第102話 プロジェクトの失敗

プロジェクトの失敗。


ここまでのリスクは考えられなかった。

これまで尽力してくれたプロジェクトメンバーを、見捨てるなんて。

しかし、どうすればよいか分からない。

魔力が無く、女神ファシュファルにも声は届かない。


絶望。


吐き気。

ヒロの目に涙がこぼれた。


エルザスが無慈悲に言い放つ。


「じゃあ、さっさとお前らを食っちまおうか。

 前はよくやってくれたな、魔法使い。

 痛かったぜ~。

 お前も、兄弟と同じように食べてやるよ!」


「死ぬのは、お前だ!」


メグが言い放った。

と、同時にエルザスがメグに、他のゾームはジュドーに、一斉に襲い掛かかる。


メグは強い魔法を唱えようとするも、エルザスの糸を避けることに必死で、詠唱の短い下級魔法で対応せざるを得ない。

魔法使いが前衛なしに一人で戦うには、エルザスは相性が悪すぎる。

防戦一方、まさにその言葉通りだ。


ジュドーも、対するゾームの数が多すぎる。

攻撃を避けた先にゾームがいる。

やむを得ず件で攻撃を防御するが、衝撃が体に響く。


「ぐうっ!」


ジュドーから、うめき声が漏れる。

キラーマンティスにやられた傷が感知していないのだ。

激痛に耐えながら戦っている。



「どうすれば…どうすれば…!」


ヒロは必死で考える。

最後の最後までプロジェクト目的を達成する方法を考える。


結局思いついたことは、前と同じだった。


「エルザス!ゾームども!

 キラーマンティスを消したように、お前らも私の魔法で消し去ってやる!」


おとりである。

正直、先のことは考えてない。

ただ、自分に引き付けて、逃げる。

とにかく時間稼ぎしか思いつかない。


だが、エルザスにすぐに見抜かれた。


「はぁ?

 どうせお前魔力ないんだろ?

 俺を消せるなら、もう消してるだろうからな!」


「そんなことはない!

 仲間を巻き込むから手加減しているが、この辺一帯を消し炭にすることだってできるんだぞ!」


エルザスがあきれたような目をした。


「お前、弱いくせに目障りだな。

 おい、子供たち、そいつを食え」


エルザスがゾームに命令した。

ジュドーの周りにいるゾームの内、2体がヒロの方へ向かってくる。


たった2体かしか引き離せない。

これでは時間稼ぎにもならない。


「ヒロ!」


ジュドーとヒロが声をそろえて叫んだ。

ジュドーが、すぐにヒロの元へ向かおうとする。

メグも攻撃を避けながら、ヒロを守ろうと魔法を放つ。


だが、それは隙である。

敵はその隙をついてくる。


ヒロの方を向くジュドーへゾームの鋭い足が襲い掛かろうとしている。

魔法を放った直後のメグへ、エルザスは糸を放とうとしている。


ジュドーも、メグもやれれてしまう。

ヒロには、スローモーションに見える。

諦めたくない。だが、もう何も思いつかない。


急に、そんなヒロの目の前で爆発が起きた。


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