンプレックスは頭蓋骨です、なんて聞いたことはないしな。黒子の位置も骨格は千差万別。変わらないものは変わらないのだ。
「さて、あの女性が倉本大樹だったらどうなる?羅地助手」
「壷井靖友にとって倉本大樹は高校の時の同級生。靖友は倉本よるが倉本大樹と知っていて男友達と遊びに来ている感覚か、倉本なるが倉本大樹だとは知らずに好いているかの二択。でも二人の距離感は男同士のものだと思う」
「つまり不倫ではないと?」
「うん」
俺も同意見だな。靖友は倉本よるの胸をチラチラ見ていたが、元男とは言え女性の胸が視線を吸い付けるのは当然だしな。
「総一郎先輩。マジなんですかこの子むっちゃ凄いじゃないですか。小学生とは思えないんですけど……」
「当たり前だろ、ゆくゆくは名探偵になる逸材だ」
俺の方が先に名探偵になるけどね。
「そうですか。……羅地君だったかな?君、大きくなったら佐藤探偵社に来ないかい?高待遇を約束するよ」
一浩は羅地助手の前でしゃがみ目の高さを合わせた。
「おいおい勝手に勧誘するなよ、羅地助手の将来は羅地助手が決める」
「先輩だって探偵にしようとしてるじゃないですか」
「俺は良いんだよ」
俺と一浩が言い合っていると羅地助手が口を挟む。
「それで、どうするの総一郎」
「取り敢えず、明日までは尾行する。それで晴美さんに報告かな……」
「良いですね、調査が1週間で済んで……。俺達はもう3週目ですよ……」
一浩はため息をこぼした。
「結局、情報交換も先輩だけが得したみたいじゃないですか……。俺達の方はまだまだかかりそうですよ」
じとー、と俺を見てくる。
「じゃあなし、羅地助手何か疑問に思ったところを言ってやれ」
「え、僕?」
急に話を振られて一瞬驚いたものの、すぐに考え出した。一浩の縋るような視線も羅地助手にスライドした。
「……じゃあ一つだけ……。他の候補の人はいないの?」
「他の候補?」
いまいちピンときてない一浩を見て羅地助手は言い直した。
「彼女以外のスパイ候補の尾行依頼はされてないの?」
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