第304話
予定通り、僕たちは放課後になってすぐにノエルとイヴを誘いに行った。
結果は2人ともOKだったが、ノエルの方はハロウィン特番の生放送があるということで遅れてくるおのこと。
準備はこちらでやっておくから、ノエルは好きなタイミングで来て欲しいと伝え、3人でB組の教室を後にした。
次に誘うのはカナだが、彼と会うためにはとりあえず例の文房具店に行かないといけない。
また話し相手を頼まれて長居する可能性もあるため、
「結果はすぐ連絡するよ」
「ええ、待ってるわ」
「では、また明日」
2人とは校門前で別れた後、真っ直ぐに文房具店へと足を向ける。
到着してからレジへと向かうが、どこを確認しても客も店員も見当たらない。どうやらカナは裏で作業をしているらしかった。
「カナ、いる?」
店の奥に向かって声をかけてみると、すぐに「はーい!」という声は返ってきたものの、顔を出したのは見知らぬ女の子。
サイドテールでまとめた金髪は、ところどころにピンク色が混ざっている。
爪もピンク色のネイルをしていて、片手に持っているスマホからもピンクのクマが垂れ下がっていた。かなりのピンク好きらしい。
「いらっしゃいやせー!」
「……」
「どうかされやした?」
「いや、インパクトあるなと」
「よく言われやす!」
カナが着ていたのと同じエプロンを身につけているから、きっと彼の言っていた『他の2人のバイト』のうちの片方なのだろう。
語尾に『やす』をつければ店員ぽくなると思っている辺り、正直少し苦手な部類ではあるけれど、悪い人ではなさそうなので聞いてみることにした。
「カナはいる?」
「カナって
「そう、
「居やすよ、ちょっと落ち込んでるっすけど」
落ち込んでいるとは一体どういう事なのか。僕が確認しようとすると、店の奥から飛び出してきたカナが突然抱きついてくる。
彼は目をうるうるとさせていて、おまけに制服の前がはだけていた。顔は完全に女の子だから、さすがに目を逸らしちゃったけど。
「何があったの?」
「
「よしよし、泣かないで」
どうやらピンク大好きさん、もとい田中さんが何かしたらしい。被害者本人の口からは聞き出せそうにないので、容疑者から聴取することにした。
「いや、暇だから一緒に遊ぼうと思ったんすよ」
「それで?」
「たなちー、かなちーの胸を揉んだっす」
「……なるほどね」
皆まで言われなくても察せた。要するに、カナが男であることがバレてしまったのである。
突然胸を触られるなんて思わないだろうから、咄嗟に抵抗することも出来なかったのだ。はだけているのがその証拠だよ。
「まさかの男の娘っすよ? 色々聞かないわけにはいかないっす」
「ちなみに何を聞いたの?」
「下着は女物なのかとか、体育の着替えはどうしてるのかとかっすね」
「確かにそれは気になるね」
「
カナは「酷いですよぉ……」と完全に男モードに戻って落ち込んでしまう。
さすがにこれ以上いじめるのは問題なので、「ごめんね」と頭を撫でて慰めてあげた。
「あのさ、田中さん」
「たなちーって呼んで欲しいっす!」
「じゃあ、たなちー。カナのことは言いふらさないで欲しい、すごく深いワケがあるんだ」
「ここまで泣かれたらさすがに言えないっすよ」
「それなら良かった」
「その代わりにおにーさん、ひとつ言うこと聞いてくれないすか?」
僕が「言うこと?」と聞き返すと、彼女はカチッとバイトモードからたなちーモードに切り替えると、にっこりと笑いながら手招きをする。
「暇っしょ? たなちーと店の奥で遊ぼうよ、楽しいと思うからさぁ……ね?」
嫌な予感がしたことは言うまでもない。
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