2話

 ある日、娘は、酷い腹痛に襲われた。

 今までに感じたことのない、下腹部の激しい鈍痛。自分の体は、どうなってしまうのか。

 恐怖と痛みを抱えながら、彼女は布団の中で丸くなり、ただただ神の救済を待った。


 翌日、娘の股から血が滴り始めた。

 それを見たシスターが、真剣な眼差しで娘を見つめる。そして、これは神が与えた試練なのだと言う。


 神を本当に信じることができれば、娘の祈りは神に届き、出血は止まる。もし疑えば、神は娘を見限り、血が止まることはない。

 心から神を信じているならば、何も怖がることはないと、シスターは教えてくれた。


 神は、人間の弱さを、よく知っている。弱さは魔を招き、邪念を生む。祈りに邪念が混ざれば、神の神聖が失われる。

 だから神は、人に試練を与え、乗り越えられた者の祈りだけを受け入れるのだ。

 試練を与えられるということは、これまでの祈りが神に認められた証。邪念に満ちた祈りになど、神は、見向きもしない。

 だから正しく祈りなさい、とシスターが忠告してくれた。


 衣類を汚さないよう応急処置をされた彼女は、布団の中で、ひたすらに祈り続けた。断続的な鈍痛に耐えながら、ただ神を愛し、神に仕えることを誓う。


 痛みは昨日より増したが、彼女にはもう、恐怖はない。

 彼女は、信じているからだ。神は、必ず救ってくれるのだと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る