第152話
警察の人達には知り合いであることを告げ、パトカーに乗っていた人物の同意もあって、僕は彼を家の中に招き入れた。
海外に行っていたからか、少し雰囲気が変わっているような気もするけれど、彼は間違いなく
突然の来客に、その場にいたみんなは目を丸くしている。それもそうだよね、てっきりモーターボートには
「先輩方、お久しぶり〜♪」
「黒木さん、どうしてここに……」
「話せば長くなるよ〜?」
一応聞いてみたところ、内容だけなら単純な事だった。海外から帰ってきたカナは、すぐにこの場所に向かったらしい。
しかし、乗る予定だった船がトラブルで欠航してしまい、仕方なく近くの風変わりな自転車屋で見つけた古いモーターボートに乗って海を渡ってきたんだとか。
「まさか、爆発するとは思わなかったな〜♪」
「よく無事だったね」
「医者の人も奇跡だって言ってたよ〜」
ケラケラと笑うカナ。無事で何よりだが、話を聞いていて一つ気になったことがあった。
彼女は何故か、初めから僕たちの居場所を知っていたような口ぶりなのだ。まるで、ここに来たことが必然であると言うかのように。
「カナはどうしてここが分かったの?」
「昨日、聞いたんだよ〜。
「凛音? ああ、風紀委員の?」
カナって凛音と友達だったんだ。中学からの後輩なのに全く知らなかったよ。
そう言えば、クッキー貰ったんだっけ。あの時様子がおかしかったから、何が盛られたんじゃないかって紅葉のお姉さんにあげちゃったけど。
一応帰ったら感想聞きに行こうかな。サボテンくんのお世話も頼んどいたし、受け取りに行くついでに。
「私が電話で
「もしかして、紙を忘れた時かな?」
「……きっとそうね」
僕は紅葉と顔を見合わせて苦笑いをする。忘れたことに気付いて取りに戻った時には既に居なくなっていたし、あの短時間で内容を覚えていたというのなら、凛音は天才なのかもしれない。
「でも、どうしてわざわざ来たの?」
「決まってるよ〜♪」
カナはその質問に口角を上げると、僕にグイッと詰め寄ってくる。そして、他の人には聞こえないように耳に口を寄せると――――――――。
「先輩に会いたかったからしかないじゃないですか」
男のカナとして、混ざりっけのない言葉を囁いた。
「海外帰りで恋しいんだよ〜♪ 今日、一緒に寝てもいい?」
「僕は別にいいけど―――――――――」
そう言いながら視線を移動させてみると、
「私もいいわよ。奈々ちゃんと寝るよりは安全でしょうし」
「紅葉先輩の言い分は何言ってるか分からないけど、私もそれでいいかな」
しかし、そんな落ち着いた2人とは対照的に、
「何か起こるはずないわよ、そもそも付いてるし」
「そうそう、お兄ちゃんとカナちゃんの組み合わせじゃ何ともないですよ」
「ど、どういう意味ですか……?」
「まあ、それは知らない方がいいと思うわ」
紅葉の口ぶりで僕もようやく状況を理解出来た。2人はカナが実は男だと知ってるから、男同士で寝ることに問題は無いって言ってるんだね。
麗華だけがそれを知らないと考えると、こういう反応になるのも頷けるよ。
「じゃあ、私と瑛斗先輩で寝るの決定だね〜♪」
多数決方式で強引に確定させたカナは、心底嬉しそうに抱きついてくる。僕はそんな彼を優しく引き離すと、ポンポンと頭を撫でながら言った。
「とりあえず、お風呂に入ってきなよ。海の匂いが服に染み付いちゃってるから」
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