第591話
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素直になれないものの、隠すことが得意ではないが故に相手に気持ちが漏れてしまう。世間では彼女のようなタイプを『ツンデレ』と呼ぶらしい。
幼い見た目に反して我が強いが、信念を持った性格であることを考慮すればS級判定も妥当。
しかし、その性格故に他者を受け付けず、孤立してしまっている点については早急な対処が必要だろう。
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本名
彼女も上記の生徒とは別の意味で素直になることが出来ていない。しかし、家柄による上流階級レベルの教育と作法の心得なども考慮して、S級判定は妥当。
ただ、我が研究によって双子の姉に成り代わっていること、それにより本人がストレスを溜め込んでいることなどについては迅速な対応を検討している。
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彼女はA級ではあるが、来年度はS級に昇格する予定のため、このリストに加えておく。
彼女は容姿や学力、スポーツの面においても優秀で真面目な生徒だ。故にA級判定も妥当であると言えるが、恋愛対象が兄であるという点においては経過観察が必要だろう。
僕が読み終えた資料から顔を上げると、叔父さんは奈々の方へと視線を向けてゆっくりと頷いた。
「奈々君がここに来たということは、彼女の問題は解決されたということだろうね」
「はい」
「ということは、今渡したリストの生徒たちの問題は、
「解決なんて、そんな大層なものじゃありません」
「謙遜しなくていい。
「……そうだとしたら、嬉しいですね」
「ああ、誇っていいことだ。君は君の中にある懺悔力に従って、彼女たちを救ったのだから」
「救った?」
「そうだよ。恋愛に向いていながら恋愛をしようとしない彼女達を、君がこの学校に見合った生徒に変えてくれたんだ」
確かに僕にだってみんなが変わったという自覚はあった。出会った頃よりもずっと、今の方が生き生きとしてるから。
でも、それを救っただとか解決だとか、そういう言葉で言い表されることに対しては違和感を拭いきれなかった。
だって、彼女たちが変わると同時に、僕も前へ前へと進みながら変われていたから。
もしもこれを何かで言い表すとすれば、それは救いや解決なんて独り善がりな言葉ではない。支え合ったという事実に他ならないと僕は思う。
けれど、今はそこを指摘しても意味が無い。僕たちがお互いに分かっていればそれでいい。
肝心なのは叔父さんと麗子さんの目的だ。そのためにこの資料を穴が空くほどじっくりと読んだのだから。
「ボクたちの目的はさっきも言った通り、この学園で恋愛格付制度を成功させること。そのためにもS級生徒には健やかな恋愛観を持ってもらう必要があった」
「それは分かりました。でも、それなら勝負も賭けも終わりでいいじゃないですか」
「いいや、秘密を知っても協力してくれるかと確認しただろう? この学園にはあと一人、変えて欲しい生徒がいる」
「僕は別に変えようと思って接したわけじゃありません。頼まれても達成出来るかどうかは分かりませんよ」
「努力してくれるだけで構わない。不登校の女生徒が一人だけいるんだ」
「……一人だけ?」
僕は学校に行っていないと言っていた女生徒を一人だけ知っている。そして叔父さんの言っている不登校生徒も一人に限定されているらしい。
ということは、どう足掻いてもお互いに思い浮かべている人物は一致するわけで―――――――。
「もしかして、
「知っているのか?!」
「……この時計を渡してきた人です」
僕がそう言いながら、今日も左腕に着けてきたソレを見せると、叔父さんは丸くした目を僅かに細めながら呟いた。
「既に接触しているなら話は早いね」
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