003 リベル、目覚め
僕が起きた後、色々あったが取り敢えず帰宅する事になった。
王立学園の事に関してはあの爺さん、ドルド司教だったか…が折を見て手紙を寄越すと言っていた。正直、録音スキルとかいうよく分からないものを持ってる僕は、凄い剣術使いの兄さんを取り込むついでの奴なんだろうけれど。もし本当に推薦してくれるようだったらそんな事気にせず入学させてもらうつもりだ。
「リベル、少しの時間とは言え倒れていたんだ。誕生日はまた明日ゆっくりとお祝いしてやるから、今日は部屋でゆっくりしていなさい。自分のスキルと向き合うのも良いと思うぞ。」
「ありがとう父さん。じゃあ部屋にいる事にするよ。別に誕生日は気にしてないから、あー、明日お肉が食べられればいいかな?」
「はいはい、じゃあ母さん美味しいもの用意するように頑張るわね?」
「なら、ボクは父さんと一緒に、狩りにでも行こうかな?ね、父さん」
「グレイがいるなら何だって狩れそうだな!リベル、明日は楽しみにしてるといいぞ、はっはっは!」
「や、だから、そんなに張り切らなくて良いって。無理しないでよね」
やけに張り切っている家族に苦笑しながらも、自室に向かう。
自室に着いた僕はベッドに腰かけ、試しにスキル『ステータス』を使ってみる。
「うおお。ちゃんと出せる……結局何なんだろうこれ」
――――――――――――――――――――――――――――――
リベル・デイルート Lv.3
HP:83/83 MP:17/17
保有:ステータス 言語理解
――――――――――――――――――――――――――――――
目の前に表示されたウィンドウに並ぶ文字列を見て唸る。
感覚で使えることは分かったがそれ以上は分からない。右クリックとかで詳細表示されないだろうか。と思った途端
――――――――――――――――――――――――――――――
リベル・デイルート 男性 5歳
Lv.3/100 NEXT.328/400
HP:83/83 MP:17/17
筋力:D- 耐久:E+
敏捷:D+ 魔力:E
保有:ステータス―― ステータス表示 【1/1】
スキル統制 【1/5】
言語理解 ―― 言語理解 【5/10】
言語出力 【3/10】
大魔力接続 【3/10】
録音 ―― 録音 【1/5】
再生 【1/5】
――――――――――――――――――――――――――――――
なんか出てきた。
Lv.3か…まあ僕は今5歳ですし?全然伸びしろあるっていうか、100いくっぽいし、焦ってないし
や、待て。MPが17って何これ?魔法チートは
基礎力が低いのも年齢のせいにしておいておくとして、問題のスキルである。
ステータスは今使っているこれだろうし、分かる。
言語理解は、前世が前世だし持ってても不思議じゃない、のかな?これも何となく分かる。
大魔力利用と録音が分からない。
大魔力っていうのはこの世界に満ちている魔力の事で、自然にあるもの、それこそ空気みたいに当たり前にあるものだっていうのは本で読んだ。
でも、人間は自分の中にある『
そしてずっと気になっていた録音スキル。
この中には録音と再生ってあるけど、もうこれただのボイスレコーダーだよね。
熟練度っぽいものはどっちも1で伸びしろはあるかもあるかもしれないけど…マスターしてもどうにかなるのやらさっぱりだ。
録音したものがどこに保存されるのかも謎だし、そもそもどうやって音を録るのかも謎。マイクでも出てくるのだろうか?
ともかく使ってみようかなと、意識を自分の中にあるらしい録音スキルに集中してみる。
……ステータスはすぐ使えたのに、録音スキルは何故だか使えない感じがある。
アプリの立ち上げにでも時間が掛かっているのだろうか。
少し待ってみても特に変わりはなかった。
うーむ、そういえばラノベでイメージが大事とか宣っていたけど、これにも適用されるのだろうか?
試しにそういうアプリみたいなものを頭の中に浮かべる。機能が少ないから例の赤い丸と停止の四角、再生ボタンの三角。ついでに一時停止のあのマークが並んでいるところをイメージしてみる。
あ、起動した感じがする!やっぱりイメージって大事なんですね!ありがとう異世界転生の先人。
ふと、表示しっぱなしだったステータスウィンドウを見ると、その半分位がイメージした録音アプリのような画面になっていた。
起動に時間が掛かっているとか言ってたがあながち間違いではなかったのかも。
早速録音を試してみようかと思うと、何を録ればいいのか分からなくなった。
そうだな……取り敢えず自己紹介でもしてみるか、元気な感じで。赤丸のボタンを押す。
「初めまして、僕はリベル・デイルートです!5歳です!」
……なんか恥ずかしくなった。
慌てて四角のボタンを押して停止させる。
本当に録れたんだろうか。怪しいが取り敢えず再生してみる。
『初めまして、僕はリベル・デイルートです!5歳です!』
おお!本当に録れている!ただ、やっぱりいつも自分の聞こえている声とは違う。前世でも自分の声を録って聞いて事をしたことあったから分かるが、初めて聞くと違和感を覚えるものだ。今の僕の声は全然聞いてて苦じゃないから良いな。
『初めまして、僕はリベル・デイルートです!5歳です!』
…自分で録っておいてなんだが5歳児の声で自己紹介しているの可愛いもんだな……
この声で自分好き勝手なこと話して聞けるってだけでも儲けものかもしれない。何かに目覚めてしまうかもしれない。
『初めまして、僕はリベル・デイルートです!5歳です!』
ふふ…ちょっと面白くなってきた。次は何を録ろうか
「――リベルさん?開けますよ?」
母さんがノックもせずに入ってきた。
「っ?!か、母さん?どうしたにょ?」
普段しっかりとノックをして僕の返事を聞いてからじゃないと開けないような母さんだが、何かあったんだろうか?
「…あらあら?誰もいないわねぇ。なんだかリベルさんが、自己紹介してるような声が聞こえたものですから…てっきり」
「ん?てっきり?」
「いえいえ、何でもないんですよ。リベルさん。どうして一人で自己紹介していたんですか?」
「えっ?!…あ、ああ。僕のスキルの中に録音って言うのがあったでしょ?それを試していたんだよ。うん、それだけだよ」
母さんって異様に勘が良いからな…なんか少しだけ
「?あのあの、リベルさん。そのロクオンというのは自己紹介が必要なスキルのなのですか?」
…まさかばれているっていうのか?!邪な気持ちっていっても少しだけ、少しだけなのにッ!
「違うんだ母さん、自己紹介は必要じゃないんだ。必要なのは僕のこの声だったんだけど、別に変なことに使うから必要ってことじゃないし。そうこれは初めて使ったスキルだし事故ってやつかな?ね?母さん?ね?」
「ええ、ええ。リベルさんがなんだか必死なことだけ、伝わりましたよ?」
聖母のような笑みでこちらを見てくる母さんに、もう僕は混乱するだけだった。
「そうそう、リベルさん。そのロクオンというスキルの事、明日にでも聞こうとしていたのですけれど、今聞いてもいいかしら?」
「え、や、母さん。別に録音はただ録音して、あと再生もできる位のスキルだよ?」
「それそれ。リベルさんは分かっているようですけれどロクオン?って何なのかしら?あと、再生?ですか?元に戻るのかしらね?」
……どうやらこの世界には『録音』も『再生』もないようだ。
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