【幕間XV】団欒
「母様ッ! 父様ッ! うわああああぁぁぁ」
魔王城の居殿『千星宮』の一室に、姉さんの
姉さんは母さんの腰に
母さんの頬にも、涙が伝っては落ちているが、姉さんの頭を何度も何度も撫でながら、その愛情を込めた微笑みに目を細めていた。
すぐ隣には、テーブルに置かれた父さんカエルが、その様子を見守るようにしてある。
─── 三百年ぶりとなる、家族の再会だ
記憶映像で見ていた姉さん、取り戻したアルファードの記憶にあった姉さんは、もう少し子供っぽい雰囲気があったように思っていた。
でも、こうして母さんに縋り付く姿を見たら、姉さんなりに張っていたのだと、そう思える。
今は年齢相応に見えるから不思議だ……。
ランバルドとテレーズの結婚、そしてこの魔王城の安全確保が整い、晴れてこの再会が叶った。
勇者はこの魔界の利用価値が無くなったと見て、七魔侯爵への凶行に出たのだろうから、戻ってくる可能性は低い事は想像できる。
だが、万が一彼が再びこの地に舞い戻ったとしても、この魔界を守れる算段はついた。
これからは、ここで父さんと母さんも暮らしていける。
「エイケンから聞いたよ……。大変だったんだねぇアルくん。本当によくぞここを取り戻してくれたよ……。
父さんはもう……はは、言葉にできない……なぁ」
そう言って、父さんの声が震える。
両親をここに連れて来た時のエイケンの、泣きっぷりと言ったらなかった。
今も一番泣いているのだが。
父さんもここに来てから、言葉が少ない。
それは泣けない体の奥で、積み重ねた想いが震えているからかも知れない。
「本当に今まで……苦労をかけたねエイケン。
私が情け無いばかりに、この三百年はさぞかし辛かっただろう……」
「何を仰られますか
エイケンの十八番ともなりつつある、語尾のように泣きを
「イロリナがもう少し落ち着いたら、色々話そうか。
─── ところでエイケン? なんで私の下に蓮の葉が敷いてあるのかな……」
「絵面でございます。そうせねばなるまいと、執事魂がそう訴えておりましたもので……うぐっ」
石の雨蛙人形と、蓮の葉。
父さんはなんていうか今、南国のお土産物みたいな状態になっている。
正直、この見た目のお陰で、俺も号泣せずに済んでいたりするから、ある意味助かった。
エイケンが全くそれを片付ける素振りがないので、父さんは「そ、そう……」と呟いて、しれっと話題を変えていた。
今、この部屋には両親と姉さん、エイケンと、そしてロジオンがいる。
ソフィア達とは、この再会が落ち着いたら、来てもらう事にした。
父さん達の気持ちも、きっと大きく揺らめいているだろうから。
ロジオンは両親とは、すでにケファンの森の方星宮で再会しているけど、やはりこの魔王城で再び顔を合わせるのは思う所があるのだろう。
さっきから言葉少なに、ただこの風景を見つめて…………んん?
「ロジオン……? どうかしたのか?」
そう声を掛けても、彼はやけに肩に力が入った状態で、気をつけの姿勢で瞳孔が開いてる。
俺の言葉にも反応が無く、姉さん達の方を見ているようで見ていない、どこかマッコイさんみたいな表情だ。
「おーい、ロジオン? ロジオ〜ン?」
「 ─── ぬばっはっ!
ななな、なんだどどどどうしたアルフォンス!」
「いや、こっちの台詞だよ。さっきから表情が硬いけど、どうかしたのか?」
そう聞けば、彼は顔を真っ赤にして
「ロジオンもご苦労様だったね。この奪還の裏で色々動いてくれていたんだろ?
……フォーネウス上王も、さぞかし誇らしく思っているだろうね。君はうちの大事な家族なんだから」
「か、かぞく……! あ、ああ。
い、いや、オレなんかは、大事な時に……魔界に居られなかった……から」
「それは言わない約束だよ? 君が人界で動いてくれたから、多くの魔界出身種族が、保護されて来たんだ。それは上王の願いでもある」
「そ、そそ……そう……だな……」
やっぱりロジオンの様子がおかしい。
ひとり汗だくの彼に、エイケンが水の入ったグラスを渡したが、震える手で何故か口では無く、おでこで飲もうとして顔がビタビタになってる。
と、ようやく姉さんも落ち着いたのか、母さんがこちらにやって来た。
「ロジオン……また少し大きくなったのね?」
「ふぁ……ふぁいっ!」
ペルモリアとの闘いの後、ロジオンは十歳くらいだった見た目から、十二〜三歳の姿を取り戻した。
母さんは「魔界の食べ物が合ってたのね」とか天然ぶりを発揮しているが、当のロジオンは未だにマッコイさんみたいな顔で、心ここにあらず〜だ。
「それにしても、フフフ。あのランバルドとテレーズさんが結婚とはね。
……もう少し早くにそうしてしまえばよかったのに……」
ランバルドとテレーズ、そして姉さんの身に起きている事は、ここに連れて来る前に、方星宮で話してある。
─── ランバルドとテレーズは、後数日でこの世から消えてしまう
その事実は両親もショックを隠せない様子だったが、ランバルドとテレーズ自身の、人生と向き合い終えた充足感に胸を撫で下ろしたようだ。
言わば彼らの振り返りとは、スタルジャの超えて来た『自分の受け入れ』みたいなもの。
そして、寿命の永い種族の多い魔界では、彼らのような境地に至る例は、少なからずあったらしい。
そう聞いて、俺自身もなんだか少し心持ちが軽くなった気がする。
「それはそうと、イロリナ。ロジオン。
…………あなた達はいつ、
─── びっくぅッ‼︎
ロジオンからそう聞こえるくらい、強烈な反応があった。
あ、彼の様子がおかしかったのは……もしかして。
「そそそそ、そんな、お、オレ達は……その!
ま、まままままだ早いって言うか、お、オレなんかにはもったいないと……言うか」
「…………うちの娘では、不満ですか?」
「ちちちちちチガッ! チバッシガ!」
ランバルドとテレーズの進展、そして姉さんとロジオンの再会。
こういう話になる事は、まあ予想はついていたのだけれど……。
ギルド本部での本部長然とした『見た目は子供、オーラは大人!』みたいな覇気は、微塵も見受けられない。
こちらの会話を聞いていた姉さんは、耳まで真っ赤にして、つま先で床にぐるぐるやってる。
「 ─── ハァ。あのランバルドが勇気を出したと言うのに……あなた達は……」
「…………そ、その前に……お、オレは……。
ひ、姫さんの事について、謝らなきゃ……ならない事がある」
「もう、手をつけたのですか!?」
ロジオンと姉さんの口から「ブッフォォォッ」て、大型魔獣の鼻息みたいな声が出てた。
「そそそそ、そうじゃないッ! まだ何も……イヤ、まだとかじゃなくて、な、何も……」
唇を噛んで笑いを堪えていたら、隣でエイケンが腕で口元を隠して、ンンンッて声を出してるのを見て俺は噴いた。
「……分かっておりますよ。
この子の魂は、そう長い時を待たずに、あなたの魂と同居するのでしょう?」
「…………知って……たのか……」
ロジオンがチラリと俺を見る。
未だ笑いを止めるのに必死な俺は、ただ深く頷くしか出来なかった。
「 ─── 何故、それを謝る必要があると言うのです」
母さんの言葉に、ロジオンはハッとその目を見つめる。
「大切な……娘さんが、肉体を失う。
それはオレとの呪いを共有してしまったからだ」
「…………でも、それが無ければ、上王がお隠れになられた時、アルファードよりも魔力の大きかったイロリナが『クヌルギアの鍵』を継承。そうであれば、即座にハンネスに殺されていたはずです。
あなたとイロリナとで魂を分け合っていたからこそ、鍵がふたつに別れるという現象が起きたのではありませんか」
「………………」
そう。
以前ロジオンは
しかし、彼にとっては、姉さんの寿命と魔力、そして彼に科せられた呪いを【共命法】で姉さんと分かち合った事実は、やはり心苦しいようだ。
まあ、その気持ちも分かる。
特にその両親の前で、気楽にそれを口には出来ないだろうしな。
しかも、彼はこの一家に大きな恩さえ感じているようだから尚更か。
「誤解が無いように、この際ですから言っておきますよロジオン。
私はイロリナがあなたに【共命法】を使った事に関して、私は誇らしくすら思っています」
「…………!」
「あの子が命を分け与えてでも、誰かを支えたいと思った。そして、迷う事なくその選択を取った。
─── 紛れもなく、魔界の民。紛れもなく、クヌルギアスの心です」
「母……さま」
魔界では魔力を分け与え合っている。
大本は魔王が分配しているが、そこから先は少なからず、皆が持っている分配の力で補い合っている。
ただ生きているだけで、誰かを支えている。
それは魔力だけに留まらず、この魔界の穏やかで人の良い国民性にも、大きな影響を与えている精神だろう。
利他的である事の恩恵は、これだけ人種が溢れている魔界で大きなイザコザもなく、人界よりも文明が進んでいる事が証明している。
姉さんが使った【共命法】は、その精神の究極とも言える選択だ。
「……うん。エルヴィラの言う通りだよ。
私も我が娘を誇りに思っているし、ロジオン、それは君が一方的に与えられたということでは無い。
イロリナはそれで生きながらえたし、それだけの決意を向けられる君との出逢いは、その人生をどれだけ華やかにしたものだろうね」
「オリアル…………」
最初は拾った玩具だった『ケロリン王子』が、弟になり、大事な家族になり、別れを恐れる大事な存在となった。
姉さんにすれば、それは大きな存在で、選択に迷いは無かっただろう。
それだけの想いが持てる相手がいるというのは、確かに充足した人生だと言えるんじゃないだろうか。
「…………私は、この子が【共命法】を使った時、すでに私の娘は
「「 ─── !」」
「フフフ、そんなに緊張しなくても、今すぐ式を挙げろだとか言うつもりではありませんよ。
もう、イロリナはあなたと共にある。その自覚をあなた方が持つのは、大切な事ではありませんか?
……ランバルドとテレーズが幸せを形にしようとしているように」
母さんの言葉に、ロジオンは再び俯いた。
ただ、その表情はそれまでの緊張や不安ではなく、自分の内にある様々な想いの中から、意思を掴み取ろうとしているようにも見えた。
※ ※ ※
テレーズさんとランバルドさんの結婚式が終わった。
前にも何度か人の結婚式に呼ばれた事はあったけど、こんな
一応王家だし、私も王女だったもんね。
そりゃあ、呼ばれる式がおカタい感じにはなるのは、当然だけど……。
─── 友人の晴れの日
言い方は変かもしれないけど……今となっては長かったようで、あっと言う間の三百年間だったし、心だけでふたりと繋がっていた時間は苦しくは無かった。
ずっと一緒だったお友達が結ばれる結婚式なんだから、より身近で、嬉しい気分に溢れていた。
テレーズさんは父様や母様への憂いも無くなって、それに守護神だというフォンワールさんにも御礼が言えたって幸せそうだった。
ランバルドさんは最初はカクカクしてたけど、この後にエルフの里でお祝いのお酒があると聞いてから、いつも通りに戻ったみたい。
里に移動しようとした時、他のエルフの一族が来て、アルに挨拶をしたいからと、皆んなは少し先の集落に招かれて行った。
私はこの精霊の祀られている岩がどうしても見たくて、そっとここに戻って来た。
─── ここが
魔界よりマナは少ないし、森の力も弱いけど、時折吹く風は清々しくて晴れやか。
人界では少ないエルフの集落だと聞いたし、人間がほとんどいない場所だけど、ここが人界である事には変わりはない。
冒険に胸をときめかせていたあの頃、何度となく来てみたいと憧れた、この世界に来ることがやっと叶った。
思えば冒険に憧れていたのだって、ロジオンの人界での冒険者生活を聞いていたからだし……。
勇者……ハンネス達の話に夢中になったのも、ロジオンの暮らしがどんなものか、知りたかったから。
ふふふ、母様にはよく『お姫様らしくしなさい』って言われちゃってたけど、私はどこか最初からそうはならないって分かってたみたい。
─── クヌルギアス家の持つ『魔王の意志』
魔王として歩むために、相応しい答えが閃く能力。
アルにはそれがすごく強く受け継がれてるみたいだけど、私はほんの少しだけ受け継いだ。
でも、幼い頃から感じていた『お姫様にはならない』ってカンは、誰にも言えるものじゃないとも分かっていた。
その気持ちを唯一聞いてもらっていたのが、道端で拾ったカエルのお人形さん。
だからそのお人形さんが男の子になった時は、嬉しい反面、秘密をバラされたらどうしようって不安があった。
─── でも、彼はそれを一切口にはしなかった
変わらずに遊んでくれて、見た目は子供なのにすごく大人で……。
呪いを解くために旅に出ると聞いた時は、目の前が真っ暗になるほど、寂しくて辛くて。
だから彼が戻って来た時は、どうしようもなく嬉しいのに、また居なくなるのかも知れないと、胸が締め付けられた。
─── その時かなぁ、もうとっくに彼を、好きになっていたって気が付いたのは
【共命法】に迷いがなかったのは本当。
あの時、お爺様を助けたくて苦しんでいる彼を見たら、その背中を押してあげたいと思った。
それからあの悲劇が起きて、彼とは三百年も会えなかった……。
でも、封印されていた時の中で、何度となく彼の気配を魂に感じていたし、彼の呪いが時折ほんの少しだけ私の中で渦巻くのが嬉しくすらあった。
母様の『クヌルギアスの心』と言うには、私のは余りにも【共命法】に対して、彼との繋がりを求めていただけのようにも思える。
─── 『あなた達はいつ、身を固めるのかしら』
母様の直球には、本当に驚いたなぁ。
彼もガチガチになってたし、最後まで……
「はぁ〜、結婚するとは言ってくれなかったなぁ……」
結婚式の間も、ロジオンは硬い表情で物静かにしていた。
困らせちゃったのかなぁ。
私の独言は、森を抜ける風が何処かへと運んで行ってしまった。
でも、それでいい。
私は彼に吸収される。
それだけで……いい。
例え彼がそれを不快に思ったとしても。
それが上手くいかずに私がひとり果てるのだとしても。
魔王にもお姫様にもなれない私に、彼がくれた時間は、キラキラした気持ちで満たしてくれているのだから ─── 。
そろそろみんなの所に戻らなきゃ。
そう思って岩から離れた時、誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
その姿を見て、私の胸はドキンと強く打った。
「あ、あれ? ど、どうしたの……ロジオン」
「ひめ……イロリナ」
また昔の呼び名を言いかけて、彼は言い直してくれた。
でも、その後は下を向いて、唇を噛みしめるような仕草をしている。
─── あ、これフラれる
そう思った瞬間、私は頭に血が上って、口が勝手に動き出していた。
「あはっ、ごめ、ごめんねロジオン! 私が急にみんなから離れたから迷子になっちゃったと思ったんだよね! いつまで経っても私こどもだよね〜!
ろ、ロジオンとは大違いだよね~ごめんねごめんね〜‼︎」
自分で何を言っているのか分からない。
でも、すぐその場を離れたくて、私の足はみんなの方へと駆け出そうとしていた。
「話が……ある」
「あっ! 私、喉渇いちゃったみたい!
先に帰ってるね! ごめんねごめんね〜‼︎」
いや!
悲しい言葉は聞きたくないッ!
ハッキリと拒絶されなくたって、このままならいい思い出で終わるのに……。
後いくらも残されていない時間で、こんなツライ想いは嫌だよぅ……!
─── ガシッ
立ち去ろうとした私の手を、彼の手が掴んだ。
その温かさに胸がときめいたけど、唇は不安と恐怖で、ヒヤリと血の気が引いていた。
「…………逃げないで……くれ。
オレは……話さなきゃならない。言わなきゃいけないんだイロリナに」
「…………」
真面目だもんね。
そりゃ、ハッキリさせないといけないって思うんだろうな彼なら。
「イロリナは……その内、オレの魂に同居する。
その……オレを一時は家族だと言ってくれたが、魂は……
「……そう……だね……」
胸が苦しい。
目の周りがボヤボヤして、世界が歪む。
『他人』やっぱり、嫌だよね。
それが魂に同居するなんて ─── !
「他人……それが魂に同居するとあれば、オレの考えや想いも筒抜けになる」
「…………イヤ……だよ……ね」
彼は帽子を脱いで、キッと私の目を見る。
「ああ。そうだな」
「 ─── ッ!」
ああ、やっぱりダメだぁ。
聞くんじゃ無かった……。
逃げちゃえば良かった!
もう膝には力が入りそうもない。
このまま消えちゃいたい ───
「イロリナはオレにとってただの他人じゃない。
─── オレの特別な
「……………………へっ?」
彼は私の手を取り、グッと顔を近づける。
混乱し切った私は『今手汗すごいんだけどな』とよく分からない後ろめたさで、脳内がぐわんぐわんしていた。
「オレも男だ。ずっと秘めて来たオレの気持ちが、そんな事で伝わるのは、本望じゃない」
「…………えっ、えっ? へっ? あの……へっ?」
彼は片手を私の手に添えたまま片膝をついて、帽子を胸に抱える。
「 ─── イロリナッ! オレはずっと、ずっと……お前の事が好きだった‼︎」
あれ……?
なんだろう、何も聞こえない。
目の前がぐるぐるなって、耳の奥が変になって……私どうなっちゃって……
「あああああああああぁぁぁッ‼︎」
それが自分の泣き声だって、ようやく気がついた。
私は片膝をついた彼の首に縋りついて、全身を震わせて泣いていた。
だって……絶望から、こんな……。
幼い頃からの夢が、叶っちゃったんだもん。
─── 彼のお姫様になりたいという夢
その後どうしていたのか分からない。
ただ散々泣いた後に、私は彼にお姫様抱っこされた状態で、恨言をこぼしていた。
「うう……ロジオンが『他人』とか……言うから。私……てっきりフラれるのかと……ひっく」
「す、すすす、すまん! こ、告白するとか……は、初めてで ─── 」
その言葉がまた私を有頂天にさせていた。
散々泣いて、それから本音でやっと色々話せて、ふつふつと幸せが込み上げる。
「泣いて抱きついて、やっと気持ちを喋りだすって、あの時みたいだな。オレが旅から戻った時の中庭」
「あはっ☆ 憶えててくれたんだぁ。懐かしいねぇ〜」
「当たり前だ。あの時、大人っぽくなったイロリナを見て、その……ドキドキしてたんだぞ?」
それも同じだったのかぁ。
旅から帰って来た彼の姿は、自信に溢れてて素敵だったもの。
それからも色々話していたら『そろそろみんな動くみたいだな』と、彼が耳をピクリとさせた。
てっきり戻るのかと思ったら、彼は私を精霊の岩の前に連れて行って、手をとって見つめて来る。
「オレも精霊神の前で誓う。
─── イロリナ、オレと共に生きてくれ」
「…………はい」
こうして私は、初恋を叶えた。
─── 『初恋は実らない方がいい』
言い伝えではそう言う。
確かに私たちの運命は、すごく苦難に巻き込まれたわけだけど……。
でも、私はその先に幸せがあるのだから、それでもいいと思えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます