第71話 試作品

そして、次の満月が三日後に迫った。

十中八九、ゾームは襲ってくるだろう。


ゾーム討伐の仕組みとしては、試作品が出来上がった。


試作品となる兵器が3基。

1メートルほどの鉄の矛とを搭載した、高さ1.5メートルほどの兵器だ。

木材と石で作られた台座。

その上に鋭い矛、ゾームが吐き出す糸を防ぐためのシールド、箱に収まった魔道具がついている。

台座のおかげで自立する。

重いので、運ぶには大人二人で運ぶ必要があるが、運べなくはない。

ゾームの位置に合わせて移動できるよう、軽量化も図った結果だ。


ランペルツォン、メグ、マーテル。主にこの3人が設計を行い、建築ギルドや商工会の協力を経て完成した。


ただ、試作なので3基しかない。

ゾームは何体で来るかは分からない。

前回は15体だったが、増えるかもしれない。


そう考えると、3基では足りない。

兵器1基で同時に討伐できるゾームは一体のみだからだ。


足りない兵器を補うため、前回の満月の夜同様、討伐隊が必要であった。

ジュドーに指揮をとってもらい、討伐隊を引き続き訓練してもらった。

メグやジュドーの戦闘力が生かせるよう、彼らとの連携も考慮したトレーニングを行ってもらっている。


ヒロとレインは、ギルドの他の業務がある中で、プロジェクトマネジメントを行ってきた。


結果的に、メグには討伐隊の訓練と兵器開発と両方のタスクがあったので、最も忙しかったに違いない。

しかし、メグは兄の仇、エルザスを探すカギとなるゾーム討伐に懸命に取り組んでいた。

ヒロは、とても感謝している。


次のゾームの襲撃において、ゾーム討伐の仕組みを試す。

これは、プロジェクトの成果を測る大きなポイントだ。

設計、構築で完成した試作品をテストする。

このプロジェクトが意味あるものだったのか。それが分かる瞬間である。


ヒロは、緊張していた。

元の世界のプロジェクトと異なり、人間の命がかかっている。

すでに、前回の満月では想定内とは言え被害が出た。

二度目の満月だからと言って、普通の人間に慣れるものではない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る