8話
「おはつ、に、おめ、かかります。おれはロルグル、です」
ロルグルは、慣れない敬語を懸命に使い、胸に手を当てて礼をした。
天使のように可憐なこの少女は、国王への貢物とはいえ、客間で過ごすような身分なのだ。奴隷の自分とは、本来なら、口を利くこともなかっただろう。
ロルグルの拙い敬語に嫌な顔ひとつせず、少女は柔らかな笑顔を返してくれた。
「こんにちは」
「あ、あなたの世話係に、なる、なり、ます。なんでも言って、ください」
「あなたはシスターなのですね。ところで、ロルグルとは何ですか?」
自分がシスターとは、どういう意味だろう。
ロルグルには、少女の言っていることが、理解できなかった。それとも、自分の自己紹介の仕方が、悪かったのだろうか。
ロルグルも、シスターの詳しい区分は知らないが、女性に使う言葉であることは、間違いない。
「おれはシスターじゃない、です」
「私のお世話をしてくれるのは、シスターでしょう? それより、ロルグルとは、何のことですか?」
「ロルグルは、おれの名前、です。あなたの名前は、なに、ですか?」
「私の名前?」
少女は、不思議そうに、首を傾げた。なぜ名前を訊くのか、とでも言うように。
高貴な人の名を訊くのは、無礼だったかもしれない。ロルグルは、慌てて謝った。
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