第109話

5本勝負最終結果


1位 黒木くろき 金糸雀かなりあ・・・ 8点

2位 白銀しろかね 麗子れいこ ・ ・ ・ 7点

   東條とうじょう 紅葉くれは ・ ・ ・ 7点

4位 狭間はざま 奈々なな ・ ・ ・ 6点



 結局、紅葉は決勝で負けて白銀さんと同列で2位になってしまった。

 1位は勝ち上がってきたカナで、もちろん約束の唐揚げ丼引換券は彼女の手に渡った。だけど。


「これが優勝賞品……?いらないんですけど……」

「じゃあ私がもらうわ!」


 という流れで、結局紅葉のものになった。どうやら、白銀さんとカナは何か他のものが手に入ると思って、あのゲームに参加したらしい。

 ぬいぐるみが欲しくない2人にとって、唐揚げ丼引換券は普通に唐揚げ丼に変えられるだけの券だからね。


「私たちは、何のために頑張って……」

「瑛斗先輩を言いなりにできるかと思ってたのに……」


 2人はそんなことを呟きながら、重そうな足取りで帰っていった。僕を言いなりにできる権利をあげてもいいけど、その代わり一生養ってもらわないとね。

 その条件なら、料理も洗濯もなんでもやるよ。家事は嫌いじゃないし。

 まあ、何はともあれ一件落着。無事に紅葉は全種類の引換券を手に入れ、その日の放課後にはまん丸のデブ猫ぬいぐるみを抱えて帰路についていた。


「よかったね、紅葉」

「ふふっ、念願のネコライコラボぬいぐるみ……」


 よほどこの猫が好きなんだね。もう僕の家の前なのにずっとにやにやしてる。

 そんなに喜んでくれるなら、今日1日司会やら審判やらを頑張った甲斐があったよ。


「じゃあ、これでもう引換券集めは終わりだね」

「……何言ってるの?」

「ん?」

「このぬいぐるみ、表情が3種類あるのよ。全部集めるまで続けるに決まってるでしょ?」

「でも、もらった引換券は1枚だけだよね?」


 どうやってあと2枚集めるつもりなのか。そう聞いたら、彼女はさも当たり前のように言った。


「決まってるじゃない。また奈々ちゃんに挑んで奪い取るだけよ」

「僕はもう付き合わないよ、疲れるんだもん」

「私たち、友達よね?」

「友達だからって、なんでも手伝うと思ったら大間違いだよ」

「……ちっ」


 舌打ちしたよ、この人。そこまでして全種類コンプリートしたいのかな。僕も猫好きだけど、このデブ猫にはあまり魅力を感じないんだよね。


「面倒なことになる前に、奈々に分けて貰えるよう僕から頼んでおいてあげるよ」

「それは本当……?」

「嘘ついても意味ないよ。失敗したらごめんだけど、奈々のことだからおもちゃでも買ってあげたら言うこと聞くだろうし」

「……扱いが子供ね」

「奈々は僕からしたらいつまでも子供だよ」

「あなたも子供でしょうが」

「紅葉にだけは言われたくないかな」

「どういう意味よ!」


 プンプンと怒り始める紅葉は、僕が「小さいからどっちが紅葉か分からなくなりそうだよ。ね、紅葉」とデブ猫ぬいぐるみに向かって言ったら、沸点に達したのか思いっきりつま先を踏まれてしまった。

 ちょっとした冗談だったのに、そんなに怒ることないよね。紅葉ったら、怒りっぽいんだから。


「じゃあ、また明日ね」

「……ふんっ!」


 結局、別れの挨拶もせずに彼女は歩いていってしまった。これは引換券を貰わない限りは許して貰えないかもしれないなぁ。

 仕方ない、どうしても無理な場合は土下座でも靴舐めでもする覚悟でいよう。

 でも、相手はあの奈々だ。また一緒にお風呂とか言われるかもしれないし、寛大な心を準備しておく必要がありそうだね。

 インターホンを押して、夕食の準備のために先に帰ってくれている奈々に扉を開けてもらう。

 よし、覚悟完了。奈々がどう出てきたとしても、この一言で何とかなるはずだよ。


「ただいま」

「お兄ちゃん、話は聞かせてもらった!唐揚げ丼引換券が欲しければ、私とお風呂に―――――――」

「その前にお兄ちゃんからお話があります。こっちに来なさい」

「…………はい」


 僕の真剣な表情(偽)を見て何かを察したのか、水に濡れた猫のようにしゅんとなる彼女。

 僕はその手を引いてリビングに入ると、奈々をソファに座らせた。


「奈々、ちょっとボロ出しすぎじゃないかな?」

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