第89話 シュワシュワ電池は甘酸っぱい
女性は白銀家の本家、もしくは分家へと派遣され、男性は
その中でも特に優秀な人材が、当主や子息の専属メイドに任命される。
しかし、
何しろ生まれたのは双子だ。面倒を見る役が通常の倍以上必要になるが、あまり大人が周りにウロウロしては子供にとってもストレスになりかねない。
そうは言っても、両親共にやるべきことがある。ずっと目を離さないということは、不可能と言っていいだろう。
そこで麗子の母親が考えたのが、歳の離れない姉に付き添ってもらうというもの。
当時、十歳にも満たない年齢ではあったが、メイド教育を受けた
何かあれば大人を呼ぶくらい出来るし、優しい彼女なら二人と打ち解けるのにそう時間も要さない。
そんな母親の考えは見事的中していて、二人とも数時間で
あまりにも懐いて離れようとしないせいで、両親がちょっと嫉妬したほどらしい。
そうやって幼い頃から側にいた事で、仕事としてだけではなく、心から麗子のことを理解する事ができるようになった。
それはただお世話をする時のみに限らず、危険から身を守る時にも役立つようで、知るということは思ったよりも大切なことなのだと。
「お嬢様が私をねぇねと呼んで下さっていた時期もありましたね」
「恥ずかしいからやめてください……」
「つまり、二人は家族みたいなものなんだ?」
「そうですね。
一族と一族。その大きな関わりが始点となる関係らしいが、結果的には二人が信頼し合える仲になったようで良かったと思う。
ちなみに、
一族の苗字が全員同じであり、名前も時々被ることがあるので、分かりやすく住んでいる部屋番号で呼ぶことが昔から決まっているんだとか。
つまり、
フリガナについては、番号よりも可愛らしく聞こえるようにという配慮で、麗子のお母さんが考えたと聞いた。
他にも317号室のミーニャさん、428号室のヨツバさん、301号室のミレイさんなんてのもいるらしい。みんな可愛らしい名前だ。
そうなると、
ちなみに、101号室に限ってはメイド長が使うことが決まっているらしい。
そんな話を聞いている内に、それなりの時間が経過したようで、気が付けば全員のお皿が空っぽになっていた。
「ふぅ。おなかいっぱいだよ」
「満足いただけたようで、シェフの
「その設定は続けるんですね」
「シェフなので」
真面目な顔で言われると、本気なのか冗談なのかが見えないが、とりあえずややこしい事にならないように話を合わせておく。
そんな
ロボットは四人分のお皿を回収すると、キッチンの方へと運ぶべく走っていく。
料理だけでなく後片付けまで自主的にやってくれるとは、何と人をダメにするロボだろうか。
「コックロボ……じゃなくて、アシスタントロボって発売されたりしないの?」
「残念ながら、まだその段階ではないんです。開発担当者がAIの設定を間違えてしまって」
「僕にはかなり優秀に見えたけど」
「今のAIを販売用機体に搭載してしまうと、
「随分と自由なAIなんだね」
「元々、メイドの負担を軽減することが目的で開発が始まったものですから」
「白銀家はすごいんだね」
「そう言えば、電池をプレゼントすると言うことを聞きやすくなるという報告がありましたね」
「好感度イベントか何かかな」
聞くところによると、あのロボットは単三電池とボタン電池が好みらしい。
今は持っていないが、見つけたらプレゼントしてみよう。ロボと言えど、好かれるのは悪い気がしないだろうし。
心の中でそんなことを呟く瑛斗は知らない。隣でじっと見つめてくる
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