第15話
日が落ち、あたりが暗くなった午後8時。
俺はみんなと別れ茜さんのを家まで送っていた。
住宅街の明かりのせいで星は少ししか見えない。
羅地助手見習いには満点の星空に見えているのだろうか。
「あの、ここまでで大丈夫です」
いつのまにか彼女が一人暮らししているアパートの前についていた。
「おっと、いつのまにかついてたか。今日は大学を案内してくれて本当にありがとう」
「いえこちらこそ、ご飯奢ってもらってしまってありがとうございます」
「こっちが迷惑かけたからね。まぁ犯人もすぐ捕まえるから、安心して。それじゃ、すぐ会うことになるだろうけど、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
茜さんは頭を下げると家の中に入るのを確認した。
探偵事務所まではそこそこ距離があるが歩いて戻ることにした。
今日の夜は熱帯夜になるとニュースでやっていた。
蒸し暑い。早くクーラーの効いた部屋に入りたい。
外を歩いている人はほとんどいない。
いるのは俺と、後ろからついてくる一人だけだ。
一定の間隔でついてきている。足音から体重が軽いのがわかる。
ポケットの中にある携帯を操作してメールを送った。
ついてきているのを確認して左に曲がると左の家のブロック塀を登り、誰かもわからない家の敷地に入る。これで俺を尾行していた奴——おそらく犯人は俺を見失う。そして曲がる前までの道に面したブロック塀をまた登り曲がる前の道路に戻る。これで相手の後ろに回り込んだ。よく漫画とかにある「いつのまにか後ろに!」ができる。
普通に不法侵入だから真似しないように!
俺を見失ってキョロキョロしているやつの背後でブロック塀に寄りかかりながら声をかけた。
「俺を探しているようだけど、何かようかい」
ハッと振り返った奴と視線が交差する。
地味な顔立ちをした女性だった。
服装と雰囲気がどことなくチグハグな印象を受ける。
一瞬動揺していたようだが、すぐにキッと睨みつけてきた。気が強そうだ。
「あなた……、あなたは、茜さんのなんなんですか!」
おお、ヒステリック。
それに嬉しい誤算だ。どうやってボロを出させようと考えていたが簡単そうだ。
羅地助手見習いも考えていた犯人の捕まえ方。
一つはもちろん現行犯。盗むところを捕まえる。
二つ目は、逃げられない証拠の提示。茜さんから盗んだ物を取り返す。
三つ目は全く違う罪で捕まえる、だ。
さあさあ面白くなってきました。
「もう婚約するのは決まっている彼氏さ」
挑発するとしましょうか。
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