第243話
「……すごいわね」
僕のデバイスを覗き込んだ
まず、紅葉と登録し合ったことは言うまでもない。
2人目はF級とS級狙いの集団から逃げていた際に、彼らに嘘をついて別方向へ向かわせてくれた
3人目は着替えのせいで参加が遅れてしまったものの、まだ枠が空いていると聞くが否やすぐにこちらに向かってくれたノエル。そして。
「お兄ちゃん、やっと見つけ―――――――――」
「やっと見つけたよ、
兄としては妹と登録し合いたかったのだけれど、会長に『A級の彼女ではボーナスは発生しない』と強引に押し切られ、この4人に決まったのである。
「私はそこそこの点数ね」
「私も同じくらいですかね」
「私もあんまり稼げなかったよ」
約10分後。僕以外に3人見つけなければならなかった紅葉たちも、何とか相手を見つけて枠を埋めて戻ってきた。
会長はと言うと、何故か僕一人と登録してから放送室に籠り、以降は誰とも登録しなかったらしい。
自ら『4人』と説明したと言うのに、一体どういうつもりなのだろうか。意味が無いとも思えないんだけど。
『さて、早くも15分が経った。以降の新規登録は禁止とさせてもらう』
デバイスを遠隔操作され、強制的に流れ始めたライブ配信。そこに映る会長の言葉と同時に、『トモダチが固定されました』という通知が流れる。
『4つの枠を全て埋められなかった者が24人いるようだが、お前らは自動的に失格だ』
「あれ、ということは会長も?」
『実は私も一人としか登録しなかった。これだけを聞けばバカだと思う奴もいるだろうな』
彼女は画面の中で可笑しそうに腹を抱えると、『その方が面白いんだ、このゲームは』と言ってパソコンのEnterキーを叩く。
すると、僕のデバイスには『1位』と表示された。紅葉には『47位』、麗華には『68位』、ノエルには『11位』と書かれてある。
『今表示されたのはポイントの合計順位だ。上位100人までが2回戦に進出する』
この学園には360人前後の生徒がいたはず。つまり、半分以上が削られたということ。
そしてF級でありながらS級としか組まなかった僕が、その中のトップになるのは必然だった。
『落ちた者は残念だった。が、諦めるのはまだ早い。面白くなるのはここからだ』
会長がそう言って画面外へ目を向けると、横から歩いてきた女子生徒が彼女の隣に腰を下ろす。確か文化祭委員長を務めている人だ。
『敗者もトモダチ登録をした相手がゲームに残っていれば、支援を行うことができます。もちろん、その人が優勝すれば同じご褒美が与えられますよ』
『つまり、敗者は生存者を勝たせる駒になるってわけだ。他全員が生き残っている奴は残念だがな?』
会長の言葉に僕は目の前の3人を見回し、そしてもう一度デバイスに視線を落とす。
支援の内容はまだ分からない。それでも、会長という強い助っ人が自分専属になっているという事実に、少し心の余裕が生まれてきていた。
『きっとザワついているところだろうが、2回戦の勝負内容を発表しよう』
『そうですね。今回はこちらを使って勝ち負けを決めてもらいます』
委員長が取り出して見せたのはカードの束。トランプでもUN○でもない、まるで遊○王かポケ〇ンカードのように絵と説明が書かれたもの。
『デュエル形式で勝負をし、負けた方が敗者となる至極単純なゲームです』
『両者基本手札は全く同じ。違うのは支援者だけ』
『支援者はステータス総合値に応じて特別な能力を持つモンスターカードとなり、被支援者のデッキに反映されます』
『つまり、敗者が切り札になりうるってわけだ』
要するに、ライブ配信で口元を歪めている学園トップの生徒会長。彼女が僕の切り札になっているということになる。
それを引くことが出来れば、無条件で勝利になりそうなほど強い切り札に。
『会場は体育館。すぐに集まれ、始めるぞ』
『棄権する場合は構いませんが、学園長が泣いてしまうので是非ご参加を〜♪』
生き残っている僕たち4人は、互いに目を見合わせて体育館へ足を向ける。
ご褒美の内容なんてどうでもよくて、単にどんなゲームになるのかが楽しみだった。少年の心に戻れそうな気がしたから。
「私、消しバト派だったんだけど大丈夫かしら」
「私なんてバトエン派ですよ」
「なら、私が一番カード慣れしてるね」
「ノエルさんは何を?」
「ふふ、大富豪♪」
「「……関係ない」」
和気あいあいとする3人の声の中、配信が終了する直前に『私を上手く使いこなせよ』と言う言葉が聞こえたような気がした。
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