04)「第一回:初心者さんに聞いてみた! 五等級冒険者アイリス・マッケンジーさん」
───まずは自己紹介をお願いいたします。
アイリスよ。今年の春、冒険者訓練校を卒業して冒険者になったの。学費を出してくれた村の稼ぎ頭になるために、少なくとも三等級まではいくつもりよ。
冒険者訓練校では成績良かったのよ? 講師の先輩冒険者からは筋がいいから依頼をたくさんこなしていればすぐに三等級になれるってお墨付きをもらったんだから。あと、どこの冒険者ギルドに所属するのかってのも重要よね! 私の所属してるところは……
───それよりも「
あ、うん。ところでさ、男に貢ぐって冗談じゃないと思わない? 私が男から貢がれることはあっても、私から男に貢ぐなんて絶対ありえない。それは私のプライドの問題なのよ。
だから、胸を揉ませることを対価にしようと思ったの。
───(意味がわからない)どうして、その、ええと、胸を触らせそうと?
確かに「私の乳はそんな安いの?」って思うところもあるけれど、私にとって金品を出して手元から何かが失われることよりも、減りもしない胸を触らせることのほうが何倍もマシなの。そういう価値観なのよ!
そもそも「
───して、その結果は?
別に口止めされてるわけじゃないから言うけど、まず前提が間違ってたわ。「
───え!? 驚愕の新事実ですよ!
彼女、背が高いし胸もないから男か女かパッと見だとわからないのよね。女だとわかって私は焦ったわよ。女に私の胸を触らせても許可なんてもらえないってね。
だけど、そんなことは関係なかったの。彼女は私の胸をこねくり回しながら「この胸についてのエピソードは?」って聞いてきたのよね。
───あの人喋れるんですね……。で、そこは多くの冒険者達が語るとおりエピソードが必要だった、と。
えぇ。仕方ないから私の胸のことをいろいろ話したわよ。訓練校でも模擬戦でわざとぶつかってきて胸に触ってくる男がいたとか、今の冒険者ギルドのギルドマスターが「そろそろ触らせてくれてもいいだろ」とか近寄ってくるとか。
───冒険者協会に訴えてそんなギルドは潰してもらったほうがよろしいかと。むしろこの話が「迷宮ウォーカー」の誌面に掲載されても大丈夫でしょうか?
いいわよ、どうせもうあのギルド抜けるし。【燦々たる二つ首のトカゲ】っていう冒険者ギルドのトニオってギルマスね。あれ、女ギルド員に手を出す最低の男だから。
───ありがとうございます。すべての冒険者の味方、ソロ冒険者のバイブルを目指す本誌にてそのような愚劣を見過ごすわけにはいきません。徹底取材して真実を掲載させていただきます。
そんなことより
───話を聞くのに揉む必要あります?
そうすることでモノからエピソードという「記憶」を見せてもらってるって言ってたわ。
───
わからないわ。だけど彼女、あの薄暗い人の来ない玄室で薄っぺらい本を執筆しているみたいなの。私の想像だけど、その本の参考になるネタを集めてるんじゃないかしら。
───水の絶望迷宮にあんな大仕掛けの罠魔術を張り巡らせておいて、執筆のネタ集めですか?
私の想像よ? 一番食いついてきたのは従兄弟の子供の話。この子が母親をなくして寂しくしててね? 優しくしてあげたら私の胸に甘えてきた話なんだけど。彼女、必死に羊皮紙に羽ペン走らせながら「尊い」とか「姉ショタ」とか「次のコミケに間に合うかしら」って言ってたわね。
───コミケとは?
さぁ。私にはわからないわよ。魔導士界隈の専門用語なんじゃない?
───本誌でも調べておきます。ところで「
それはわからないし、きっと彼女は全身全霊をかけてその秘密を守るでしょうね。絶対にバレたくない秘密を持っている女の鉄壁の守りを感じたわ。下手な詮索はしないことをおすすめするわ。
───なるほど。ところで私もその胸を触って確認した上で記事にしたいので、よろしいですね?
あんたからの対価がなにもないから、だめに決まってるでしょ!
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