第18話
8月1日。丹波探偵事務所に一人の依頼人が来ることになっていた。
稲海は大学がまだあるから居らず、俺と羅地助手で仕事をこなすことになる。
「新規の依頼人に対して、まず我々探偵がやらなければならいことがある。それは何でしょう」
俺は羅地助手に問うた。
「依頼人から信頼してもらうように接待する」
探偵業だって客商売。仕事をするためには依頼人が必要。依頼人に好印象を与えればリピーターになってもらえる可能性がある。
まぁ何回も来るほど困ったことが無い方がいいのだが……。
探偵が必要なくなる社会はきっと優しい社会なんだろ。
だが人は愚かだ。
自分のエゴを押し倒そうとする。
争いも犯罪もなくなりはしない。
現に探偵の需要はある。
あるから俺たち探偵はこの職で食っていける。
と考えると探偵とは微妙な職業だと思う。
「残念。ハズレです。一番にしなければいけないこと、それは……依頼人を信用できるか見極めること」
「依頼人が探偵を選ぶのではじゃなく、僕達が依頼人を選ぶの?」
「そうだ。例えばストーカー"A"がいると依頼してきた人"B"がいたとする。探偵は依頼通りにストーカー"A"の人物を調査して依頼人"B"に報告した。けれど、実はBがストーカーでAのことを知りたかっただけだとしたら?」
「……犯罪者を手伝ったことになる」
探偵は正義のヒーローじゃない。傷ついた人を守るわけじゃい。
探偵は人の心が負の面を持ってるからある需要だ。
探偵がいることは社会が、人がどうしようも無いことの証明だ。
故に、社会の負の面で生きている探偵は少しでも犯罪をする悪い奴を捕まえて社会を良くする義務がある。と俺は思っている。
「悪い奴はどこにでもいる。依頼だったから犯罪者を手伝いました。なんて言い訳通らないし、あっちゃいけない。だから俺たちはありとあらゆるものを疑い、見極める慧眼を備えてなければならい。探偵の鉄則、依頼人を盲信するな、だ。」
「わかった」
羅地助手は神妙に頷いた。
「まぁ羅地助手についてはそこまで心配はしない、なんたって俺より目がいいからな。ほら、もうすぐ依頼人が来るから準備しろ。紅茶とコーヒーの準備は大丈夫か?ミルクと砂糖もあるよな?」
「接待する気満々じゃないか!」
「接待しないとは言ってないからな」
俺と羅地助手は依頼人を迎える準備をした。
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