第4話
「……少年、一旦落ち着こう。……飴ちゃんいる?」
「怪しいおっさんから食べ物もらっちゃいけないって言われてる」
「そっ……そっかー。偉いぞー少年。でも俺はまだおじさんていう歳じゃないよ」
まだ28歳なんだけど、そんなにおっさんに見えるかな。
「まだ、太陽があるのに公園でビール飲む大人はおじさんでしょ」
「……………」
ぐ、ぐうの音も出ない。
どっからどう見てもおじさんだった……。
「とりあえず、その持ってるスマホをしまおうか。お兄さん何もしないから」
「…………」
少年はゆっくりとスマホをズボンのポケットに入れた。ポケットの中でスマホを握ったままで警戒は解いてないようだが、とりあえず通報はしないらしい。
よし、今のうちに俺が怪しいおじさんではなく、本当は働いていて頼りになる大人だとわかってもらおう。
「ところで少年。君は一人でどうしたんだ。悩み事があるなら相談に乗るよ」
「……別に悩み事なんてないよ」
そういうと少年は俺から目を離した。
「本当に?」
「本当にだって」
「ハッハ。君は嘘をつくのが下手だね」
「はっ、別についてないし……」
「いいや嘘だね。知っているか少年。男は嘘をついたら目を逸らす傾向があるんだ。他にも嘘付きの仕草といえば、鼻の頭をかく。瞬きが多くなる。ただ口元を隠すとか色々あるんだ。面白いのだと目の瞳孔って言ってわかる?黒目のことなんだが、そこが開くなんてものもある。ちなみに少年が今してるように足をピタリと閉じていると警戒とか緊張を感じてるサインだ」
少年はハッと自分の足を見た。悔しそうにしながら言った。
「——たったとえあったとしてもお前みたいな怪しいおっさんに誰がいうか!それに言ったとしてもわかってくれるわけないんだ‼︎」
「おいおい、俺の何処が怪しいというんだ。それに簡単に決めつけるのも——」
「殺人がどうのこうの言ってたじゃないか!」
どうやらばっちり聴こえてらっしゃったようで
「誤解だ少年。俺は探偵だ。怪しくなんてない」
そうだ全然怪しくなんてない。今日は万引き犯調査で女性の後ろをコッソリつけてただけだし、その前は人妻の浮気調査で1週間ほど尾行とか張り込みしてただけだし、その前は身元調査で調査対象の出したゴミをあさったり、身分を偽って相手から情報を聞き出したしただけだし。
……あれ?冷静に考えると怪しくね?俺怪しいことばっかしてね。探偵ってあやしくね。
「探偵なんてウソだ」
「探偵ってことは嘘じゃないって。ほら探偵業届出証明書だってちゃんと事務所に——
「いいや嘘だね、あんたが言ったんじゃないか!嘘をつくとき黒目のど、瞳孔が開くって。あんた今開いてたぞ!」
「いやいやいや、そんなのわかるわけが……。ああ、なるほど。そういことか」
たしかに他人にはわかりずらい悩みだ。
「何がなるほどなんだよ!」
「いや、なに。少年の悩み事が分かったんだよ」
「そんなの、そんなの嘘だ。わかるわけない!母さんだって父さんだって先生だって誰もわかってくれなかっ——
「自分は他の普通じゃないってことだろ。周りとの疎外感……場違い感とか感じてるんだろ」
「っっ!?」
少年は驚いた顔をしている。
俺は周りとは違う、特別なんだなんて一見中学2年生ぐらいの誰もがおもってそうだが、少年の場合は本当に只人じゃないらしい。
しかし、勿体無いな……。すごい才能でもあるんだけどな……。
どうにかしてあげたいと頭を悩ませていると妙案を思いついた。
俺は固まっている少年に近づきしゃがんで目を合わせた。
「少年、名前はなんて言う」
「……羅地修斗」
「そうか、じゃあ……羅地少年。もしその悩みを怪しいお兄さんに頼んでまで解決したいなら、その名刺に書かれた住所まで来なさい」
俺はポケットから名刺を取り出し、少年に渡した。
「……丹波探偵事務所」
「そ、俺の名前は丹波総一郎。……そこに俺はいるからいつでも来なさい。まってるから」
そう告げると、俺は残っていたビール飲み干し公園を出た。
言っておくが、小学生がいれば黒の組織とかなんかやばい事件に巻き込まれるかもしれないなんて考えてないから。
未来ある若人をどうにかしたい純粋な善意だから。
本当に本当だから!
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