第101話
「き、聞き間違いかなぁ?今、じゃんけんって聞こえたような……」
「言ったわよ、じゃんけんって」
「ぐふっ?!」
「そ、そんなわけないですよ。まさか、最後の最後でじゃんけんだなんて……」
「だから、じゃんけんだと言っているでしょう?」
「うっ……」
「いやいや、ここまで戦ってきて結局運ゲーだなんてこと……」
「運ゲーでは無いわ。でも、じゃんけんはじゃんけんよ」
「ああ……」
客観的に見て、3人の気持ちもわからなくはない。いくらなんでもじゃんけんは運任せすぎるよね。
拳と聞いてボクシングだと早とちりしたのも悪かったかもしれないけれど―――――――――いや、拳の勝負と聞いたらボクシングを思い浮かべるのが普通だよね。やっぱり悪いのは紅葉だよ。
「安心しなさい、ただのじゃんけんではないわ」
「紅葉、説明してくれる?」
「ええ、任せなさい」
彼女がパンパンと手を叩くと、グラウンドの隅の方から、すごい勢いでホワイトボードがやってきた。運んできてくれたのは――――――学園長だ。
「どうして
「ボクも少し観戦したくなっただけだよ。我が校の精鋭たちが勝負するなんて、なかなか間近で見れるものじゃないだろう?」
学園長がそう言うと、隣にいた紅葉がドヤ顔で胸を張って見せる。あまりそういうポーズはしない方がいいと思うんだけどね。胸がないのがバレちゃいそうだし。
「
「ありがとうございます、学園長。さすがに仕事が早いですね」
「はっはっは!これでもボクは権力のある人間だからね、知り合いの職人に急ぎで作らせたんだ」
「いくらかかりましたか?」
「金は要らないよ。楽しませてくれればそれでいい」
声高らかに笑う学園長に、彼女は「お言葉に甘えさせてもらいます」と頭を下げる。
それにしても、紅葉ってこんな丁寧な対応もできたんだね。なんだか紅葉じゃないみたいで不思議な感じがするなぁ。
「さあ、これが約束のブツだ」
「有難く使わせてもらいますね」
彼女がそう言って受け取ったのは、ノートの半分ほどの大きさのカードの束。グーやチョキが書かれているのが見えるから、パーもどこかにあるのだろう。
普通のジャンケンではないというのは、カードを使って行うという意味だったんだね。
「じゃあ、『アルティメット・ジャンケン』の説明を始めるわね」
「ネーミングセンス皆無だね」
「何よ、文句があるって言うの?」
「……まあ、紅葉らしいからいいかな」
僕が口を挟んだせいか、彼女は結局『ワイルド・ジャンケン』に改名していた。
まあ、少し幼稚さが抜けたってところだね。どっちにしてもあまりかっこよくはないけど。
「勝負は一対一で行うわ。組み合わせはさっきと同じ……リベンジよ、
「しつこい人ですね、そろそろ諦めたらどうですか?」
「諦めないわ!あなたを1位から引きずり下ろすまでは!」
「……ふふっ、せいぜい頑張ってください。圧倒的に不利な立場で」
「……」
「……」
2人は睨み合い、そして互いに顔を背ける。紅葉はそのままホワイトボードへと歩み寄ると、ストッパーを外してくるりと回転させた。
「ルールを説明するわ」
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