第221話
「ど、どうかにゃ……?」
部屋に戻ってくるなり心配そうに首を傾げて見せた
「可愛いね、その猫耳」
「えへへ……お姉ちゃんから借りてきたにゃ」
照れが少し混じってはいるものの、彼女自身そこそこノリノリらしい。軽く握った拳をこまねいたりなんてことまでしていた。
「ギャルも良かったけど、これもいいね」
「そうにゃ?」
「すごく似合ってるよ」
「……照れるにゃ」
頬をほんのりと赤くした彼女に「おいで」と呼びかけてあげると、一瞬躊躇ったもののすぐに隣に座ってくれる。
「よしよし、いい子だね」
そう言いながら首を撫でると、紅葉はくすぐったそうに首をすくめる。けれど、段々慣れてきたのか、やがて気持ちよさそうに喉を鳴らし始めた。
「本物の猫みたい」
「にゃ♪」
「可愛いね、飼いたくなっちゃう」
褒められたのがよほど嬉しかったらしく、彼女はすりすりと脚にに頬ずりしてくる。
そしてその感触が気に入ったのか、頭を太ももに乗せたまま横になってしまった。
「甘えん坊さんだね」
「もっと撫でて欲しいにゃ」
「いいよ、よしよし」
「んぅ……気持ちいいにゃ……♪」
きっと猫を演じることで、紅葉としての照れによるストッパーみたいなものが緩まってるんだね。
これくらい素直になってくれると、僕も何を考えてるのか分かりやすくて助かるよ。まあ、普段の紅葉も同じくらい好きだけど。
「お腹も撫でてあげる」
「んにゃっ?!」
「よしよし」
「んぅ……ダメにゃご主人……んっ……」
「ペットはこうされるのが好きらしいからね」
「わ、私は好きじゃ……にゃい……」
その言葉を聞いて僕がすぐに手を離すと、嫌がっていたはずの紅葉が少し悲しそうな顔をした。
様子を見ながら手を近付けようとすると、やっぱりフリフリと首を横に振って嫌がる。離すと「あっ……」と声を漏らす。
「どうして欲しいの?」
「そ、それは……」
「言ってみて、その通りにしてあげるから」
僕の一言に微かに目を見開いた彼女は、しばらくの間モジモジとした後、自分のお腹を擦りながらこちらを見上げてくる。
そして軽く下唇を噛み締めると、服を捲ってお腹を見せながら若干息を荒くして言った。
「た、たくさん気持ちよくして欲しいにゃ……!」
露わになった綺麗なお腹が、緊張のせいか激しく上下している。
そんな彼女を落ち着かせるように頭を撫でてあげた僕は、優しく微笑みながら小さく頷いた。
「い、いいにゃ?」
「飼い猫のお世話はしてあげないとね」
「んぅ……お願いしますにゃ……♪」
猫耳が可愛いのか、紅葉が可愛いのか。僕にはその判断がつけられないけれど、一つだけ言い切れることがある。
紅葉と猫耳が合わさると、とてつもなく可愛くなるということだ。愛でていたくなるというか、守りたくなるというか。
女の子はみんな似合うのかな、
「ほら、よしよし」
「にゃぁ……ご主人、好きにゃ♥」
その後、十分満足出来たのか「ご主人にもしてあげるにゃ」なんて言って僕もお腹を撫でてもらったりもして、空が暗くなりかけた頃にようやくなでなでは終わりを迎えた。
「そろそろ帰ろうかな、奈々も待ってるだろうし」
「あ、もうひとつ見せたいものがあるの!」
そう言って僕を呼び止め、代わりに廊下へ出ていく紅葉。数分後、戻ってきた彼女が身にまとっていたのは、かの有名な三大美女が一人のコスプレだろうか。
「クレハパトラ……なんちゃって」
「……」
「……」
「面白いと思うよ」
「……ほんと?」
「ごめん、嘘」
真実を告げられたその後、「お姉ちゃんが温めておいたギャグ、しっかりウケた?」と覗きに来たお姉さんがしばらく無視され続けたことは言うまでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます