第138話
買い物の日の1週間後、海に行くメンバー全員が僕の家に集まっていた。
この場にいるのは、僕、
なぜ我が家に集まっているのかと言うと、学園長もとい叔父さんが車で送ってくれることになったのだ。
電車だと乗り継ぎもややこしい上に、駅から距離もあったからすごくありがたい。
叔父さんには外で待ってもらい、僕らは荷物の最終チェックをする。忘れ物があっても取りに戻って来れないからね。
着替えなどは全て肩がけのカバンに、浮き輪やビーチボールなどはリュックの中に入っている。
全員がしっかりと確認し終えると、玄関の鍵を閉めてさあ出発だ。
「お待たせしました」
「気にしないでいいよ。席は自由に座ってくれたまえ」
叔父さんは「助手席はハニー専用なんだ」と笑うと、運転席にあるボタンを押して後ろのドアを開いてくれる。
中を覗いてみれば、席の形が普通の車とは違っていた。まるでパーティ用リムジンのように、席がコの字になっているのだ。
僕が初めに乗り込むと、それに続いて
麗華の「奥から詰めていきましょう」という言葉で、僕はコの字で言うところの縦棒の部分に座ることになった。
荷物を積み終わった奈々とイヴも乗り込み、「よし、揃ったね」とドアが閉じられる。
ゆっくりと走り出した車の微かな振動で、僕はついに夏休みらしくなってきたなぁと心の中で呟いたのだった。
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車の旅の感想を一言で言うと、かなり壮絶だった。
席が進行方向を向いていないせいか、僕以外の全員の気分が悪くなってしまったのだ。トランプをしていたことも原因かもしれないけど。
「うう、頭がクラクラするわ……」
「は、吐きそうです……」
みんなは到着してからもしばらく車の中で休み、その間に僕と叔父さんで荷物を家の中へと運ぶ。
持ち主の人はどうやらここには居ないらしく、あるものは自由に使ってくれて構わないと連絡があったそうだ。
冷蔵庫の中には飲み物もある。高校生が来ると聞いていたのか、それともそもそも飲まない人なのか、お酒の類はひとつもなかった。
最近のお酒はパッケージが派手なものもあるから、誰かがジュースと間違えて飲んじゃうかもと心配していたけど、そもそも無いなら安心だね。
「ようやく落ち着いてきたわ」
「車酔いなんて初めてしましたよ」
「酔い止め持ってくればよかったですね」
「……」シュン
こちらもようやく作業が終わったというところで、ちょうど紅葉たちがよろよろと入ってきた。
一番後ろを歩いていたイヴは相変わらず真顔なものの、余程体力を奪われてしまったのか、すぐにソファーへと倒れ込んでしまう。
他のみんなも体を休めたいようで、この家の広さや綺麗さに感動する余裕はないらしい。
「紅葉、大丈夫?」
「瑛斗、荷物助かったわ。とてもじゃないけど、今はあんな重いもの持って歩けなかったから」
「紅葉が素直にお礼を言った。それだけ辛いんだね」
「私をなんだと思ってるのよ……」
いつものように怒る元気すらない。まだ時間は早いけど、海に遊びに行くのは昼を過ぎてからになりそうだなぁ。
唯斗はそんなことを思いながら、みんなに水を手渡していった。冷たい水を飲めば、少しは気分が良くなるかもしれないからね。
僕はコップを乗せてきたお盆を片付けようとキッチンへ行こうとして、ふと前もって決めておくべきことを思い出した。
「あ、そう言えば―――――――――」
まさかその一言で、みんなが嘘のように騒ぎ始めるとは思ってもみなかったよ。
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