異世界×プロジェクトマネジメント

第103話 プロジェクトで得られるもの

エルザスとジュドー、ヒロに迫るゾームに対して、魔法が放たれたのだ。

ヒロの後ろから声が聞こえる。

「プロジェクトマネージャーよ、困っているようだな」

「え？」

ヒロはパニックのなか、後ろを振り向いた。

そこにはランペルツォンと、彼が率いる王国兵士団がこちらに向かっている姿があった。

「プロジェクトマネージャー・ヒロを助けに来た。

　間に合ったようだな」

「え！？でも、兵は動員できないんじゃなかったんですか！？」

ヒロは増援の嬉しさよりも驚きが勝っていた。

隣国への対応や予算の都合もあり、兵団を動かすことは難しいとされていた。

だから、ヒロがプロジェクトでゾームと戦っているのだから。

「これは、ボランティアだ。

　私がリーガル殿に掛け合い、国家の危機として一時的に兵団を動かす許可を得た。

　さぁ！かかれ！

　ゾームを食い止めろ！」

ランペルツォンは兵団に命令した。

ヒロは、まだ混乱している。

「ありがとうございます…なぜ…？

　助かりましたが、まだ状況が理解できてなくて…混乱しています」

「エルザスの存在が未知数であることを、何度もヒロ殿は口に出していた。

　何か少しでも、ゾーム討伐を成功させるため、私にできることはないかと、ずっと考えていたんだ。

　そして、リーガルに前々から掛け合っていたのだ。

　説得に時間がかかったので、ギリギリになってしまってすまなかったな」

「あ、ありがとうございます！

　本当に、本当に助かりました！

　ジュドーさんもメグさんも、私ももうだめかと…」

「ヒロ殿。

　あなたの知識はこの国に必要なものだ。

　正直、ゾームの討伐もあるが、ヒロ殿を死なせたくないという思いもあった。

　あの、けちなマーテル殿もリーガルの説得のため、魔道具を国にいくらか献上してくれた」

「ええ！

　マーテルさんも！？」

「エルザスにヒロがやられるかもしれない。

　そう言うと、マーテルも協力してくれた。

　大切なビジネスパートナーを失うわけにはいかない、と言ってたな」

ランペルツォンの横に、長身の女性が立っている。

よく見ると、要件定義のたびに一緒に出たサレナだ。

「そう、みんなあなたに興味深々ってわけ。

　私も、あなたの関連の仕事ならもっと面白いことできそうだし」

「サレナさんも、どうして！？」

「同じ、ボランティアよ。

　分かってる？

　あなた、この国を変えそうな事業をやってるのよ？

　王族も、あの大魔導士ケルンだってあなたに着目してる。

　そんなリーダー、捨て置けないでしょ」

「そういうことだ。

　ヒロ殿が率いてくれた。

　あなたが導いてくれた。

　だから、ここにみんな、力を合わせに来たんだ。

　では、そろそろ私も加勢するぞ」

ああ、なんとありがたいことなのか。

ヒロは思う。

プロジェクトの成功は嬉しい。

プロジェクトが完遂できた時の充実感が好きで、ヒロはプロジェクトマネージャーを生業にしてきた。

だが、プロジェクトの達成感の他に、大きなものが得られる。

仲間。

信頼関係。

時に、難しいプロジェクトをこなしたメンバーとは戦友と呼べる仲になる。

このゾーム討伐プロジェクトでは、予想以上の戦友ができているらしい。

こんな自分のために、命を懸けてくれるメンバーがいる。

これを信頼と呼ばずしてなんと呼ぼうか。

ヒロは、喜びに満ちた。

同時に、ヒロの中で何かがはじけた。