10話
メケドは、少女の中の幻想を壊したかった。
神というフィルターが掛かっている限り、少女は、決して自分を見ない。
自分が神ではないと証明するには、どうすればいいのか。何日も考え続けていた彼は、名案を閃いた。
手始めに、奴隷を彼女の世話役にするよう、部下に命じた。信心がなく、できるだけ年の近い奴隷を選ぶよう言いつける。
それからは、少女と奴隷が親しくなるのを待つ。気が合わないようなら、別の奴隷に変えればいい。
少女と奴隷の様子を、メケドは逐一、部下に報告させた。
計画は、順調だ。そろそろ頃合いだろう。
もはや日課となった少女からの祈りを、メケドは途中で遮った。
「もう、お前の祈りは受け取れない」
「……神様?」
少女の顔に、怯えが走る。震える声が、不安を示している。彼女がこの城に来て、初めて見せた、負の感情だ。
手応えを得たメケドは、少女の心をえぐる言葉を放った。
「お前の祈りには、邪念が混ざっている」
「そんなはずはっ」
「神を否定するか?」
「いいえ、私はあなたを信じています」
「では教えてやろう。お前は、神を信じぬ者と交友を持ったな? そいつは魔を飼っている。だから、お前の祈りは穢れたのだ」
「あっ」
幻想を壊すだけなら、神を消す必要はない。
少女を絶望させれば、事足りるのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます