第50話 それでこそ相棒
「それで、具体的にボクらはどう動いたら良いのかな?」
改めてグレースが聞いた。
「ビョルクのおっさんは近いうちに、領主の城に出向くことになってるんだ……まあ、俺が脅して行かせるんだが。そこで、あんたらにはおっさんに先んじてライムホーンの領主に挨拶してほしい。そうすりゃ向こうも泊まる部屋くらいは用意してくれるはずだ」
「領主への挨拶はしない方が不自然だから問題ないけど、その後はどうすれば良いのかな?」
「あんたらは見たところそこそこ腕が立つだろ。だから、おっさんが領主の城を訪れたら城の警備兵を適当にたたきのめしたあとでビョルクのおっさんを人質にとってくれ。そうしたら俺たちが仲間を連れて城に忍び込んで領主から神剣のありかを聞き出すからよ」
軽い調子でシグルが言った。
「城に潜り込んだ上で警備兵をたたきのめしてビョルクさんを人質に取るか……聞いているだけだとずいぶんと簡単そうだね」
皮肉を込めてグレースが言った。
「おいおい、俺は楽な仕事だなんて言った覚えはないぜ」
シグルが笑う。
「ご、ごめんなさい……これもお父さんのためなんです……」
申し訳なさそうにエリンが言った。
「神剣のありかを聞き出した後はどうするんです?」
アルヴァンが聞いた。
「そんなもん決まってんだろ。俺が神剣を持って火山に行ってヴァーグエヘルをぶった切るのよ」
「ああ、ドラゴンは火山に住んでいるんですか……」
そう言ってアルヴァンは森からも見える山の頂の方を見た。
「何だ、知らなかったのか? ドラゴンを切っちまえば何もかもが丸く収まってめでたしめでたしさ」
「プランはだいたい理解できたよ。では、領主の城で会おうか」
グレースが言った。
「おう、よろしく頼むぜ」
そう言うとシグルは背を向けて去って行った。
「よ、よろしくお願いいたします……」
エリンも深々と頭を下げると工房に向かって走って行った。
「さて、どうしますかのう?」
近くの木の枝に止まって様子を見ていたローネンが言った。
「あら? いましたの?」
「だから! わたしをいじめるのはやめてほしいですのう!」
ヒルデの言葉にローネンは憤慨した。
「どうしたものだろうねえ。彼らの計画に従ってもいいんだろうけど……」
グレースは言葉を切ってアルヴァンに目を向ける。
「面白くないですね」
きっぱりとアルヴァンが言った。
「やっぱりそう思うかい?」
にやりと笑ってグレースが聞いた。
「ここまで来たんだから、壊してみたいよね」
再び火山の方に目を向けながらアルヴァンがつぶやいた。
「ボクとしてはもうちょっと穏便なやり方でこの都市を乗っ取りたかったんだけどね。獣人は強力な戦力になるし……でもまあ、君がそんな目をしているのを見ると、ボクとしては協力しないわけにはいかないな」
期待に胸を躍らせているアルヴァンを見るとグレースは優しくほほえんだ。
「ぬうう、吐き気を催す気配が再び……」
ヒルデが口元を押さえた。
――じゃあ、どうするんだ、相棒。
フィーバルが楽しそうに聞いた。
「そうだね、神剣って言うのも壊してみたいし、シグルさんが神剣を手に入れたら、シグルさんを壊して、その後でドラゴンを壊しに行こうかな」
アルヴァンが言った。
――それでこそ――
「それでこそアルヴァン様ですわ!」
フィーバルの言葉を遮ってヒルデが高らかに言った。
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