第348話
トイレに行っていた3人は、戻ってくるなりベッドの上に置かれた人生ゲームのボードを囲むようにして座る。
僕の両サイドに
「ところで
愛実さんはそう言いながら背中に隠していたカードのようなものを取り出すと、ボードのすぐの横にセットする。
「これはお題カード。私たち3人で考えたお題が書かれてあるんだけど、ルーレットを回して出た数字分引くってルールにしない?」
「そのお題ってのは強制なのか?」
「お題をクリアできた分だけ進める。3が出て2つクリア出来たら、1歩マイナスってこと」
「なるほどな、面白そうじゃねぇか」
見たところバケツくんは乗り気らしい。それなら僕も拒む必要は無いのだが、承諾する前にすこしかくにんしておきたいことがあった。
「変なお題は入ってないよね?」
「例えばどんなお題のことかな?」
「チャラ男が集まる合コンでする王様ゲームで出されるようなお題」
「あはは、抽象的なはずなのにものすごくわかりやすい例えだね」
愛実さんはケラケラと笑いながら紅葉・麗華と目を合わせると、「大丈夫、身の危険はないよ」と親指を立てて見せる。
「それなら確認しても―――――――」
「「「ダメ!」」」
「――――――わかったよ」
先程の作戦会議は、きっとこのお題カードのことを話し合ったのだろう。
何にせよ女子が結託している以上は、人数的にも抗うことは不可能。大人しくゲームを始めるとしようかな。
「2人のOKも出たということで、お題制度は導入だね。次は使うキャラを選ぼうか」
「キャラ? 何か違いでもあるの?」
「それぞれが体質を持ってるんだよ。それによってゲーム中のとあるポイントで他の人より有利になることがあるの」
「なるほど。それなら重要そうだね」
説明してもらったところ、キャラは以下の6体だ。
まず、怪力のゴードン。出目が〇以上でなければ進めないという仕掛けの際、その基準をマイナス2にしてくれる。
次に、成金のジェームズ。一定の確率で手に入る金額が増える、また失う金額が減る。
3人目は、ハーモニカ吹きのアルモンド。カードマスで手に入るカードが一定の確率で2枚になる。ただし、初めから呪いカードを所持している。
4人目は、踊り子のジェシカ。〇マス戻る、〇ターン休みという効果を受けない。ただし、〇マス進むという効果も受けない。
そして、勝負師のモニカ。カジノマスで勝利した時の賞金が10倍になる。ただし、負けた際に失う金額も10倍になる。
最後が、遊び人の山根。他のキャラが効果を発動する度、「お前ら、いいなぁ」と呟かなければならない。他の能力は特にない。
ざっと見た感じだけでも、ゴードンとジェームズが強キャラなことは明らかだ。マイナスの効果も無しに、これだけ得な効果を手にできるのだから。
逆に一番選ぶことがなさそうなのが山根だろう。そもそも、どうしてこのキャラだけ日本人なのかも謎だし。
「じゃあ、それぞれ使いたいキャラを指差してね」
愛実さんの言葉に頷き、掛け声と同時に5人が指を伸ばすと、その内の3つの指がジェームズを指していた。
バケツくんは怪力のゴードンを選び、僕は勝負師のモニカを選んだため、第一希望がすんなりと通ることになる。
「モニカを選ぶなんて珍しいな」
「だって、人生ゲームって結局は所持金だよね」
「それもそうなんだが……」
「成金のジェームズが被ることを考えれば、次にお金を手に入れる機会があるモニカを選ぶべきだと思ったんだ」
「なるほど、賢いかもな」
もちろんモニカには弱点がある。カジノで負ければ大損してしまうことだ。
しかし、逆に言えばこのキャラはどのキャラよりも一発で大儲けができるキャラでもある。その強みを活かすことさえ出来れば―――――――。
「で、2人は揉めてるみたいだな」
ジェームズを諦めてジェシカに乗り換えた愛実さんと違い、どうしても第一希望を変えたくない紅葉と麗華は早速喧嘩しているらしい。
「2人とも、仲良く譲り合って……」
「瑛斗は黙ってて!」
「これは私たちの問題です!」
「……はぃ」
どうやら今はそっとしておいた方が良さそうだね。いくら勝負師を選んでも、飛んで火に入る夏の虫にはなりたくないからさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます