こちら、陰陽相談所~"妖怪"は目に見えなくてもちゃんと存在するのです☆~
日暮ミミ♪
序
――この世は,目に見えているものばかりが存在しているわけではない。
それは時に「妖怪」として姿を現し,人間に
また逆に,
――当事務所は,目に見えないものによる
****
――それは
「――堀田さん,……ちょっといいかな?」
アルバイト先であるカフェでの勤務中に,店長の
「はい。何ですか?」
美咲はレジで女性客三人グループの会計の対応をしていたが,手が
大橋店長はまだ二十五
顔がイケメンで(本人
ただ,美咲には全然その気はないのだが。
今は恋愛よりも,まず生きていくことが大事なのだ。恋愛
――それはさておき。
(あたし,なんで呼ばれたんだろう?)
美咲は大橋店長の後ろで,こっそり首を
働き始めて一年,自分では
少し茶色がかっているロングヘア―(ちなみに
それに,仕事だって
お客様とトラブルを起こしたことは一度もないし,他のスタッフとの人間関係も良好だ。
だから,マイナスな原因で呼ばれる理由に全く心当たりがないのだが……。
気になったのは,彼の表情だった。
困っているような,それでいて美咲のことを
(この状況って,普通に考えたらクビ宣告だよね……。どう考えても)
たとえ本人に思い当たるフシがなくても,他人の目からは分かる
美咲は覚悟を決めた。
どうせ解雇を言い渡されるなら,言われる
それに……。美咲は高校まで
勝負の世界に身を置いていた者として,
「――で,店長。あたしを仕事中に呼んだ用件って何なんですか?」
やっと人気の少ない
「えーっとね,
「は?」
"やっぱりな"と思うのと同時に,美咲は
そんな遠回しに言わなくても,言わんとしていることは分かっているのだ。
「申し訳ないけど,今月いっぱいで辞めてもらえるかな?」
「つまりクビ……ってことですか。解雇される原因は?」
どんな理由があるにしろ,ちゃんと話してもらわないことには
「堀田さんに悪いところがあったとか,そういうことじゃないんだ。会社側の都合っていうのかな。人員
「要するに,"リストラ"ってことなんですね」
美咲の中では最悪のパターンだった。
自分に
でも,会社の都合によるリストラとなると,もう「仕方ない」と
(でも,なんであたしなの?)
ふと
リストラとは,
「――まあ,あと二週間くらいあるし。その間はキチンと働いてもらって,次の就職先はゆっくり探せばいいよ」
("ゆっくり"?
美咲は高校を卒業してから,
実家からの仕送りはほとんどなく,この店でのアルバイトの収入だけで生活していた。そのために自分の体力の限界ギリギリまでシフトを詰め,この一年やってきたのだ。
その収入が,今月で終わってしまう。来月一〇日に給料が振り込まれたら,それで最後。次の仕事だって,見つかってもすぐに収入があるわけではない。
(もう,"あと二週間"なんて
アルバイト従業員をリストラするのに,次の就業先も世話してくれないような
「店長,もう仕事に戻っていいですか?」
「ああ,そうだね。――仕事中に呼び出して悪かったね,堀田さん」
美咲は「いえ」と取り
****
――
前日の固い決心が
「ハローワークもあんまりアテになんないしなあ……。ネットで探すのが一番手っとり早いよねえ」
美咲はあらゆる求人情報を
できることなら,自分の特技を仕事に
実は彼女,中学時代からパソコンに
ところがそれはうまくいかず,生活のためにとりあえず始めたカフェでのアルバイトだけで手いっぱいになり,そちらの方はすっかり諦めかけていたのだった。
とはいえ,カフェでの仕事もおざなりにしていたつもりはなかったのだが――。
「――ん? よろず……相談所?」
美咲がその求人情報に目を
『よろず相談所 アシスタント募集
日給
PCのスキル有りの人・武道有段者優遇
――まさに,美咲のためにあると言っていいほどの好条件である。
ただ,この内容だけでは
さしずめ,「
けれど,美咲にとっては"
「こういう職種なら,応募する人少ないだろうし。簡単に採用されそう♪」
美咲の指は,ためらうことなくキーボードの上を
名前・現住所・連絡先などの必要事項と,特技として〈PC操作・実戦空手三段〉と打ち込み,求人に
まるで誰かの意志で動かされているかのように,一連の動作は
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