第313話
6時間目のホームルーム、修学旅行先の自由時間で一緒に回るメンバーは以外にもあっさりと決まった。
「みんな、よろしくお願いしますね〜♪」
決まったには決まったのだけれど、僕を含めその人物以外のメンバー全員の表情が引き
だって、その4人目のメンバーというのが、そもそも生徒ですらなかったから。
「どうして
「だって、他の先生にハブられたんですもーん」
「完全に普段の行いが悪いせいですよね?」
聞いたところ、週の半分は定時で帰るくせに忙しいからと部活の顧問を断り続けているらしい。
ほとんどの先生が何らかの部活の顧問をやっているこの学園では、嫌われても仕方がない行為なのだ。
「だからって僕たちのところに来なくても」
「4人で集まれなかったのは、この班だけだでしたからね〜♪」
「「「……はぁ」」」
楽しくなるはずの自由時間に担任同伴とは、どこぞの母親同伴RPGと同じくらいにテンションが落ちる事案である。
「先生、
「……
「なら、担任が着いてきてもいいって言うの?」
「それはもちろん嫌ですけど……」
何やらこそこそと話している二人を見ていた先生は、「そんなに私のことが嫌いですか〜?」と嘘泣きをして見せた。
「綿雨先生は嫌いじゃありませんよ。着いてこられるのが鬱陶しいだけで」
「私も同意見ね。空気読んでって思うわ」
「た、たくましい子達に育ちましたね……」
ズバッと言いたいことを言われた先生が、心にかすり傷を負っているようにも見えるが、ここで助け舟を出したりすれば僕にナイフが飛んで来かねない。
少し心苦しいけれど、自力で耐えてもらうことにしよう。ふわふわしているとは言え大人の女性、この程度で怒ったりはしないはずだ。
「ふふふ。着いていくことを拒むなら、3人とも内申点がどうなるか……」
「ものすごく大人気ないですね」
「ぐふっ……」
胸を押さえて床に膝をつく綿雨先生。あまりの幼稚な条件の出し方に、ついついストレートを叩き込んでしまった。
「先生、他の先生にもう一度頼んだらどうです?」
「それはイヤイヤしちゃいますね」
「生徒の楽しい時間を奪ってでも?」
「教師に二言はないんですよ〜♪」
どうやら説得して何とかなる相手では無さそうだ。僕はそう察すると、「分かりました、一緒の班でいいです」と頷いて見せる。
「ちょ、何言ってるのよ!」
「理解できません!」
2人が怒るのもごもっとも。僕は彼女たちを少し離れた場所まで連れていくと、先生には聞こえない声で囁いた。
「当日に先生を撒けばいいよ」
「確かに、その手があったわね」
「
「2人に影響されたのかな」
「「……は?」」
「やっぱりなんでもないよ。なんでもないからそんな目で睨まないで」
少々タブーに踏み込みすぎてしまったらしい。慌てて足を引っ込めて先生の方へと戻ると、3人で話を合わせて班を確定させる流れへと向かった。
「では、班決めはこれで終わりです! 皆さん、メンバーを置いてきぼりにしたらダメですからね?」
教壇へと戻った先生のその言葉に、3人だけが気まずそうな顔をしたことは言うまでもない。
班分けが決まれば、次は宿泊施設での部屋分けの決定に移る。僕にとって一番の難所だよ。
「紅葉たちとは組めないし、誰と組もうかな……」
そう独り言が零れるが、仲のいい男子なんて居ないことは明らか。
次々に4人で集まって座っていくクラスメイトたちを眺めながら、余り物になる道しか残されていないと諦観したその時だった。
「瑛斗、まだなら一緒に組もうぜ!」
声のした方を振り返ってみると、そこに立っていたのはこのクラスで唯一印象に残っているあの男子だった。
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