第115話
イヴと昼食を共にした日から数日後。
6時間目のホームルーム、全校生徒が体育館に集められた。明日から中間テスト1週間前期間らしく、そのための喝入れのようなものがあるそうだ。
「テストなんて無ければいいのに……」
「
「悪くは無いわよ、学力だってA級だもの。でも、いくら勉強ができても面倒なことに変わりはないわ」
「それは分かるかも。僕もテストは眠くなるから嫌だなぁ」
「……わかってるようでわかってないわよね」
そんな話をしながら、体育館へと入った僕らは、背の順ではなくランク順でクラスごとに整列していく。
こういう時、1番前か1番後ろだと楽だよね。まあ、僕はその後者なんだけど。
同じクラスにF級の生徒は居ないらしく、どちらが前かという争いをすることなく並び終わったクラスメイトたちの後ろへと立った。
「あれ、イヴもこんな後ろだったんだ」
「……」コク
相変わらず無表情だけど、ちゃんと僕の声に反応はしてくれている。彼女は隣のクラスで、立ち位置は僕の右前。クラスで後ろから2番目らしかった。
そういえば僕、イヴが何級か知らなかったんだっけ。この位置だとFかEだと思うけど、こういうのって聞いてもいいのかな。
そんなことを考えているうちに、舞台の上に立った
「ボクの可愛い生徒達、よく集まってくれたね。今日はテスト前週間に入る前日、そろそろ気合いを入れないといけない頃だろう」
そう言うと学園長は舞台から飛び降り、僕のクラスの右側の列、イヴがいるクラスの先頭の生徒へとマイクを手渡した。
あれが清水の舞台だったら大惨事だなぁ、なんて思っていると、マイクを手にした生徒は学園長と入れ替わりで舞台に飛び上がり、カチッとマイクの電源をオンにする。
それと同時にライトアップがより豪華になり、それを反射した舞台上の生徒の綺麗な金髪が、眩しいほどキラキラと輝いた。
「みんな〜!
金髪の彼女がマイクを向けると、大半の生徒が『元気〜!』やら『OK!』と返事をしていた。もちろん、僕みたいなのはただ眺めているだけだけど。
「知ってる人が大半だと思うけど、一応の自己紹介!私はアイドルグループ『
黄冬樹、この名前をどこかで聞いたような気がする。どこだったっけ――――――――あっ。
思い出した、イヴと同じ苗字なんだ。ということは、彼女達は双子の姉妹なのかな。
ノエルが「そして!」と合図を送ると、舞台袖からさらに3人の女の子たちが現れ、間隔をあけて横一列に並んだ。
「
「
「
綺麗な茶髪で無邪気な笑顔がチャームポイントの『あきのん』こと秋野 橙火。
ピンクの髪に幼い顔つき、小さな体に元気いっぱいの『こはるん』こと櫻田 心春。
男勝りな口調と女性的な印象を強く発する容姿を持ち合わせた『なっちゃん』こと夏川 翠。
ファンなのだろう、僕の隣にいた男子生徒が聞いてもいないのに教えてくれた。
舞台にいる4人はそれぞれ違う制服を着ているから、おそらく全員別の学校に通っているのだろう。
ただ、『のえるたそ』ことノエルだけはこの
「「「「
彼女らの挨拶と決めポーズが終わると、体育館は歓声に包まれる。そんなに有名なアイドルなのだろうか、僕は初めて聞いたけど。
「イヴは知ってる?というか、ノエルはお姉さんだよね?」
「……」
反応がない、周りの音で聞こえていないという訳ではなく、意識的に無視されている気がする。
無表情は無表情だけれど、僅かに寂しそうな顔をしたように見えたから。
「どうかした?」
「……」フリフリ
もう一度声をかけると、彼女は首を横に振った。大丈夫という意思表示らしい。
けれど、僕はその瞳から何かを感じてしまった。
アイドルとして舞台で輝くノエルと、僕と同じ暗い場所に立っているイヴとの間にある、見えない壁のようなものを。
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