第311話
その結果、最下位は8個の紅葉。1位は根性で24個掴み取ったノエルだったのだが、賭けでオールインしている彼女は全て没収。
残った飴玉の数としては、結局最少どころかゼロになってしまったのだった。
「……」ジー
そんなノエルを気の毒に思ったのか、イヴは自分が手に入れた飴の半分を分けてあげている。
そんな双子愛に感化されたのか、他のみんなも少しずつ譲渡し始めた。仲良きことは美しきかなとはまさにこの瞬間のためにある言葉だね。
「仕方ありませんね、4個だけですよ?」
「
「
「っ……割合の話よ!」
同じ個数なのに言い方を変えただけなことが見破られた紅葉は、少々苦しい言い訳をしながら僕の方を見てくる。
「減ったから、
「別にいいよ。お姉さんが置いていったパイン飴は全部手に入ったし」
「賭けた本人がいなくなったんだものね」
40個近く紅葉にベットしておきながら、家を飛び出してしまったため、賭けの放棄とみなして払い戻しはしないことにしたのだ。
念の為にひと袋は開けずに置いてあるけれど、もうひと袋だけでも十分な量が入っているから満足だよ。
「美味しい……美味しいよぉ……」
「……」ヨシヨシ
涙ぐみながら飴を味わっているノエルと、彼女の頭を撫でてあげているイヴを微笑ましく思いつつ、僕はみんなが机の上にまとめたゴミと箱を持って一度部屋を出たのだった。
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その後はみんなで人生ゲームをして麗華が破産してしまったり、マルコパーティーで敵同士協力して1位を引きずり下ろしたり。
なかなかに盛り上がる時間を楽しみ、気がつけば空がオレンジ色に染るような時間になっていた。
「そろそろお開きですね」
「お兄ちゃん、すごく楽しかった!」
「それなら良かったよ」
明日も学校ということで、暗くなる前にハロウィンパーティーは終了。
夜道を歩くと危険そうなノエルはイヴに任せて連れ帰ってもらい、家が少し遠いカナと麗華にも先に帰宅してもらうことにした。
「奈々、今日の夜は出前でも取ろうか」
「ピザ食べたい!」
「じゃあ、ここに届くようにしてもいい? 片付けもあるから紅葉と一緒に食べたい」
「別に構わないわよ」
紅葉が頷いたのを確認すると、奈々はすぐに部屋を飛び出して廊下にある固定電話を取りに行く。
その背中を見送ってから、僕と紅葉は2人で部屋の飾り付けを外し始めた。
「……って、どうして肩車なのよ」
「嫌なら下ろそうか?」
「嫌ってわけじゃないわ。でも、少し恥ずかしいというか……」
「大丈夫だよ、すごく軽いし」
「気にしてるのはそこじゃないわよ!」
紅葉は身長が低いだけでなく、健康的なレベルで体が細い。だから、力のない僕でも体重移動さえ間違えなければ、しっかり持ち上げられるのだ。
ただ、上に乗る方も疲れるようで、少しすると僕の両頬に触れる太ももが汗ばんできてしまう。
「紅葉、少し休憩する?」
「だ、大丈夫。疲れてないわ」
「でも汗かいてるよ」
そう言いながら人差し指で太ももの内側を撫でると、彼女は「ひぅっ?!」と聞いたことの無い声を発して背筋を伸ばした。
その突然の重心の変化のせいで、僕の体はグラッと後ろに傾いてしまう。
それは足の位置を変えて耐えたのだが、怒らせてしまった紅葉が「瑛斗のバカ!」と頭をぺちぺち叩いてきたのがまずかった。
「あ、ちょ、紅葉やめて」
「瑛斗が悪いのよ。肌を軽々しく触らないで! 」
「謝るから。だからそれ以上は―――――――」
「……へ?」
最後に強めに叩かれた時、指が目に入ってしまって身体が大きくふらついた。
さすがにそれには耐えられず、何とか倒れる方向を調整して紅葉は比較的近かったソファの上に倒れたけれど、下にいた僕はその角に頭をぶつけてしまう。
「いてて……」
「え、瑛斗……大丈夫?」
慌てて駆け寄ってきてくれる彼女に氷を持ってきてもらい、ぶつけたところと痛む箇所を冷やした。
「ごめんなさい、私……」
「僕も悪かったもん。急に触ってごめんね」
「ううん、悪意がないのはわかってたもの。その、恥ずかしくて……怒りすぎちゃったわ」
お互いに謝った後は、2人で微笑み合って解決。10分ほど冷やしていたら痛みも引いてきたし、問題なさそうだから気にしないでと紅葉を撫でておいてあげる。
お詫びだからと太ももも撫でるように勧められたけれど、そこは丁重にお断りしておいた。あれだけ嫌がってたんだもんね。
「お兄ちゃん、ピザ30分後に―――――――え?」
まあ、僕を怪我したことを知った奈々を落ち着かせる方が、数十倍大変だったということをここに記しておこうと思う。
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