第256話

「まず、勝ち残った6人は褒めてやろう。生徒会長の私も、お前らの運の良さには感服だ」


 茶柱さばしら会長は僕たちの前を歩きながら音の出ない拍手をした後、「しかし」と口にして足を止める。


「最終戦に残れる者は半数の3人だけだ。最後にお前らの運を試す」

「最後の敵はゲーム界のレジェンド。真に運のあるものだけが、実力と戦うことを認められるのです♪」


 台を押しながらやってきた文化祭委員長は、その上に乗っている機械の後ろから6つの球を取り出して見せた。

 そこには勝ち残っている者たちの顔が描かれてあり、それを機械の中へ入れるらしい。


「仕組みはビンゴマシンと同じだ。排出された3名を決勝に進出させる」


 6人の中には「ここまで頑張ったのに今更運って……」と文句をこぼす者もいたけれど、会長に「これもゲームだろ、違うか?」と言われるとしゅんとしてしまった。


「異論はないな。よし、回せ」


 会長の言葉に合わせて委員長がボタンを押すと、機械は目でおうことすら出来ないほど高速で回転し始める。

 そして十数秒後、最初に弾き出されたのは端にいた3年生の女の子が描かれたボールだった。


「3年B組D級の紺野こんの 魅音みおんだ」

「ふふふ。知っていましたよ、この結果は」


 いわゆるタロットカードと呼ばれるものを床に広げている彼女は、占いかなにかが好きなのだろうか。何にせよ少し変わった人らしい。


「2番目は、2年D級S級の―――――――」


 2人目に出てきたのは、僕も見覚えがある人物。あの時と同じで面倒事に巻き込まれそうだから話しかけたりはしなかったけれど。


「わ、わわわわ私ですか?!」

「なんだ、あまり嬉しそうじゃないな」

「そういう訳では無いですけど……」


 唸りながら頭を抱えてしまう彼女は桃山ももやま 萌乃香ものか。昨日の放課後、半ば強引にポスター作りを手伝わせてきた人である。


「やるのかやらないのか、簡潔に答えろ」

「や、やります!」

「ふっ、断ればお仕置きも用意してたんだがな」


 会長は萌乃香が「はわわ……」と怯える姿にニヤリと笑いつつ、最後の決勝進出者が描かれたボールを取り出した。


「まあ、こうなるとは思ってたがな」


 彼女はそう言いながらゆっくりと6人を順番に見た後、その中の一人に視線を戻して彼の足元に指で弾いたボールを転がす。


狭間はざま 瑛斗えいとクン、君だよ」


 僕は特に驚くことも無くボールを拾い上げると、舞台の上の会長を見上げて小さく頷いた。

 それだけでやる気は伝わったようで、彼女はパンッと手を叩いて張り詰めた空気を一掃する。


「さあ、敗退者は退出の時間だ」

「デッキと支援者カードは置いて行ってくださいね」


 実力ではなく運で敗退したからか、その落ち込みようはこれまでの敗退者とは比べ物にならない。

 しかし、半数は勝者が出た。ここで勝ちを掴めなかった者は、ゲーム界のレジェンドと戦ったところで勝ち目はないということなのだろう。


「決勝戦はレジェンド対挑戦者という形で順番にゲームをしてもらいます。これから呼んできますので、少々お待ちくださいね」


 委員長はそう言い残すと、舞台袖へと駆け足で消えていく。少し時間が出来たようだし、彼女に話しかけてみようかな。


「萌乃香、ここまで残れたんだね」

「瑛斗さん?! お友達がいて助かりましたぁ!」

「友達?」

「はい! 助けてくれたのでもうお友達です♪」

「助けさせられた、の間違いだけどね」


 ちょっと何言ってるか分からないと言いたげに首を傾げる萌乃香。僕も友達と友達じゃないの線引きは分からないから、それ以上は何も言わなかった。

 それからしばらくタロットカードをいじっている先輩を2人で眺めていると、委員長が汗を拭いながら戻ってくる。

 髪を後ろでまとめ直している辺り、そこそこ急いで呼んできてくれたのかもしれないね。


「お待たせしました!」

「登場してもらおう。今回デュエルに使用したカードの製造会社の社長の娘であり、同時にいくつものゲーム大会で優勝してきた女子中学生だ」


 3人の挑戦者が見守る中、白い煙を出すという少し本格的な演出に包まれて、ゲーム台と共に舞台の上へと現れた女の子。

 瑛斗は彼女と目が会った瞬間、思わず「……え?」という声を漏らしてしまう。だって、彼女とこんなところで会うとは思っていなかったから。

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