第47話 円満解決(?)
「どうしてもあなたに生きて欲しくて、未承認だったあの機械の実験に参加したの」
我が子の命が失われようとしているのに、仕方がないで済ませられる親は多くない。
必死に頼れる場所を探して、何とか延命し続けて、数日後にこっそりと医者から教えてもらったのが例の機械を作っていた研究機関。
倫理的な問題で実験出来ずにいた彼らにとって、言い方は悪いかもしれないがイヴは絶好のチャンスだった。
両親にとってもその研究は唯一の救いで、何が起こるかわからないと言われても引き下がるつもりはなかった。
そのおかげでイヴは母体の中で成長を続けるのと同じように大きくなり、ノエルの出産と同じ日にカプセルから出た。
けれど、全てが上手くいったわけじゃない。一度未成熟で生まれた影響は彼女の体に刻まれてしまっている。
「イヴ、あなたの脳には障がいが残ってしまったの。特に感情を司る部分にね」
イヴは滅多に笑うことが出来ない。幼い彼女はよく笑うノエルを見て真似をしようとしていたが、上手く出来ないことに酷く落ち込んでいた。
そんな姿を見た両親は、幼い内だけの嘘とクローンの話を持ち出したのだ。
契約によって部外者に機械の話が広がることを避けなければならなかった二人は、本当のことをまだ幼い二人に伝えることは出来なかったから。
そうすることで自分を責めてしまわないように。悪いのは親である自分たちだと考えるように仕向けた。
事実、その通り両親を恨むようになったわけだ。まさか今でも信じているとは思っていなかったようだが。
「――――――というわけで、誤解が解けて両親とは仲直りしました〜♪」
「……」ドンドンパフパフ
パチパチと拍手をしながら喜ぶノエルと、デバイスで効果音を鳴らすイヴ。
そんな機能があったことは初めて知ったが、何だかんだ二人が仲のいい普通の双子になってくれて良かったと思う。
心做しか、笑わないはずのイヴも微笑んでいるように見える。助けられて本当に良かった。
「そうだ。今回、イヴちゃんと私の件でかなりポイント使っちゃったでしょ」
「……気にしてなかった」
「だろうと思った。お礼も兼ねて返したいんだけど、どれくらいなら足りるかな?」
「今回は僕が好きで助けたことだし、そこまでしてくれなくてもいいのに」
「それはこっちのセリフ。他人なのに色々してくれたのは瑛斗くんじゃん?」
「そう言われると言い返せないね」
S級に近付くという目的があったにせよ、自分自身でも深入りしすぎたなとは思う。
作戦のためとは言えテレビに顔が出てしまったし、目立てばそれだけ『敵』に勘づかれやすなるから要注意だ。
今後はもう少し慎重に行動した方がいいだろう。……とは思っても、助けを求められれば断れないのだけれど。
「あ、ポイントよりも身体で払って欲しい?」
「……うんって言ったらどうするつもり」
「その時はちゃんと払うよ。ノエルちゃんは嘘をつかないアイドルだから!」
「僕にそんな度胸が無いこと、分かってて言ってるよね」
「な、なんの事やら……」
「嘘をつかないアイドルじゃなかった?」
瑛斗も男だ、売れっ子アイドルにこんなことを言われて何も感じない訳では無い。
しかし、助けたお礼に……なんてあくどいことは言いたくないし、何よりノエルは奪わせないとばかりに見つめてくるイヴが怖かった。
下手に手を出せば噛みつかれるかもしれない。ある程度は信頼してくれているとは思うが、やはり彼女にとって姉は何よりも守るべき存在だから。
「せっかくだし、お返しはポイントで貰うよ。二人とは今後も仲良くしたいし」
「りょーかい♪」
「……」コク
ノエルとイヴ、二人から伝えた額の半額ずつを送金申請され、有難く受け取っておく。
その際に続けて送られてきたもうひとつの通知を見て、瑛斗は二人の顔を順に見た。
『
『黄冬樹イヴが友達申請をしました』
お互いがお互いにバレないように、こっそりと人差し指を口元に添えて見つめてくる。
もちろんこちらからも申請を送るつもりだが、どうして秘密にしたがるのだろう。
そんな疑問が後々『仲のいい双子』による面倒なことに繋がるだなんて、想像出来るはずもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます