第424話
イベントも(
そんな中、何やらホテルマンの格好をしているものの顔が見えない男性が、女生徒のうちの数名に声をかけて回っていた。
初めは
他の数名は分からないが、おそらくその全員がS級なのだろう。彼が確信を持ったのは、扉を開けて外に出ていくホテルマンの横顔が見えた瞬間だった。
「……叔父さん、ここまで来てたんだね」
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「さてと、そろそろ点呼の時間だが心配ない。君たちには別件で用事を頼んでいることになっているからね」
学園長はそう言いながら、円形に並べられたイスに座る女生徒たちを順番に確認する。
瑛斗の予想通り、ここに集まった7名は全員がS級であり、沖縄に修学旅行で来ている2年生だ。
彼女たちは学園長が特別に手配した広い部屋の中、薄暗い明かりだけで互いの顔を認識している。もちろん、楽しい雰囲気だとは到底言えない。
「……まあ、3名の欠席者については大目に見るとしよう。勝負に関心がないのかもしれないからね」
学園長は円の外側をゆっくりと歩きながらため息をつくと、「呼び出された理由は分かっているよね?」と首を傾げた。
「瑛斗さんを落とすゲームについて……ですよね?」
「麗華君、その通りだ。ボクが始めたゲームなのだから、この機会に少しばかり焚き付けて置こうと思ったんだよ」
「焚きつけるってどういうこと?」
「紅葉君になら分かると思うんだけどね。彼が転入して半年以上が経過しても、未だにSS級が誰の手にも渡っていないのだから」
その言葉でこの場にいる全員が理解した。この周回はS級同士が顔を合わせることで、ゲームをより円滑に進めさせようとしているのだ、と。
ただ、本当にやる気があれば既に瑛斗に接触しているはず。しかし、初めからSS級を目的として接触したのは7人のうちノエルのみ。
そんな彼女ですら、今は片思いという状態で落ち着いてしまっている上に、萌乃花に至ってはゲームについて知ったのがつい数時間前なのだ。
紅葉と麗華のアタックでいくらかは傾いてくれはしたものの、彼女たちの目に写っているのはもはや称号などではなく彼自身の気持ちである。
「……はぁ、これは困ったね。ボクの甥っ子は予想の何倍も堅物だったなんて」
瑛斗と関わったことの無い2人も、片やスマホをずっといじっていて、呼び出されたから来たものの興味のない話だったと無視している様子。
もう一人も同じように興味がなかったようで、暗い照明と静かな空間とのマッチのせいか、既に穏やかな寝息を立てていた。
現状をまとめると、ここにいる誰もがゲーム自体に興味を持っていないのだ。……そう、彼女以外は。
「今まで高みの見物してたけど、S級がそれだけ集まっても揺らがない男なら仕方ないよねー」
「君は……確か
「いえす!
大きく露出した細長い腕と足は色白で、おまけに背も女子にしてはかなり高く170近くあるだろう。
誰もが憧れそうなものではあるが、紅葉は反射的に彼女から目を背けた。だって、とても苦手なタイプだから。
「やっぱり、F級程度も落とせないような子達にはSS級なんて荷が重いよ! ちーちゃんくらい可愛くないとねー?」
「……可愛いよりキモイわよ」
「ねえねえ、そこの小さいの。今、何か言った?」
「何も言ってないわ、空耳じゃないかしら」
「はっきり聞こえたかんね? ちーちゃんのこと侮辱すると、ファンのみんなが怒っちゃうよ?」
「聞こえてるなら聞き返さないでもらえるかしら。って言うか、ファンがいないと仕返しも出来ないのね」
「そんなこと言ってないんですけどー? ただ、ちーちゃんモデルだからさぁ、自分の手は汚せないってだけだしー?」
紅葉も瑛斗のことを『F級程度』と言われたことにカチンときたのだろう。
バチバチと火花を散らしても引くことなく、「甘えてるだけじゃない」ときっぱり言い返した。
「ふーん、わかった。ファンの力は使わない」
「ムキになっちゃったのかしら?」
「違うし。お前みたいな生意気チビは、自分の手で潰した方が早いってことだし」
「そう言ってるといいわ。どうせあなたに瑛斗は落とせないし。だって醜いんだもの、心がね」
「……やってやんよ」
互いに睨み合う光景を眺めながら、学園長が「やる気を出してくれたようでよかったよ」と笑っていたことは言うまでもない。
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