第31話 真相が離れることは無い、追求者が迷っているのだ
「彼女……
ただの放送なら何とでも言いようはあるが、生放送となればアリバイは確かだろう。
つまり、黄冬樹 ノエルと顔がそっくりな人間が犯行に及んでいるということだ。
だが、そんな人間が本当に居るのだろうか。
「ところで、黄冬樹さんは何者なんですか? 生放送に出るなんて」
「彼女は今人気上昇中のアイドル、
「この学校にアイドルなんていたんだ」
「ここはそれなりに融通の利く学校ですので。ノエル様以外にも、モデルや元子役の方もいらっしゃるようです」
「どこで調べたんですか、そんなこと」
「お嬢様は幅広い交友関係を持っておられましたので、デバイスを拝見させていただきました」
「法ギリギリですよ」
個人情報保護法も涙目だ。やはり、こんなシステムはおかしい。未だに悪用されていないのが不思議なほどに。
「ちなみに、ノエル様には双子の妹が居るそうです。何故か写真が掲載されていませんでしたが」
「……双子の妹、ですか」
双子ということは、見た目がそっくりの可能性が高い。同性なら尚更だ。
つまり、黄冬樹ノエルには犯行が不可能でも、妹なら可能であるかもしれないということ。
ドッペルゲンガーや生霊でもない限り、同じ顔の人間が同時刻に別々の場所で発見されることが出来るにはこの方法しかないだろう。
ただ、そうなった時に新たな疑問となるのは、ノエルが妹のしていることを知っているのかどうかだ。
彼女が何も知らなかった場合、助けを求めて妹を止めてもらうことも可能かもしれない。が、繋がっていた場合は死期が早まるだけ。
第三者としてならまだしも、自分の命を懸けたトロッコ問題に挑戦する勇気はない。
「もう少し調べてみるかな」
「それがいいと思います」
「ところで、どこまで着いてくるんです?」
「見守れという命令ですのでどこまでも」
「……ここ、男子トイレですけど」
「御手洗で襲われたのですよね」
「それはそうですけど、プライバシーについても考えてください」
「いいですから、さっさと済ませて下さい。連れ込まれたって叫びますよ」
「こっちこそ、
「……」
「……」
しばらく睨み合った結果、
さすがに入口を見張っていれば、怪しい人物が来ることもないだろうという考えだ。
その考えは的中していたようで、誰にも邪魔されることなく用を足せたのだけれど、彼女と合流したところで「チッ」という音が聞こえてくる。
「今、舌打ちしました?」
「そんなはしたないこと、
「ですよね。じゃあ、誰が……」
まさかと思って見回してみるが、周囲に女子生徒はいない。強いて言うなら、銀髪の男子生徒が居たくらいだ。
きっと聞き間違いだったのだろう。そう自分を納得させ、教室の方へと足を向ける。
「ところで、僕ばっかり見てますけど、麗子の方は大丈夫なんですか?」
「お嬢様には屋敷内でもトップレベルの戦闘能力を誇るメイドを三人付けていますから。全員足せば、私一人分くらいにはなるでしょう」
「……
「お嬢様の専属メイドですから、それなりには」
彼女はそう言い終わるが早いか、突然瑛斗の肩を掴んで近くの壁に押し付ける。
一体何をしているのかと驚いていると、
驚いて瞑った目を開けてみると、床に散らばったガラス片の中に、硬式の野球ボールが一つ転がっている。
恐らくこれがガラスを割ったのだろう。しかし、一体誰がこんなことを――――――。
「教室へ戻りましょう、
そう言って庇うようにしながら歩き出す
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