第24話

 尾行している俺たち三人の中で初めに違和感に気づいたのはもちろん俺。

 俺より目がいい羅地助手はターゲットばかりに集中していて周囲の観察が疎かになっているようだ。尾行に際して最低限のことしか教えてない稲海は言わずもがな。

 こればっかりは経験の差がでたな。

 初心者はついついターゲットだけに視線が向いてしまうものだが、違和感なく環境に溶け込むために周囲にも気を配らなければいけない。

 ターゲット達は女性服専門店で物色している。靖友の密会相手が複数の服をもって試着室に入ったのを、斜向かいに構えている帽子屋から確認した。

「稲海。一人であの店行って試着の様子伺ってきて」

試着室や女子トイレなど異性を尾行する場合必ず視覚になる場所には注意が必要だ。

 今回は稲海がいるから問題はない。

「了解です」

 稲海はターゲット達がいる店に向かっていった。

 大型ショッピングモール内は休日に買い物を楽しみにきた客、炎天下の外にいたくないと、涼みに来た客や時間を潰しに来た客でごった返していた。

「羅地助手、周りを見て何か気づかないか?」

 帽子を試着しながら聞いた。

 うわ、この帽子全然似合ってねえ。

羅地助手も帽子を選ぶふりをしながら周囲を観察した。

 羅地助手は小学生だから背が低い。見たらそうだから、肩車をしてやった。

「……ターゲットがいる店にいる女性の二人組、試着室によく目をやってる。試着室空いてるのに入ろうとしないのはおかしい。その隣にあるメガネ屋さんの前でケータイをいじって待ちぼうけしている風の男の人も怪しい。それとこの店中にもずっと同じ帽子を見ている人がいるけど、多分棚越しに僕たちと同じ店を見てる」

やっぱり凄え良い目をしている。

 俺は羅地助手を肩車から下ろした。被ってた帽子をもってレジに行き会計をしてもらう。

「羅地助手が見つけた奴らな、交代しながらだけど、ずっと俺たちのターゲットの20メートル以内に一人はいたぞ」

「前、総一郎が言ってたチームでの尾行……」

「そうだ。おそらく同業者だろう。しかもこれだけの人員を動員できるところはこの辺だと佐藤探偵社ぐらいだろうな」

「もしかして同じ人を尾行してる?」

「いや、彼等は靖友と一緒にいる女性の方を尾行している感じだな」

なんだか面白くなってきたな。それぞれが尾行している人物が一緒にいるなんて、そうそうない珍事だ。

 ただの不倫じゃなさそうだな。

「どうするの?」

 羅地助手が俺を見上げながら聞いてきた。

依頼自体は二人の写真とって裏どりして終わりなんだが、俄然今回の全体像が見たくなってきた。

「ちょっと佐藤探偵社のやつから情報取ってくるわ」

 佐藤探偵社に知り合いもいるしな。

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