第125話
「こっちがノエルで、そっちがイヴ?」
「そうだよ〜♪」
「……」コク
あれから数日後、2人は本当に仲良しの双子として、学校から一緒に帰るようになったらしい。
その途中で偶然会った
「変わってないね」
「変わってないわね」
どうやら、2人は入れ替わったまま過ごすことにしたようだ。真実を打ち明けたことで、お互いに今の自分が気に入ったのだろう。
「あ、そうそう。ノエルの告白への返事なんだけど」
「い、今?! もう忘れてるものだと……」
「悪いけど、やっぱり恋愛感情って分からないや」
「……そっか。真剣に答えてくれてありがとう♪」
ノエルはニコッと笑うと、小さくお辞儀をする。瑛斗はそれに対してもう一度「ごめんね」と謝ってから、2人とはちょうど差し掛かった分かれ道で手を振って別れた。
「……」
「……」ジー
離れていく背中を見つめるノエルの横顔を、イヴはじっと見つめる。そして、ボソッと呟かれた一言を聞いて、グッと親指を立てて微笑んだのだった。
「……ちょっと期待しちゃったかも」
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「ねえ、紅葉」
「なによ」
「嬉しかった?僕が告白を断って」
「……別に」
彼女はそう言いながら、僕がいるのとは反対の方向に顔を背ける。きっと本心は嬉しかったのだろう。
「泣いちゃってたくせに」
「う、うっさい!一人に戻りたくなかっただけよ」
「言ったでしょ、紅葉にとっていい返事をするって」
「……分かってたなら教えなさいよ」
「僕も確証はなかったからさ」
そんな話をしているうちに、家の前へと到着する。手前の曲がり角で紅葉とは手を振って別れ、自宅のインターホンを押して待つこと数秒。
ガチャッと開いた扉から中へ入ろうとした僕は、目の前に立っていた人物を見て足を止めた。
「あれ、来てたんだ」
「お邪魔してます♪」
開けてくれたのは
「どうしたの?何か用事でもあった?」
「最近出番が少ない気がしたので……」
「?」
「冗談ですよ。少し2人きりの時間をもらえたらと思っただけです♪」
ちょっと何言ってるか分からない状態になった僕を、白銀さんは腕を引いてリビングへと連れていく。
廊下の奥からこっそりと睨んでいた奈々を無視して扉を閉めた彼女は、先にソファーへ座っていた僕の隣に腰かけた。
「2人きり、ですね♪」
「まあ、そうだね」
ドアにはめ込まれた曇りガラスから奈々が覗いているけど、あれを知らんぷりするのならそう言えるだろう。
それにしても、どうして文句を言ってこないのだろうか。いつもなら割り込んできそうなものなのに。
「白銀さんは何をしに来たの?」
「別に何も。私、瑛斗さんとお話してるだけで、心が安らぐ気がするんです♪」
「まだ取り巻きに相当悩まされてるんだね」
やっぱり、表面上の友達なんて作るもんじゃないね。僕が白銀さんなら、めんどくさくて死ねる。
「いっその事、取り巻きの人にはっきり言ってみたら?」
「そ、それは無理です。傷つけることになっちゃいそうですし……」
「だからって、白銀さんが傷つけられていいとは僕は思わないよ」
「……自己犠牲くらいがちょうどいいんです」
僕には、彼女の言っている意味がわからなかった。
彼女は何も悪いことをしていないのに、まるで自分は罰を受けるべきだからと言われているように聞こえたのだ。
「……あはは。安らぎに来たのに、これじゃ暗くてダメですね」
「笑って誤魔化さないで。言いかけたなら話してよ」
「っ……わかりました。でも、2人だけの秘密にしてもらえますか?」
「もちろん」
僕はそう言って立ち上がるとドアの方へと近付いて、奈々に「いいって言うまで2階にいて」と伝える。
少し不満そうだったけれど、「後で好きなだけ撫でてあげるから」と言うとスキップしながら上がってくれた。
「これで誰にも聞かれないよ」
「ありがとうございます」
小さくお辞儀をした白銀さんの隣に再度腰掛けると、彼女は一息ついてからゆっくりと話し始める。
「以前、瑛斗さんが『これは罪滅ぼしだから』って言ったことがありましたよね」
「授業をサボった日、ネコを仲良しにさせた時だっけ」
「はい」
白銀さんはコクっと頷くと、本当に言ってしまっていいのかという表情のまま葛藤し、そしてついに言葉を放った。
「私はそこに共感したんです、『同じだ』って」
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