第75話 火薬の匂いと夏蝉
ついに訪れたゲーム大会の日。
「
「
「二人のことは紅葉さんから聞いてるよ。例の爆破予告の件で助っ人に来てくれたんだね」
「はい。何ができるのかは分かりませんが、頼もしい助っ人も連れて来ました」
瑛斗がそう言うと、どこからともなく姿を現したメイド服姿の女性が麗子の横で膝を着いて頭を下げた。
「
「メイドさん、ですか。さすがは白銀家、優秀な人材を持っているんですね」
「お褒めに預かり光栄です」
「
「はっ」
麗子の言葉にもう一礼した彼女は、音もなく姿を消した。きっとどこかでこちらの様子を見守ってくれているのだろう。
あの人間離れした動きなら、本当に爆弾だって解除してくれるかもしれない。
瑛斗は心の中でそう呟きつつ、会場に響き渡るアナウンスの声に耳を傾けた。
『間もなく開会式を行います。参加チームの方はステージ前にお集まり下さい』
どうやらもうすぐ始まるらしい。ここからはゲーム部と紅葉とは別行動になる。
彼女たちに頑張ってと伝えると、陽斗と麗子は早速怪しいところを探しに行くことにした。
「
「分かった。麗子はすごく仕事ができるね」
「ふふ、そうでもありませんよ。優秀なのはメイドたちですから」
「彼女たちを上手く操れる麗子も、十分優秀だと思うけどね」
部下の能力はどんな上司が着くかによって変わったりするとよく聞く。悪い上司では力を発揮させられないからだ。
その点、麗子はメイドさんから信頼を獲得しているように見えるし、何より彼女は無駄な仕事を頼んだりしない。自分で出来ることは自分でやるから。
そんな主人だからこそ、メイドさんたちも失敗を恐れずに本来の力を出せるのだろう。
無論、そんなことは本人たちも麗子も無意識にやっているとは思うけれど。
「瑛斗さんなら、爆弾を仕掛けるならどこに仕掛けますか?」
「僕が仕掛けるなら? そうだね、前提としては人が集まる場所かな」
「なるほど」
「だけど、目的があれば別かも。例えば、狙いたい対象がいればその人の近くに仕掛けるよね」
「その線も考えられます。むしろ、わざわざ小さな会場を狙うということは、多くを狙った犯行では無い可能性が高いですから」
もし犯人に特定のターゲットがいるとすれば、それが観客であることは考えづらい。
この大会は小規模で人もあまりおらず、観客は誰でも入ることができるからだ。
ターゲットの位置が決まっているわけでも、来るかどうかも分からない状況で狙うはずは無いし、予告文を出すほどだからもっと確実性が高い誰かだろう。
つまり、ここに来ることが約束されていて、おまけに立ち位置が決まっている人となる。
この条件で絞れば、爆弾犯が狙っている人物が自ずと絞られてくるはずだ。
「……参加者か主催側かな」
「おそらくはそうですね」
大会の参加者は必ずステージに上がる。そのタイミングならその人物のみを狙った最小限の爆弾で足りるため、会場に持ち込むことも難しくない。
主催側を狙っているなら、ステージ裏に爆弾を仕掛ければいい。どちらも場所が特定されている点でその線が濃いと思われる。
「ステージ周りを探しに行こう」
「わかりました、瑛斗さんはステージ下をお願いします。私はステージ裏を探しますので」
「見つけたらデバイスで連絡する」
二人はお互いに頷き、それぞれの仕事をこなすべく動き出した。
爆破までの時間も分からない今、急ぐに越したことはないと気を急かして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます