第35話 初対面

ヒロは目が覚めた。


テントの外に顔を出すと、ジュドーが近くにいた。

もう、日は落ちていた。


湿地帯に自然の明かりはないので、真っ暗である。

小さな明かりを放つランプがテントの近くにあるものの、モンスターから見つからないように、最小限の明かりでほんの近くしか見えない。

ジュドーはテントを背にして、双眼鏡のようなものを手で持って洞窟がある方を見ている。


「ジュドーさん、長く休ませていただいたみたいで、すいません」


ジュドーが洞窟の方から目を離さずに答えた。


「ヒロ、起きたか。

 ちょうど良い。

 今、洞窟からゾームっぽいやつが出てきたぞ」


「え!」


「しっ!声を落とせ」


そう言いつつ、ジュドーは双眼鏡のようなものをヒロに渡した。

双眼鏡を除くと、あたりは暗いというのに昼間のようにあたりがはっきり見える。

魔道具なのだろう。


ヒロは洞窟がある方を見た。


そこには、蜘蛛と人間が合わさったモンスターがいた。

大きな黒い蜘蛛。

その頭がぱっかり割れて、人間の女性の上半身がにょっきりと生えている。

ケンタウロスの蜘蛛バージョンと言えばよいだろうか。

ただ、ケンタウロスと違って、黒い蜘蛛の体に相対し、人間の体は青白く、入れ墨のような紋章が体に描かれている。

地面から人間部分の頭の位置までは、3メートルはあろうか。とても巨体である。


とても気色の悪い見た目のモンスターだった。

ヒロは、眠気が一瞬で覚めた。


蜘蛛の頭にある目も、人間部分の目も、赤く光る目である。

村人が見た赤い光とは、この目のことだったのだろう。


「よし、これからあいつを洞窟から引き離す。

 洞窟の前だと、他にもうじゃうじゃ出てくるかもしれないからな。

 仲間を呼ばれないように、あの一体だけを単独行動させる作戦を皆で考えたんだ。

 そこで、ヒロにお願いがあるんだが…」


「は、はい…」


ヒロは、なんだか嫌な予感がした。


「サレナ、俺とメグにも暗視の魔法をかけてくれ。

 マーテルは、魔道具で暗視できそうだな」


ジュドーは近くにいるサレナ、メグ、マーテルを見ながら言った。

マーテルは目をすっぽり、隙間なく覆う水中眼鏡のような黒い眼鏡をしていた。

ハンズフリーで使える暗視ゴーグル的な魔道具らしい。

ジュドーはサレナから魔法をかけられたのち、ゾームから目を離さずにヒロに話しかけた。


「さて、作戦を話すぞ…」


数分後、ヒロはゾームの前に放り出された。

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