第26話

「俺達の依頼元はW社です。何でも倉本よる……あ、彼女のことなんですけど企業スパイかもしれないから探ってくれって依頼なんです」

 ずいぶん悩んでいたけど一浩は秘密にするという条件で教えてくれた。

「W社の誰か依頼に来たんだ?」

「次長の長谷川邦寿っておっさんで部長の命令できたとか言ってました」

「倉本よるの様子はどうなの?」

「それが至って普通です。他社に出入りしてる様子はないし、彼女の家を盗聴してるんですけどそれらしい会話もないんです。もしかしたら会社内で連絡とってるのかもしれません……」

「そうだったらすごい度胸だな。パソコンの中身は見たのか?」

「ええ、でもおかしな所はありませんでした。……ああ、もちろんステガノグラフィーとか気をつけてましたよ」

「ふ〜ん。そっかありがと」

「で、そういう先輩の方はどうなんですか」

「俺?俺の方は不倫調査だよ。男の方の奥さんからの依頼。なんか様子がおかしいから探ってくれだってさ」

「へ〜不倫調査ですか」

「お前のとこみたいに大きくないからチマチマやってんだよ」

「いや別にバカにしてる訳じゃないですよ。倉本とあの男性……壷井ですか?不倫してないと思いますけどね。二人が写ってる写真はありませんでしたよ」

「総一郎」

俺と一浩が情報交換していると、羅地助手が袖口を軽く引っ張った。

「総一郎先輩いつのまにか子供こさえてたんですか?」

「アホ、ちげーよこいつは俺の助手だ。っで何かに気づいたのか」

「子供を助手にしてるんですか?」

驚いている一浩を無視して俺は羅地助手に聞いた。

「うん。ちょっと稲海姉さんのとこ行ってきて靖友の連れの女の人見てきて気づいたんだけど四肢にある黒子の位置が一緒」

「本当か?」

「うん。それと頭蓋骨の形も一緒な気がする」

いや、まじすげーわ。しかも良い情報だ。

「ナイスだ。羅地助手」

「いやちょっと待ってくださいよ先輩。普通そんなこと分かりませんって」

一浩は羅地助手の言葉を信じてないようだ。まあ、普通こんな子供がって思うだろうな。だが

「アホか、俺が普通のやつを助手にするかよ」

 そう言うと携帯を取り出し壷井晴美さんに電話をかけた。確認したいことがあったのだ。

「もしもし探偵の丹波総一郎ですけど……はい、それで卒業アルバムのヒロキの写真を送ってもらったんですけど苗字も書いてあると思うんです。はい、それを教えてくださいませんか……はい、そうですか。ありがとございます」

 通話を切り携帯をしまった。

「何を確認したんですか、先輩」

「俺たちは今日、壷井靖友はヒロキって人と会うって聞いてたんだよ」

「バリバリ男名前ですね」

「そう。俺も男だと思ったから不倫相手じゃないと思ってさ、でも念のため写真を送ってもらって人相の確認してたんだけど、フルネームは確認してなかったんだよ。で今確認したんだけど、その今日遊ぶ約束をしたって言ったヒロキのフルネームは倉本大樹らしい」



 


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