第73話 モテる女は水着も持ってる
あの後、何冊かジェクシーを貸してもらった
無意識の内にモテテクのひとつを実践してしまっていたことには思うところがあるが、知らなかったことを知れるのは嬉しい。
これらをマスターすれば、自分も晴れてモテ女の仲間入りだ。まあ、なったところでなにか嬉しいことがあるかと聞かれればよく分からないが。
「夏のモテテクその1、水着は自分の外見に合わせたものを選ぶべし。水着ね、そう言えばお姉ちゃんに借りようと思ってたんだったわ」
紅葉はこれまでプライベートでプールや海に行くことがなかったため、持っている水着は名前が大きく書かれた学校用しかない。
あれでも外見に合っていると言えば合っているが、モテテクで言われているのはそういうことでは無いのだろう。
「お姉ちゃん、水着貸してくれない?」
「あら、急にどうしたの?」
「今度海に行くことになったのよ」
「あのくーちゃんが?!」
「何よ、その反応」
「だってお姉ちゃん……嬉しくて……」
「な、泣くことは無いでしょ」
妹の成長ぶりに目を潤ませる姉に戸惑いつつ、「いいのを貸してあげるからね!」と意気込む彼女の後ろを着いていく紅葉。
クローゼットの中を漁って引っ張り出したのは、いかにも大人っぽい落ち着いたデザインの水着だ。
「好きな人に見せるなら、やっぱり素材を活かさないと。くーちゃんは元々可愛いから、大人ビューティーにしちゃえば怖いもの無し!」
「そんな簡単に行くかしら」
「お姉ちゃんに任せんしゃいっ!」
やけにやる気満々な姉に急かされ、早速渡された水着を試着してみる。が、服を脱いで体に合わせようとした時点で紅葉は気付いてしまった。
……サイズが合わない、と。
「お、お姉ちゃんって何カップだっけ……」
「最近測ってないけど、高校生の時はFだったよ? それから少し大きくなったからGとかかな?」
「…………」
「くーちゃん、どうしたの?」
「私、Aなのよ」
「……」
「……」
「だ、大丈夫! すぐに大きくなるわ!」
「海までもう少ししかないのよ?! それまでに大きくなるわけないじゃない!」
「パッドを少し入れたら……」
「胸の質量よりパッドの方が多くなるわよ。どっちが本体か分かんなくなるから」
「なるとかなるっ!」
「なんともならない!」
楽観主義な姉に水着を投げ付け、逃げるように自分の部屋へと戻る紅葉。
そもそも、姉に借りようと思ったことが間違いなのだ。自分とは違い過ぎるのだから。
「くーちゃん、お姉ちゃん気が利かなくてごめんね? 嫌いにならないで」
「別に怒ってないわ。お姉ちゃんは選んでくれただけだし、悪いのは全部自惚れた私よ」
「そんな事言わないで。くーちゃんは可愛いんだから、もっと自信を持っていいの」
「そんなこと言われても……」
「良かったら、一緒に水着買いに行く?」
「……行く」
「ふふ、じゃあ明日行こっか」
姉に抱きしめられ、胸の中で堪えていた気持ちを吐き出す紅葉。
大きな胸は持たざる自分が惨めになるから好きでは無いけれど、姉の胸の中は昔から落ち着くから好きかもしれない。
そんなことを心の中で呟きつつ、彼女は気持ちが落ち着くまでしばらく甘えるのであった。
一方その頃、宿題をほとんど終わらせた
「……水着、学校のでもいいかな」
紅葉と同じく外行き用の水着を持っていない彼は、スーツケースの前で腕を組みながら財布の中身と睨めっこするのであった。
「さすがに買わないと、だよね。紅葉と
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