第33話 レンジャーの調査スキル
しばらくして、村に着いた。
そこかしこに血の跡がある。
遺体は処理されている、とサレナは言っていたが、体の破片と思わしきものはまだ残っており、腐った臭いがちらほら漂っている。
ヒロは顔をしかめたが、ジュドーにあらかじめ覚悟を決めているといった手前、吐き気をこらえて気合を入れた。
サレナが村の状況を調べる。
「建物はほとんど倒壊…壊れ方から見て、かなり大型のモンスターのようね。
足跡も、まだ残っているわ」
ヒロから見ると足跡など見えなかったが、サレナには何かが見えているようだ。
「足跡からすると…蜘蛛みたいな、そうねジャイアントスパイダーの足跡に似てるわ。
ただ、大きさがジャイアントスパイダーよりもずっと大きい」
「蜘蛛型のモンスターってことか?」
ジュドーがサレナに尋ねた。
「この足運びは、その可能性が高いわ。
ゾームってやつが多足のモンスター、と言う情報もあったしね。
ゾームが蜘蛛型のモンスターとすると、足跡からは…少なくともこの村を襲ったゾームは10体はいるわね。
群で行動するのかしら」
ヒロは感心した。
村に来てすぐ、ゾームに関する情報がいくつか分かった。
レンジャー?スカウト(偵察)のスキル?なんぞや?
なんて、ヒロ思っていたが、この旅でサレナの凄さを理解した。
進め方が未知なものを進める上でまず必要なのは、周辺情報から仮設を立てることだとヒロは考える。
そして、その仮設を検証する。
今回の場合、ゾームは足跡や建物の損壊具合からして、大型の蜘蛛のような脚をもつモンスターであり、10体以上の群で行動するという仮設が立った。
この仮設を検証するには、もっとゾームへ近づかなければならない。
サレナが話を続ける。
「足跡からすると、湿地帯から来て、村を襲い、また湿地帯へ戻ったように見えるわ。
湿地帯がねぐらなのかもね」
ジュドーがそれに答えた。
「ってことは、湿地帯へ向かう必要があるってことだな」
「そうね。
もう少しこの村を探って手がかりを探してから、湿地帯へ出発しましょう。
ただ、群れだと厄介ね…モンスターの群れは、圧倒的な力で薙ぎ払うか、一体ずつに分断して討伐するか、が鉄則だし。
まずは、足跡をたどりつつ、ゾームのいる場所を特定して行きましょう」
確かに、好戦的なモンスターの群にむやみに突っ込めば命はなさそうだ。
この要件定義を無事に終わらせるには、いざゾームへ対峙する前に作戦を立てる必要がある。
だが、今の時点では情報が少ないため、しばらく村を調査し、湿地帯の方へ歩みを進めることにした。
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