第435話
そこへりんごジュースの入ったコップを3つ持ってきてくれた
そんな僕たちが顔を上げた視線の先にあるのは、一般家庭には決して置くことが出来ないであろう大きさのテレビだった。
「それにしても大きいわね」
「スクリーンかと思ったよ」
「何も珍しいことではありませんよ。瑛斗さんの家にあるのと同じ大きさのテレビを10×10で繋ぎ合わせたようなものですから」
「あ、ほんとだ。よく見て見たらところどころに液晶の繋ぎ目が見える」
「1枚で作ることも可能でしたが、それですとどこかにひとつでも傷が付けば全交換ですから。こちらの方がお得なんです」
「それでも十二分にすごいわよ。これで映画なんて見たら家でも楽しめそうだもの」
「ふふ、プリチュアですかね」
「……殴るわよ?」
早速肘で小突き合いを始める2人から視線を外し、僕はリモコンを操作してテレビをつける。
今日ここに集まったのは他でもない、MyTubeで生配信されるノエルたちの番組を見るためなのだ。
僕の家も紅葉の家も、テレビでMyTubeが見れるようになっていないため、選ぶまでもなく麗華の家に決定したのだけれど―――――。
「ほら、始まるよ」
「東條さんだって、私のことを成金呼ばわりするじゃないですか」
「それはあなたが普通の金銭感覚から外れすぎてるからでしょうが」
「普通かどうかは主観でしかないです」
「とにかく、
「お断りします!」
……落ち着いて見れるような空気じゃないね。これならスマホの画面に映して一人で見た方が良かったかもしれない。
そうは思っても今から帰っている時間は無いので、少し強引ではあるけれど2人の頬を軽くつまんで喧嘩を仲裁した。
「もうすぐノエルたちが出てくるんだけど?」
「ご、ごめんなさい……」
「だ、黙るわよ……」
2人から「怖かったわね」「顔には出ない怒りを感じました」と囁かれたけれど、そんなことは気にしない。
僕は予め用意しておいた金色のペンライトを握ると、番組の開始と同時に登場したノエルに向かって「のえるたそ〜」と声を発しながら腕を振った。
隣の2人から「向こうから見えてないのよね?」「何なら声も届きせんよ」と囁かれているけれど、やっぱりそんなことは気にしない。
好きなアイドルを応援するのに、周囲の反応なんて気にしてはいられないのだ。それも、そのアイドルが友達ともなれば尚のこと。
「ほら、2人も応援して」
「の、のえるたそ〜!」
「が、頑張ってください〜!」
「気持ちがこもってないなぁ」
「……アイドルの前だと瑛斗って面倒臭いのね」
「普段のノエルさんには普通に接しているというのに……」
「ごちゃごちゃ言ってないでもう一回」
「「の、のえるたそ〜!」」
そんな感じで、僕たちは生放送のオープニングを満喫したのだった。
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今更だが、この生放送はノエルのグループが所属している事務所が計画・運営している。
そして出演するグループは
これだけ聞くと、昨日のこともあって何か問題がありそうではあるけれど、さすがは2人ともアイドルである。
まるで何事も無かったかのように振舞っているのだから。いや、それよりも彼女たちの間では解決したことになっているのだろうか。
どちらにせよ、今後の共演や芸能界活動に支障が出ることがなさそうで良かったよ。
「ほら、天翔のことも応援してあげて」
「ほ、他にもいたんですか?!」
「増えたのよ、つい昨日ね」
「文句言わずに」
「「か、天翔、がんばれ〜!」」
「うん、それでよし」
数十分後、言われるがまま応援し続けた紅葉と麗華が、疲れた顔でトイレ休憩に出ていったことは言うまでもない。
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