第22話
8月7日。尾行6日目。朝早くから尾行していた俺たち——俺、稲海、羅地助手は今ターゲット靖友が見える喫茶店でお茶をしていた。尾行中なのですぐ来ない注文はしない。同じ理由ですぐ食べれないものも注文しない。みんな飲みものだけだ。
今日の天気も憎たらしいほどの快晴。熱中症になりそうなほどだ。
夏の尾行は熱中症にも気をつけなければならない。休めるときはなるべく日陰で休むことも重要だ。
ただしカフェインは取らないように注意すること。カフェインには利尿効果かあるからトイレが近くなるからだ。そのため俺たちジュースを頼んでいる。
よくわからん形をしたモニュメントのもとで靖友はヒロキと待ち合わせをしているようだ。
炎天下の中もう10分はあそこに立っていた。
やはり靖友は真面目だ。水分の差し入れをしたくなるな。
「聞いた感じだと不倫しそうな感じの人じゃないですよね。一途顔してますし」
稲海は今日までの尾行の話を聞いてそう言った。
「なんだよ一途顔って」
「そのまんまですよ恋に勉強に一途だってことです」
「一途顔ってどんな特徴なの?」
「羅地助手、稲海が適当に言ってるだけだから気にするな」
ブーブー文句を言ってくる稲海を無視する。
「でも今日会うヒロキって人も男の人なんでしょ?」
「ああ、なんでも高校からの友人だそうだな」
俺はポケットから携帯を取り出た。依頼主の晴美さんに靖友さんの私物をあさってもらい高校の時の卒業アルバムのにのったヒロキという名前の人物の写真を撮って送ってもらっていた。その写真を画面に出した。稲海や羅地助手に渡して、顔や体格を確認するように促す。
「角ばった感じの顔の形……一重で鋭い感じの目つきに防水頭。特徴的で覚えやすいですね」
「細身な人だね。それに走り方が女子みたい」
「体育祭の時の写真な。でも髪の毛や体型は変わるからあてにするなよ。っと、きたぞ。」
目はターゲットに向けながら話していると
腕時計を見ていたターゲットが顔をあげさっきまでとは違い身体を一つの方向に向けた。
おそらくヒロキを遠目に見つけたのだろう。
「店出るぞ」
勢いよく残ってたジュースを飲み干し、二人に促し席を立つ。お会計は先に払ってあるからすぐ出るだけだ。
店を出るとちょうどターゲットと待ち人と出会ったようだった。
日傘をさした長い茶髪に白いワンピースを着た女性。
ターゲットはそんな女性と朗らかに話ているようだ。
想定外だ。さっき見ていたヒロキの写真と違う。胸もあるし。結構巨乳。
「えっ!女性!」
「……」
稲海も羅地助手も驚いているようだ。
俺はこっそりと携帯のカメラで写真を撮る。最新の携帯のカメラ画質がいいので大変助かる。
でも日傘のせいで女性の顔がわからない。
「ヒロキさんじゃないですか!奥さんに嘘ついて逢引きなんて最低ですね」
稲海が顔では笑う演技をしながら声だけで小さく怒る。
意外に器用だな。
「決めつけるのは早いだろ。二人で遊ぶのではなく、複数で遊ぶのかもしれないだろ。もうすぐヒロキが来る可能性がある」
「でも奥さんに嘘ついてたのは間違いないじゃないですか!」
「総一郎、稲海姉さん。二人とも動いたよ」
羅地助手に言われターゲットを見ると二人は並んで歩いて行った。
「二人を追うぞ。この炎天下道路の人通りは少ない。少し離れてつける。羅地助手頼むぞ」
「わかりました」
「わかった」
俺と稲海の間に羅地助手という並びでターゲットの後をつける。
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